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DRAMの3社による寡占と、NANDフラッシュの健全な成長

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半導体メモリは、次々と新しい用途を見つけ成長してきたが、この勢いは衰えていない。NANDフラッシュは金融市場に活路を見つけ、DRAMはAI市場を見つけた。韓国SK Hynixはこの1〜3月期に最高益を達成、Micronは都内に開発拠点をオープンさせた。

SK Hynixは2018年第1四半期における売上額は前年同期比39%増の8兆7200億ウォン(10ウォン=約1円)、営業利益は同77%増の4兆3670億ウォンとなったと4月25日の日本経済新聞が報じた。営業利益率は50%超という、とてつもない数字となった。DRAMメーカーは生産量を増やさず単価の上昇だけで売上額が大きく伸び、2017年の半導体売上額をけん引した。この勢いは2018年になっても続き、同社のDRAM単価は前四半期に比べ9%も上昇した。一方同社のNANDフラッシュの単価は1%下落したという。前四半期比1%の下落は極めて健全な下落で生産量が増えたことによる。

DRAMメーカーは上位3社だけで90%以上のシェアを独占しており、モバイルDRAMとなると98%以上も占めている(参考資料1)。スマートフォン向けのモバイルDRAMが高騰したためにスマホが売れなくなり、2018年度第1四半期(2017年10〜12月期)におけるiPhoneの出荷台数は7730万台と、前年同期の7830万台よりも減った。しかしスマホの単価も増えたことで、AppleのiPhone 事業は616億ドルと前年同期比13.2%増と大きく成長した。スマホの成長が止まったのではなく、DRAMの高騰でスマホの価格も高騰したため、スマホの売れ行きが悪くなった。DRAMもNANDフラッシュと同様、毎年単価の減少によって市場を拡大してきた。NANDは3D化で当初は歩留まりが悪く、生産量を増やせなかった。年末くらいからようやく歩留まりが向上し、生産量が増え、単価が下がり健全な成長へと向かい始めている。

しかし、DRAMはメーカーの寡占化が進んでおり、生産量をほとんど増やさずに単価の値上がりだけで売り上げを増加してきたため、SK Hynixのフラッシュも含めた営業利益率が50%という異常に高い数字になった。DRAMだけだともっと高い。DRAMの寡占化を崩すと期待されるメーカーは、残念ながら日本企業ではなく、中国企業となっている。

DRAMとNANDフラッシュの両方を生産するMicron Technologyの日本法人は開設した新しい開発拠点「カスタマラボ」を都内で開設、顧客メーカーと共同で半導体技術を開発すると日経産業新聞が報じた。自動車や産業機器向けの新規需要に応えるために日本に設置した。自動運転に必要なDRAMは車載コンピュータのリアルタイム動作に欠かせないだけではなく、ディープラーニングの推論動作にも使われる。またNANDフラッシュは、これまでの市場に加え、車載市場にも期待されており、自動車の先進国である日本に開発拠点を置くことは合理的だ。車載独自のエンデュアランスやリテンションなどの仕様を満たす必要があり、顧客との密な関係は必須となる。

ただし、NANDフラッシュの唯一の懸念は、価格の下落傾向である。下がるスピードが速すぎると、損益分岐点を超えてしまう恐れもある。24日の日経は、128Gビット品が4月上旬時と比べ、1割ほど安い3.07ドル前後と報じている。1割下落は大きすぎるかもしれない。3D-NANDの64層の歩留まりが安定してきたことは、次の96層の生産立ち上げに向かうことになり、ラインの調整が微妙になろう。

参考資料
1. Mobile DRAM Revenues Grow Slower in 1Q18 Due to Dampened Contract Prices Rise, Says TrendForce

(2018/05/01)

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