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ルネサス大復活の足音が聞こえて来た!!〜利益率10.0%、トヨタとも連携強化

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「ルネサスの復活ぶりが明確になってきた。2017年12月期(1〜12月)の営業利益はGAAPベースで784億円となり、利益率10.0%に押し上げて来た。これは国内の半導体メーカー全体においてもトップ水準を争うレベルなのだ。IoT時代を迎えてルネサスが本格開花するのは間違いないだろう。」

先ごろ半導体商社関連の会合に出席した際、ある大手商社の幹部はうなるようにそう述べていた。確かに半導体の世界ステージで東芝やソニーが激戦を続ける中にあって、ルネサスは一時期赤字が続き売り上げも激減し、周回遅れの感は否めなかった。ところが、ここにきてからの積極姿勢は目を見張るものがある。

一時期はあまりの業績の悪さに国内外を含めて、いずれかの半導体メーカーに買収されてしまうのではないかとの噂が絶えなかった。ところが、である。あろうことか先ごろ米国インターシル社の買収を打ち出し、あっという間に傘下に加えてしまった。それどころか今度はアナログICの専門メーカーである米国マキシム社をM&Aで手に入れる、とさえ報道されるようになったのだ(編集室注1)。

ルネサスの2016年12月期の売り上げは国際会計基準のGAAPベースで6204億円であったが、2017年12月期は7644億円(Non-GAAPベースで7657億円)まで伸ばしてきた。営業利益率10.0%(Non-GAAPベースで16.4%)は確かに立派なものであるが、2016年6月に呉文精氏が代表取締役社長兼CEOに就任した際に、2020年度の営業利益率20%以上を打ち出しているわけだから、まだまだ発展途上という考えが社内にはあるようだ。しかしながら日本の他の半導体メーカーの利益率を見ても、平均すれば4〜5%が良い所なのであるからして、ルネサスの利益水準はかなり高いところにきた、と評価してよいだろう(編集室注2)。

ルネサスは車載向けマイコンで地歩を築いてきたが、今後はクルマの頭脳となる演算処理用の高性能半導体にシフトする姿勢を強めている。つまりは得意とする車載制御のマイコンとシステムLSIをうまく組み合わせて、次世代IoTカーに備える体制を整えたのだ。トヨタとデンソーは、2020年の実用化を目指す「レベル3」の自動運転車にルネサス製品を採用することを決めている。もちろんこの分野はエヌビディア、インテル、クアルコムなどの米国勢が虎視眈々と市場を狙っているところであり、いわば大激戦地であるから、ルネサスの戦いは決して楽ではない。

車載というマーケットはある種特殊な世界である。通常の半導体と異なり、圧倒的な長寿命と耐久性を要求されるわけであり、「人間の命」を預かる自動車にとって最も必要な安全性と高い品質を要求されるため、すぐ採用されることはない。5年かけて信頼性試験や品質検査を繰り返し、やっと採用されればラッキーという世界なのだ。

ルネサスは現状においても車載情報向けシステムLSIについては、世界シェアの47%を占有している。16nm FinFET微細化プロセスを世界で初めて車載分野に採用し、高性能CPU・GPUに加え、認識専用エンジンによる最高性能と低消費電力を両立しているのだ。機能安全/セキュリティにも対応した同社の車載コンピューティング「R-Car H3」は、IoT時代における車載情報分野の標準プラットットフォームになる可能性は十分に出てきている。

もっとも東芝のフラッシュメモリーの営業利益率は37%を超えており、ソニーのCMOSイメージセンサーの利益率も18%以上という高水準にある(編集室注3)。遅ればせながらルネサスが車載IoT時代を迎えて、東芝、ソニーを追いかけていく展開が明確になってきたとは言えるのだ。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

編集室注
1. ルネサスはマキシム買収を1月30日のプレスリリースで否定しており、2月9日の電話による決算会見でも呉会長は明確に否定している。
2. ルネサスはこれまでも四半期ごとの営業利益率だけでみると、Non-GAAPベースでは14〜16%を継続して得ており、2018年第1四半期の11.3%はむしろ落ちてきている。
https://www.renesas.com/ja-jp/media/about/ir/event/presentation/2017-q4-presen.pdf
3. 東芝、ソニーともGAAPベースとは決算資料に述べられていないため、Non-GAAPベースだと思われる。

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