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WSTSの2019年半導体市場は12%減の予測だが、もっと減速との見方も

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世界の半導体メーカーが集まって今後の半導体市場を協議するWSTS2019年春の予測が決まった(参考資料1)。2019年は前年比12.1%減と前年割れを予測するが、2020年には同5.4%増とプラス成長に戻るとWSTSは見ている。

表1 世界半導体市場予測 出典:WSTS

表1 世界半導体市場予測 出典:WSTS


WSTS(世界半導体市場統計)によると半導体市場全体では、前年比12.1%減の4120億8600万ドルとなるが、このうちICは14.3%減の3368億6700万ドルと見込んでいる。WSTSの実績では、2018年が13.7%増の4687億7800万ドル、2017年は21.6%増の4122億2100万ドルとなっており、2年連続2ケタ成長を遂げた。このため前回(2018年11月中旬)の予想では、2019年も引き続き成長するが、やや緩くなり半導体全体で2.6%増、ICは2.0%増の緩いプラス成長になりそうだと見ていた(参考資料2)。2019年に入り第1四半期のメモリ価格が急落し、第2四半期も同様の低下がみられ、後半回復するとしても今年全体ではマイナス成長になるだろう、とみられていた。

メモリ価格の回復は予想以上に悪い。あるアナリストによれば、DRAMユーザーに対するSamsungからの単価提案は、第1四半期にいきなり20%値引きしておき、これっきりにしてほしいと要請したという。ところが、実際は第2四半期もほぼ同様な値引きが求められた。多くのアナリストは今年後半には良くなると見ているが、そう簡単ではなさそうだ。

というのは、2019年の見方が当初は低いプラス成長から、低いマイナス成長、さらに今回のように2桁のマイナス成長、へと落ち込みの予想が日々、深くなってきたからだ。例えば、3月にIC Insightsは、2019年はメモリ市場が24%の下落で、半導体IC市場全体がそれに引きずられて7%減の4689億ドルになる、と予想していた(参考資料3)。ところが、5月21日のIC Insightsは四半期ごとのICの成長率を、2019年第1四半期では前四半期比18%減、第2四半期には同1%減になると予想し、2019年通年では13%減になりそうだ、とさらにマイナスをIC Insightsは示した(参考資料4)。

IC Insightsの発表はWSTSの予測会議の初日に発表したもので、WSTSの数字とほぼ変わらない。ではこの数字で推移するのだろうか。もうこれ以上の落ち込みはないだろうか。実は、もっと下がるかもしれない、という見方が出てきた。メモリ価格の推移や動向をウォッチしている台湾の調査会社TrendForceは、第3四半期のDRAM価格は前年同期比10%減とみていたが、6月6日のレポート(参考資料5)では、同10〜15%減とマイナスの幅が広がりを見せている。同様に第4四半期は当初の2〜5%減から10%減へと広がっている。このため、2019年後半は、底を這いつくばるような状況が続き、回復は2020年になると見ている。

その主因は、米中貿易戦争である。華為の製品はスマートフォンの輸出で凌いでいるものの、主力の基地局への通信設備が凍結し、DRAMのビット需要が伸びないと予想される。LTEや5Gの出始めのサブ6GHz製品は、少なくとも米国とその追従国には売れない。ビット需要が増えないため、DRAM価格はさらに下がることになり、DRAMメーカーは損益分岐点を割ることになろう。

2017年と18年に起きたDRAMバブルは、生産量をほとんど増やさず、単価の値上がりを招き、DRAMユーザーは二重三重の発注で凌いできた。在庫が増えすぎたという状況になった今は、カルテルまがいの値上がりに対してユーザーのしっぺ返しが続いているともいえる。


参考資料
1. WSTS 2019年春季半導体市場予測について (2019/06/04)
2. WSTS 2018年秋季半導体市場予測について(2018/11/27)
3. Intel Expected to Recapture #1 Semi Supplier Ranking in 2019 (2019/03/07)
4. Afer 2Q19 Bottom, Expectation Increase for a 3Q19 IC Market Rebound (2019/05/21)
5. The US-China Trade War Rages On: DRAM Price Decline 3Q to Widen to 15%, Says TrendForce (2019/06/06)
6. 2018年の世界半導体は16%成長へ、WSTSが予測 (2018/11/29)

(2019/06/07)

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