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東芝、NANDフラッシュの微細化にナノインプリント

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久しぶりに半導体の明るいニュースが先週駆け巡った。東芝が、微細化技術としてナノインプリント技術を使ってNANDフラッシュを微細化するというニュースだ。6月3日の日本経済新聞が報じたもの。NANDフラッシュは、クラウドストレージ向けにこれから必要性が増し、IoTシステムの一環を形成する。クラウドビジネスがIoTと一緒になりAI(人工知能)によるデータ解析にも活きていく。

日経によると、2017年度中に東芝はナノインプリント回路形成技術を使ったNANDフラッシュメモリの生産に乗り出すとしている。極めて微細なハンコのパターンと同じ技術を利用するナノインプリント技術は、これまで大日本印刷、キヤノンと一緒に組んで実用化を目指してきた。従来のリソグラフィ技術よりも低いコストで生産できる可能性がある。

これまでの波長193nmのArFレーザーだと、10nm台の微細なパターンでは1回のリソグラフィ工程でパターニングを2回、3回と繰り返さなければならなくなっている。1回の露光では、これほど細いパターンを形成できないため、例えば10nmの線幅を加工する場合、まず20nmのパターンを切り、それを半分ずらしてもう一度露光する、あるいはセルフアラインメントで半分程度に加工する、などの複雑な工程を経なければならない。こうなるとリソグラフィコストが上昇する。EUVという波長13.5nmのX線リソグラフィ技術ではまだX線の出力が不十分で、露光に時間がかかってしまう。装置も高価だ。

これに対してナノインプリントは、ハンコのようにレジストを加工していく訳だから、手間はかからない。生産性は上がりコストが下がるようになる。しかし、泣き所はゴミなどのパーティクルが付くと、使えなくなる点だ。10nm台では目に見えないパーティクルが付きやすい。クリーン度の更なる向上が欠かせない。

東芝のナノインプリント技術の導入を受けて、大日本印刷も埼玉県にある上福岡工場に40億円を投じ、ナノインプリントのテンプレート(ハンコ)生産用の設備を導入する、と6日の日経産業新聞が報じた。まず15nmのテンプレートを生産するという。キヤノンは、ナノインプリント技術の製造装置を担い、スループット(1時間当たりのウェーハ処理枚数)を2018年までに従来の4倍に引き上げると日経は報じている。

東芝が投資を決意した背景には、NANDフラッシュ需要が強まってきたことがある。パソコンそのものの需要は落ちているが、NANDフラッシュを使うモバイルパソコンの需要はまだ旺盛で、サーバー需要が大きい。特にクラウド時代には、IoT端末からデータを吸い上げ、解析し、保存する必要がある。データ量は膨大になり、需要は旺盛だ。さらに中国ではスマートフォンが大容量化へ転換している、という記事を5月31日の日経産業が伝えている。

5月31日の日経にはDellのCEOであるMichael Dell氏のインタビューが掲載され、その中でDell氏は、パソコンやサーバーからクラウドへITトレンドが移行していることを指摘し、データストレージの大手EMCを買収したことや、仮想化技術のVMwareやデータ解析のPivotalを買収した背景にはクラウドの中心技術であることだと述べている。これまでのITが企業のIT部門向けだったものが、IoTによって製造業や金融、医療、小売業にも入り込めるようになりつつある。Dellはこういった産業に向け、デジタル事業変革を促す。クラウドではストレージは重要な技術の一つになる。

IoTやクラウドでのデータ解析にはAIの活用が注目されている。日立製作所は、IoTプラットフォーム「ルマーダ」を駆使して社会インフラの効率化支援や製品の付加価値向上に役立てると6月2日の日刊工業が伝えた。このルマーダには、ビッグデータ解析、AI、セキュリティで構成され5月から運用を開始したという。日立は米国市場でスマートグリッド事業にAIを活用、オフィスビルやマンションの電力仕様や工場の稼働状況、天候などのビッグデータを、AIを使って解析、電力需要の正確な見通しを予測するとしている。

また、住友電気工業は産業技術総合研究所と共同で、サイバーセキュリティ技術を開発すすると6日の日経産業が報じた。4月に制定された産総研連携研究室制度を活用し、産総研が持つ暗号技術などを活用し、住友電工の製品に活かす予定だとしている。この制度は3年以上の連携の継続と1年あたり1億円の負担が条件だという。

(2016/06/06)

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