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TSMC、22年後半から短期的には不透明に、中長期的には成長持続

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半導体景気を占うメモリ価格の下落が続き、やや黄色から赤信号に変わったが、ロジックの短期的な未来を占う台湾TSMCの決算が発表された。短期的にはややブレーキがかかるようだが、それほど深刻になるとは見ていない。またIntelは製品の値上げを発表、シリコンサイクルの底にきても、その次を狙う動きも活発だ。

図1 TSMCの会長、Mark Liu氏 出典:2019年に筆者撮影

図1 TSMCの会長、Mark Liu氏 出典:2019年に筆者撮影


シリコンサイクルは、これまでもそうだが、単なるサイン(正弦波)カーブではない。底が来ても底の数字(販売額)は、一つ前のピーク値よりも高い、という特長を持つ成長曲線である。この特長をつかんでいる企業は勝ち組になる。逆に、底に来たからもう投資しない、という企業は負け組になる。かつて勢いのあった時代の日本勢は、底の時に大きく投資して次の需要増に備えた。ところが90年代以降は底に来ても韓国Samsungは次のピークに向けた投資を増やしたが、日本勢はしなくなったために負けた。

今のTSMCは7月14日の決算説明会(参考資料1)で、今年の後半から市場は緩んでくると見ていながらも、投資額は減らさないと述べている。それは「全ての機器、機械に含まれるシリコンのコンテンツが増大し、次の数年はこれまで以上に増加する」と見ているからだ。直近は不確実性が増しているものの、その先は成長することを見込んでおり、N3プロセス(3nmノード)はすでに量産に入っている。2nmプロセスのN2ノードは開発中で、24年に生産開始、25年に量産するという計画だ。

ちなみにTSMCの第2四半期における売上額は前年同期比36.6%増の181.6億ドルで、営業利益率は49.1%と絶好調だ。売上額は前四半期の見通し額176~182億ドルの上の方に位置している。5nm/7nmプロセスノードの売上額は全体の51%を占めており、28nm以下のプロセスが全売上額の75%を占めている。

直近の近未来の景況に関してTSMCのCEOであるC.C. Wei氏は、「今年の後半はマクロのダウンサイクルに入っている。パソコンやスマートフォンだけではなく、(データセンターなどの)HPC(High Performance Computing)も、もはや在庫が多すぎる」としながらも「エッジデバイスはデータをどんどん生み出している。長期的には成長し続ける訳だから、もっとレジリエンス(resilience)な対応が必要だろう」と見ている。

TSMCは7nm/5nmプロセスノードがこれまでの稼ぎ頭で、売上額の半数を占めているが、同じ台湾のファウンドリでもUMCは、最も微細なプロセスでも22nm以上で稼いできた。メモリ以外の製品で先端ロジックはTSMCが担い、アナログや高集積化を必要としないロジックはUMCが担うという産業構造が台湾ではできている。すみ分けが自然とできるビジネスマインドが台湾にはある。近未来をもっと知るためには、2022年第2四半期の決算を27日にUMCが行うため、それを待つことになろう。

Intelは半導体製品の一部を今年後半に値上げすることを顧客に通達した。米国におけるインフレ圧力が強く、コスト上昇が続いていることが値上げの要因。ただし、値上げの幅についてはまだ決まっていないという。

次の長期的な展望に従って、半導体工場を持つティア1サプライヤーのドイツBoschは、2026年までに半導体の設備投資として30億ユーロを(約4200億円)投資すると発表した。昨年、ドレスデンに300mmの新工場を稼働させたが(参考資料2)、Bosch会長のStephan Hartung氏は「新工場は予定よりも6カ月早い短期間に量産の成熟レベルに達した」と述べており、早くも追加投資への意欲を見せた。

ロームはSiCパワー半導体を生産しているが、SiCパワーMOSFETがこのほどドイツのSemikron社にEV(電気自動車)用インバータモジュール「eMPack」に採用された。Semikronは、2025年からドイツの大手自動車メーカーに「eMPack」を供給する契約(10億ユーロ)を結んでいる。

参考資料
1. "TSMC Reports Second Quarter EPS of NT$9.14", TSMC (2022/07/14)
2. 「Boschの新工場にはAIoT、AR、ローカル5G等新技術が満載」、セミコンポータル (2021/06/22)

(2022/07/19)

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