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東芝、メモリを軸にパワー、システムLSIは継続

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先週の3月18日金曜日の夕方、東芝は「2016年度事業計画説明会」を開催した。仙台での取材を終えると筆者は東京へとんぼ返りし、説明会に参加した。在京テレビ局が集結し、テレビカメラがずらりと並んでいた。そのような中、室町正志代表執行役社長は、淡々と説明会資料を読み上げた。同日Samsungが設備投資を半減するというニュースも入った。

21日の日刊工業新聞のウェブ版は、「東芝、来年度に黒字転換−営業益1200億円、成長基盤を構築」(参考資料1)、19日の日本経済新聞は「東芝、3万4000人減員、規模縮小、再建急ぐ、売上高3割減、半導体などに集中、来期」(参考資料2)、また20日の社説では「総合電機の看板下ろす東芝」(参考資料3)、同じく20日の東洋経済のウェブ版は「東芝、一息ついたがV字回復実現には課題山積」(参考資料4)、という見出しをそれぞれが付けた。いずれの見出しも東芝の発表会の様子を正しく伝えている。18日の発表会の前に、東芝は東芝メディカルのキヤノンへの売却と、白物家電の中国美的集団への売却を発表していた。

東芝は2015年度末(今月末)までは企業としての存続に力を入れ、2016年には資本市場に復帰を目指し、18年度に収益基盤を確立するという計画を発表した。企業の存続を図るために構造改革を3月末に終えるとして2016年度には踏み込まないようだ。2016年度では、集中と選択を行い、ストレージ、社会インフラ、エネルギーの三つの分野に注力することを決めた。

半導体部門はここではストレージ分野に属する。社名は以前のセミコンダクター&ストレージ社からストレージ&デバイスソリューション社へ変わる。「メモリを核に収益の柱へ」を標榜しており、SSDとNANDフラッシュ、ディスクリートのパワーデバイス、画像認識を中心にシステムLSIを手掛けるとしている。ディスクリートは、白色LED事業を終息することが決定しているが、パワートランジスタは車載分野に集中し拡大していくとしている。白色LEDは米国のベンチャーBridgelux社からGaN on Si技術のライセンスを購入、量産化を進めていたものの、思うように歩留まりが上がらなかったようだ。そのBridgeluxを中国ファンドが昨年7月に買収することで合意したため、東芝はどうなるのか注意を払って見ていた。事業を終息することは悪くはないが、中国のファンドに売却できなかったのだろうか。

2月には大分工場と岩手東芝エレクトロニクスを合併し、ファウンドリ専門の「ジャパンセミコンダクター」を4月1日に設立することを発表しているが、その狙いは、空いている生産能力を埋めるため、と室町社長は語っている。アナログファウンドリとして、活用したいという意向だ。ただし、ファウンドリビジネスでは、LSI設計の知識を持つセールス担当者が欠かせない。RTL、ネットリスト、GDS-II、どの設計レベルでも製造を引き受け、しかも検証できる能力が求められるからだ。当然、さまざまな設計ツールを用意しておく。LSIチップの顧客はLSI設計にはほとんど興味はなく、RTLはおろか、GDS-IIまで手掛けられる顧客のエンジニアはほとんどいないからだ。元アナログ設計者の採用がマストである。自社工場の余ったラインを埋めるだけの発想では、ファウンドリビジネスは無理なことは、ルネサスなどのIDMがよく知っている。積極的に顧客を取りに行くビジネスをする気を示す必要があろう。例えば、アナログ設計者をどのくらい採用するかによって、その本気度がわかる。

NANDフラッシュでは設備投資は続ける。2016年度から18年度までの3年間で8600億円を投資する意向であり、2016年度の第1四半期に新第2棟建屋竣工、16年度にはさらに次期新棟向けの土地造成も計画され、17年度には次期新棟建設に入る予定だ。今年のメモリ売り上げを15年度の8000億円から7400億円に減額したのは、固く見ており、16年4〜6月は悪く、後半からよくなると見ているためだ。16年度に3D-NANDへの切り替えが始まるため、厳しく予想している。しかし17年度以降はSSDなどの拡大により売り上げが増えると室町社長は述べている。

3月18日には、Samsungが2016年の設備投資を130億ドルから90億ドルに大幅減額、というニュースを韓国のKorea Timesが報じている(参考資料5)。特に、DRAM投資は2015年の21億ドルから51%減額し、NANDフラッシュも61億ドルから28億ドルへ減らす。残りは西安工場に振り向けるとして、新工場に33億ドルを投資する。現状の生産能力を上げるために設備投資を行い、10nmラインへの投資は2017年以降になる。ただし、SK Hynixの投資額は57億ドルから54億ドルへとほぼ横ばいだ。

参考資料
1. 東芝、来年度に黒字転換−営業益1200億円、成長基盤を構築
2. 東芝、3万4000人減員、規模縮小、再建急ぐ、売上高3割減、半導体などに集中、来期
3. 総合電機の看板下ろす東芝
4. 東芝、一息ついたがV字回復実現には課題山積
5. Samsung to halve investment in memory chips

(2016/03/22)

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