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18年半導体設備投資、10兆円で過去最高へ〜メモリが牽引、仮想通貨ICも

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半導体設備投資はまさに空前の領域に入ってきた。2015年段階で6兆円程度であった世界の半導体設備投資は2017年に9兆円弱まで跳ね上がってきた。つまりは、なんと2年間で50%増というすさまじい伸びを示したことになる。IT革命からIoT革命へ流れが変わったことを象徴する出来事となった(編集室注)。

2018年の半導体設備投資も5〜10%は伸びるといわれており、9兆円強から10兆円まで展望できそうだ。ただし、スマホ向けのDRAMやフラッシュメモリの市場が一時的にトーンダウンしており、直近は弱含みとなっている。また、装置向けの部材やパーツの供給は全く追いついておらず、投資拡大に向けた不安要素の一つとなっている。18年の設備投資のアプリ別比率はNANDが32%、DRAMが24%、ファウンドリが25%、IDM・その他が19%。昨年に引き続きメモリが投資を牽引する展開となっている。DRAMが前年比40%増を超える水準で比重が高まり、サーバ用途の需要が旺盛でSamsungが一気にキャパシティ増強に動いている。

Samsungの平澤工場は建設当初は3D-NANDファブと目されていたが、DRAM投資に変更。1Xnm以降の微細化はマルチパターニングの工程が飛躍的に高まっており、工程数が増加するため、ウェーハ自体の増強にはならないケースが多い。

3D-NAND投資は業界ビット成長40%前後が見込まれ、エンタープライズ/SSDを中心に増強が続く。Samsungは平澤工場で第2棟の建設を開始。中国西安工場にも第2棟建設着手の意向。東芝は岩手第1棟のK1投資を加速しており、2018年末には建屋が完成し、おそらく96層以上の量産で先行する。Intelも中国大連工場で第2棟建設に入っていく。ファウンドリトップのTSMCは2018年も最大110億ドルの投資を計画する。Samsungは少し減らしたとはいえ、200億ドル以上の投資を実行、Intelも120億ドル以上は実施する公算である。

「大博打ともいうべき巨大投資を懸念する声はかなりある。半導体はIT中心のシリコンサイクルで市況が振られ続けてきた。それゆえに過剰投資をすることで、一気に地獄を見た過去の歴史があり、それにおびえている向きも多い。しかし、2つの点で投資拡大は間違っていない。1つはIoT革命が進行し、新たなアプリが出てきたことであり、もう1つは全体売り上げに対する投資比率が並外れて高いわけではないことだ」。筆者が親しくする証券業界の気鋭アナリストといわれる男の談話である。

確かに2017年の世界半導体市場はITが伸び悩む中で、データセンター、次世代自動車、FA、ロボットなどのIoT関連の伸びにより前年比20%増の50兆円近くまで押し上げてきた。ITが伸びないのに半導体が伸びるという信じがたい現象が起きたのだ。そしてまた設備投資水準が10兆円規模になることを驚く向きが多いが、半導体市場に対する設備投資比率は20%程度であり、いわば安全な水準に留まっている。

さて、新たなアプリということでいえばそれを象徴する出来事がある。それは仮想通貨による半導体需要加速というストーリーが展開し始めたことだ。スマホ用半導体の生産が低水準で推移する中、その空いた先端ラインをマイニング用チップ、とりわけASICの生産で補填するケースが目立ってきた。いわば、ビットコインをはじめとする仮想通貨の普及はまさに半導体の先端ラインの稼働を埋める救世主となっているのだ。仮想通貨は取引記録のすべてを追記する必要があり、この作業には膨大な計算処理が求められる。この追記作業を行い、成功したものには対価として仮想通貨が支払われるが、この手段をマイニングと呼んでおり、いわば採掘機が必要でGPUまたはASICが使われる。

特に、マイニング最大手の中国ビットメインの台湾TSMCへのASIC発注量は、17年後半から大きく増加しており、月平均1.5万枚前後の発注量である。このほとんどが16nmプロセスであり、さらに今後は、28nmなどのレガシープロセス、さらには7〜10nmといった先端プロセスも加わり、18年は月平均3万枚以上に膨れ上がると見られている。

TSMCの18年3月の月次売上高は過去最高の1037億台湾ドルを記録したが、なんと前月比60%増、前年同月比21%増となっており、仮想通貨マイニングが一気に押し上げたことをほぼ証明している。一方、Samsungも先端ロジックファウンドリの一角としてマイニングチップの生産を手掛けており、月平均2万枚前後をこなしているようだ。

こうした状況下で東芝メモリの日米韓連合への売却が決まった。岩手新工場の第1期棟(K1)の建屋総延べ床面積は20万m2と超巨大であり、何と来春までには第1期分の設備が全部入るというのだからまさにサプライズだ。打倒Samsungの狼煙を上げて東芝メモリも投資を加速しはじめたのだ。一方でCMOSイメージセンサの世界チャンピオンであるソニーも1兆円の大型投資を行うことをアナウンスした。半導体上昇のうねりの中で、日本勢も決して負けるわけにはいかないとの思いが、ここに来て一気にみなぎって来たのだろう。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉


編集室注)筆者のITとIoTの定義は不明だが、セミコンポータルではITの4大メガトレンドの一つがIoTだととらえている。IoTシステムが単なるセンサ端末だけではなく、ゲートウェイやネットワーク、クラウド(データセンター)、データ解析、アプリケーション、とIT全体に渡るシステムを構成しているからである。ITはハードウエア機器だけではなく、ソフトウエア、さらにサービスも包括するシステム、とセミコンポータル編集室は定義している。

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