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東芝メモリの売却は暗礁に、ルネサスは革新機構が株売却へ

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東芝メモリを巡る売却が暗礁に乗り上げている。四日市工場で東芝と共同で運営している米Western Digitalが法的手段に訴えたことに対して、話合いを継続し、情報アクセスを遮断しないとした。投資ファンドのベインキャピタルがMBO(経営陣が参加する買収)を提案するという報道もある。銀行団も黙っていない。

東芝は、5月15日に監査意見が付かない2017年3月期の連結業績概要を発表し、5400億円の債務超過に陥ったことを明らかにした。メモリ事業の売却で債務超過の解消を狙うが、協業しているWDが売却の差し止めを求める法的措置を行使。財務改善策の先行きが見通せない異常事態になってきた。

しかし、東芝がWDに通告していた、四日市工場(三重県四日市市)での情報アクセス制限を16日に見送った、と日刊工業新聞は17日に報じた。

さらに、19日の日本経済新聞は、東芝の半導体メモリ事業の入札で、米投資ファンドのベインキャピタルがMBOを提案することが18日わかった、と報じた。東芝メモリにベインが51%以上出資し、残りは東芝メモリ経営陣や東芝本体などが保有する形を取るという。ベインは少数株主として官民ファンドの産業革新機構にも出資を打診する方針で、新たな有力候補になる可能性があると報じた。ベインは買収へWDとも協議する考えを示しているという。
 
日経によると、ベインは東芝メモリ株の過半数の取得のために特別目的会社(SPC)を設立する。韓国SK HynixがSPCに資金供給する格好で連合を組む。Hynixは黒子にとどまることで独占禁止法への抵触を避けるとしている。

銀行団も支援策の策定に動き出した。19日の日経は、売却を巡って事態が膠着しているため、すでに設定した融資枠から東芝が資金を引き出せない状態が続いており、このままでは資金繰りに懸念が生じかねないためだ、と報じた。日経によると、東芝は4月中旬に開いた銀行団との会合で、東芝メモリなどの株式を担保にすることで融資の継続を取り付けた。しかしメモリ株の売却に反対するWDは担保の提供にも異議を唱えており、「(7000億円弱にのぼる)融資枠から資金を引き出せない状態が続いている」(大手行幹部)と述べている。

そのような中、一部主要行で浮上しているのが「保護預かり」という仕組みだという。日経によると、融資を続ける代わりに、株券を銀行の手元に置きとどめるように定めることで「実質的な担保の設定と同等の効果」(関係者)を狙う。この枠組みを使えば、銀行は担保を設定したとみなすことができ、東芝は融資枠から資金を引き出せるようになるという。

東芝の半導体メモリ事業の売却候補には、鴻海(ホンハイ)精密工業も挙がっている。子会社であるシャープが2割程度を上限に出資を検討していることがわかったと16日の日経は報じた。鴻海は東芝のNANDフラッシュメモリの直接の顧客であり、iPhoneなどに組み込みApple へ納める。シャープが1〜2割程度の出資を検討していると日経は伝えている。

東芝が債務超過のためにやむなくメモリ事業を分社化して売るという方法が宙に浮く中、ルネサスが健全な経営に改善され、産業革新機構をはじめとする大株主が発行済みの株式の25%に当たる最大4億2243万株を売り出すと発表した。このところルネサスは16四半期連続営業黒字が続いており、特別損失などを含めた純損益も黒字に転換できるようになった。産業革新機構が19%分を売却するほかNECや日立製作所、三菱電機も売り出すという。

(2017/05/22)

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