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半導体バブルが終わり、着実な成長期へ向かう気配

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半導体産業がメモリバブルを脱却し、ようやく着実な成長期にやってきそうだ。台湾の主要IT19社の業績が発表され、7月の売上額は前年同月比13.5%増になった、と15日の日経産業新聞が報じた。NANDフラッシュは歩留まりが上がり設備投資は止まってきた。長期的にAI(機械学習・ディープラーニング)を使った応用が広がっている。

台湾のIT業界での増収は5カ月連続であり、7カ月ぶりの高い増加率だった、と日経は報じた。新型iPhone発表前の高い増加率は、2018年後半の需要に期待がかかる。これまでは、メモリの単価が高騰すると同時にNANDフラッシュでは3D化により新たな設備が求められるようになり、半導体製造装置企業は昨年から潤ってきて、この上半期までは何とか好調を維持できた。実際、18日の日経産業新聞で報道されたように、Applied MaterialsやLam Research、東京エレクトロンなどの上半期の業績は好調だった。17日の日刊工業新聞でも6月までの業績を見て、半導体製造装置は好調と伝えている。SEMIの予測も今年は10%増とみている。

しかし6月における半導体製造装置の販売額は大きく落ちた(参考資料1)。SEMIもSEAJも6月における製造装置の販売額が3カ月の移動平均で大きく落ちた。4月、5月はプラス成長だったから6月単月は大きく落ちたことを意味する。半導体製造装置のバブルは終わった、と述べるアナリストもいる。

とはいえ、これまでがメモリバブルだったために半導体経済としては異常な好景気であった。2017年はメモリ単価の高騰によりスマホも値上がり、その結果消費意欲が後退、スマホの出荷台数は停滞あるいは下落という状況に陥った。NANDフラッシュは64層の3D化によって高集積化を図る技術が生産に導入されたが、当初は歩留まりが上がらず、十分な数のメモリを作ることができなかった。このため、製造装置の増強が必要になり、装置メーカーは潤った。この間、DRAMは生産数量を上げなくても価格が上がったため、何もしなくても売り上げが急増した。寡占企業3社(Samsung、SK Hynix、Micron)の営業利益率(売上に対する営業利益)は6割を優に超えた。メモリユーザーであるスマートフォンメーカーは製品価格を上げることで凌いだ。このため、消費者は買い控えることで、スマホの出荷台数はほぼ横ばいとなった。

低価格が受け入れられる中国市場では、Samsungのシェアが1%を割ったため、天津と広東省の工場を生産停止を検討している、と韓国紙に報じられたという(14日の日経)。中国市場はもともと国産品を愛好する風土であるため、低価格品はほとんどすべてが中国製で、唯一の例外がAppleのiPhoneである。Appleは直近の2018年第2四半期でも5位にランクされるほどの人気がある。市場調査会社のIDCによると、中国市場は前年同期比6%販売台数が減少し、Appleも出荷台数を減らしたが5位を維持した(参考資料2)。

メモリバブルが一段落すると、メモリビジネスとは無縁の台湾の動きが半導体産業の動きに連動しているとみられる。TSMCの業績は、仮想通貨チップの需要が低迷しながらも3.8%の増収となったと15日の日経産業は伝えている。AppleのiPhoneは秋に高価格・高機能版と低価格版を出すとうわさされており、その需要を取り込むことでTSMCの成長は持続されるであろう。

現在から中長期的にAIは間違いなく進展する。もちろん万能ではないため、最終的には人間が判断することになるが、AIは人間の作業量を格段に下げてくれる。15日の日経は、大腸がんの診断に昭和大学や名古屋大学がAIを使い、9割以上の確率で判定できると報じた。大腸がんの画像はこれまで大量に保管されており、国立がんセンター中央病院や東京医科歯科大学など5施設から6万枚の画像データをAIに読み込ませ学習させた。その学習データを元に、2017年6月〜12月の7カ月間に昭和大学横浜市北部病院を訪れた患者791人に対して大腸の内視鏡検査画像をAIに判定させたところ、「陰性」と判定した画像の93.7%が実際の病理検査でも陰性と判定されたという。AIシステムは両大学などが開発したもの。

クラウド上にある学習データを参照データとして、クルマやIoT端末のエッジに取り込み、エッジ端末で画像データを推論する技術において、日米のベンチャーが共同開発するというニュースもあった。16日の日経産業は、日本のmtesニューラルネットワークスと米国のGeneral Visionが自動運転や遠隔医療向けの機器を共同開発することで合意した、と報じた。資本金5億円で、共同出資会社「ロボセンシング」を設立する。Mtesが65%、General Visionが25%、残りは一般投資家が出資する。GVは元IBMのエンジニアが設立した企業でAIチップを開発し、mtesはLPWAの技術を持つという。


参考資料
1. 半導体製造装置はちょっと一服状態に (2018/07/31)
2. China Smartphone Units Drop by 6% YoY while Average Selling Prices Grow by 15% in 2Q18, IDC Reports (2018/08/06)

(2018/08/20)

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