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Samsung、64層3D-NANDの量産開始

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Samsung Electronicsが64層の256Gビット3D-NANDフラッシュメモリの量産を開始したと発表した。これまでキーカスタマ向けに64層の256Gビット3D-NANDフラッシュチップを1月から生産していたが、このほどモバイルやストレージ装置など一般市場向けに量産を開始した。

図1 Samsungの64層3D-NAND製品 出典:写真提供Business Wire

図1 Samsungの64層3D-NAND製品 出典:写真提供Business Wire


このセルは3ビット/セル方式で、メモリチャンネルの穴の数は256G個の1/3ですむ。電源電圧は、48層の時の3.3Vより下げ、2.5Vとした。この結果、エネルギー効率は30%向上したとしている。また、低電圧化したことでセルの信頼性も48層の256Gビット品よりも20%向上したという。

64層の3D-NANDフラッシュのデータ転送速度は1Gbpsと速い。ページ単位のプログラム時間は500µs、と10nm台のプレーナNANDの典型的なスピードよりも4倍速く、しかも同社の従来の48層の3ビット/セルの256Gビット品と比べても、1.5倍速い。

従来の48層から64層に層数を増やすことで、製造プロセスは難しくなり、特にMNOS構造(チャージトラップ方式)の各チャンネルの穴を均一にし、しかも各メモリセルの絶縁体を薄く均一に作ることが難しい。Samsungはこの問題を克服したとだけ述べている。

Samsungは64層3D-NANDの量産を急いだ背景には東芝社内のゴタゴタがある。Samsungはストレージメモリ市場で、競合とのリードを固めるため、64層の量産を急いだとみられ、年末までにNANDフラッシュの生産量の50%以上をこの第4世代の64層V-NAND(Samsungは3D-NANDをV-NANDと呼んでいる)に持っていきたいとしている。

5月29日にはSamsungは中国の3D-NANDフラッシュ工場への投資を見送ったと発表した。当初、同社は中国の3D-NAND工場にも89億1000万ドル(約1兆円弱)を投資すると表明していた。これも中国勢の巨大な投資による追い上げを警戒しているためであろう。中国の半導体産業は、ファウンドリよりもDRAMとNANDフラッシュに絞り込んで力を入れるように半導体戦略を変更してきている。中国ではDRAM工場に巨大投資をすでにしているが、NANDフラッシュ工場にも同様の手を使うことは時間の問題だ。

Samsungとしては当面のライバルである東芝を2016年第4四半期に差を広げた。第3四半期では東芝との差は、市場シェアで16.8%ポイントだったが、第4四半期には18.8%ポイントへと広げた。今回の64層の量産化によって、この差をさらに広げようとしている。同時に3D-NAND技術では、下位集団にいたMicronがSamsungの次にのし上がり、SamsungとしてはMicron/Intel組からも差を広げたい。Samsungは、中国投資よりも64層の量産立ち上げを急ぎ、韓国国内への投資に力を注いでいくことになろう。東芝は、メモリ会社の売却でもたもたしているヒマはないはずだが。

(2017/06/16)

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