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製造装置はメモリ向けが一服、ASMLは増収増益で1兆ユーロ超え

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半導体製造装置メーカーの業績が悪化している。世界の半導体製造装置大手9社の内、5社が減収、6社が減益となった。日本の東京エレクトロンとSCREENも共に減益となった。特にメモリ用の製造装置の業績が悪い。ただし、半導体製造装置市場全体が暗いわけではない。

世界の半導体製造装置業界の業績をレポートしたのは、2月16日付けの日本経済新聞。減益の主な要因は、メモリの供給体制が出来上がり、装置需要が一段落したため。もちろんメモリはDRAMであろうとストレージであろうと、これからもビット需要は拡大していくため、減収も減益も一時的にすぎない。

メモリの設備投資は、特にNANDフラッシュの歩留まり向上によって需要が満たされるようになった。2017年はNANDフラッシュ向けの製造装置が供給不足で、メモリ製造装置メーカーはメモリバブルによって大いに潤った。DRAM製品では、市場シェアを95%以上占めてきたトップ3社(Samsung、SK Hynix、Micron)はあまり設備投資をせず、生産量を増やしてこなかった上に、メモリが値下がりすると設備投資をぴたりと止めた。メモリメーカーは投資を延期するところが多いと製造装置メーカーはいう。

Applied Materialsは、減収減益となったものの、微細化をリードするロジック向けに強いASMLは順調に増収増益となっている。ちなみにASMLの売り上げは前年比22%増の109億4400万ユーロ(1兆3680億円)、純利益は25億9200万ユーロと依然好調である。

メモリの値下がりは、コンピュータメーカやメモリユーザにとって朗報となる。メモリの値下がりを利用して、メモリカードやSSDなどメモリ装置、およびメモリ内蔵のコンピュータが買いやすい値段に下がってくる。東芝メモリは、96層の3D-NANDとTLCを使ったNANDフラッシュで最大1TバイトのSSDを発売した。このBG4シリーズには512Gバイト、256Gバイト、128Gバイトの製品も揃えている。96層製品はまだ量産が始まったばかりで、歩留まりを上げている段階。15日の日経産業新聞によると、4~6月期から本格的に出荷を拡大するとしている。

一方、半導体の後工程に力を入れるメーカーが登場した。13日の日経によると、表面実装部品のマウンタに強いヤマハ発動機は、ワイヤーボンダーの新川と、プラスチックモールド機のアピックヤマダを買収した。新川を100億円で買収、新川はアピックヤマダを完全子会社におき、新川とアピックを持ち株会社の傘下におく。その持ち株会社の株式の過半数となる56.63%の株式をヤマハが所有する。ヤマハは今後、半導体チップのマウンタ、ワイヤボンド、モールディングを一気通貫で提供することができるようになる。

半導体メモリとは関係ない、国内の電機8社の業績も低迷している。東芝の18年4~12月期の連結決算では、売上額が前年同期比5.5%減の2兆6471億円、営業利益は同85.2%減の82億円に下がった。営業利益率はゼロに近い、0.3%。14日の日刊工業新聞が報じたレポートだが、三菱電機、パナソニック、日立製作所、ソニーなどは業績が悪化している要因を中国市場の低迷としている。

先週、業績を発表したルネサスエレクトロニクスも中国市場の低迷のせいにしているが、本来メモリバブルの影響を受けなかったはずであるにもかかわらず、ルネサスの2018年度業績は減収減益になった。2016年にIntersilを買収したものの、その相乗効果は表れず、2018年通期で売上額は3.1%減の7574億円、営業利益は前年差175億円の1106億円となった。スライドで示されたIntersilの業績が順調に増収増益となっているため、ルネサス本体の落ち込みは、もっと激しいことを表している。ただし、Intersilは数字を公開していない。正式な承認はまだ下りていないが、さらにIDTの買収が完了すると2020年は増収になるが、問題はその次の2021年の数字である。ここでルネサスの本当の実力(相乗効果があったかどうか)が明らかになる。

(2019/02/18)

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