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「国内で立ち上がる半導体ベンチャーたち」で期待される半導体産業の復活

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日本でもファブレス半導体がゆっくりだが、立ち上がってきた。すでに数十社が生まれているが、まだ世界と競争できるほどの規模の会社は少ない。国内最大のメガチップスでさえ、世界ファブレス半導体の上位10社には入っていない。

SPIフォーラム:国内で立ち上がる半導体ベンチャーたち


これまで日本ではIDM(設計から製造まで受け持つ垂直統合の半導体企業)が中心だった。世界の半導体がファブレスとファウンドリに分かれてもIDMに固執する企業が多かった。結局、今世界の半導体では、メモリとアナログ・パワー半導体はIDM、ロジックはファブレス、というように大きく分かれた。メモリはとにかく大量生産品であるから、設計と製造が一緒の方が都合は良い。しかもメモリ設計と言ってもメモリセルの設計と周辺の読み出しや書き込み回路など複雑ではない回路の設計であるからロジック設計とは全く異なり、製造に近い設計だ。このためIDMが向いている。

またメモリ以外の量産品ではCMOSイメージセンサがメモリに近い。設計はメモリに近いうえに、大量に使われる。特にスマートフォン用のイメージセンサは年間億単位の生産数量が必要となる。やはりIDMが向く。アナログとパワーは数量がメモリやイメージセンサほど多くないが、製造プロセスの工夫によって性能を上げられる要素が強く、しかも微細化がそれほど必要ではないため、低い投資額で済むため、IDMでもやっていける。

ロジックでIDMを進めるのは例外的にIntelだけである。ただし、IntelのCPU製品の量産時での平均単価はDRAMやNANDフラッシュなどのメモリと比べ、数十ドル~百ドルとケタ違いに大きく、同じ規模で量産しても投資体力が大きかった。そのIntelでさえ、7nm以下の微細化では外部のファウンドリを使う選択肢もありうると述べている。

Intel以外の半導体企業でロジックやシステムLSIを扱う企業は全てファブレスになった。QualcommやBroadcom、Nvidia、Xilinxなどで代表される米国のファブレス企業は極めて多い。しかも最近のスタートアップは全てファブレスだ。ファブレス半導体はシリコンバレーの象徴的存在で、米国発のスタートアップが多い。しかし、台湾にもファブレス半導体企業が力を付け、MediaTekのように世界ランキングに入るレベルにまで成長した企業もある。中国には華為の子会社のHiSiliconのようにやはり世界レベルに達した企業も出ている。

工場を持たなくても半導体チップを自分で持てる時代になったからこそ、汎用的な半導体チップを生み出せば、国際的に通じる半導体メーカーになりうる。例えば、Nvidiaは10年くらい前までゲーム用のグラフィックスIC(GPU)を設計していた企業にすぎなかった。しかし、GPUのアーキテクチャがニューラルネットワークモデルに近かったため、AI(機械学習やディープラーニング)を強化することにより、最大のAIチップメーカーとして一気に飛躍した。

ファブレスやファウンドリの最大のメリットは、自分の得意な分野に集中できることであり、自社の強みとITの技術トレンドをしっかり捉えればNvidiaのように世界的な企業になりうる。日本で生まれてきたファブレス半導体企業は、強みの技術を磨き世界に羽ばたくようになれば、日本の半導体産業は復活に近づくだろう。ファブレス半導体がシステムをリードする時代だからこそ、システムソリューションを提案できるようなファブレスが強くなることが期待されている。

ファブレスが強くなればファウンドリも強くなる。これまで国内IDMがファウンドリと称した事業は、「工場を使わせてあげる」といった受け身の姿勢に終始していた。これでは客は来ない。VLSI設計の知識を持った営業担当がいなければ日本だけではなく世界の顧客をとることができない。そんな中、きちんとしたPDK(Process Development Kit)を備えたファウンドリが日本にもいる。旧パナソニックの工場をファウンドリ工場として持つタワーセミコンダクター社だ。

セミコンポータルは、日本のファブレスとして最近生まれたスタートアップや、ファウンドリとしてのタワーセミコンダクターが講演するウェビナー「SPIフォーラム:国内で立ち上がる半導体ベンチャーたち」を11月4日に開催する。ファブレスのスタートアップが集まったGVI(Global Venture Initiative)のパネルディスカッションも含まれている。活発な議論が期待される。

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