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パワー半導体、一大投資ラッシュの様相に!〜SiCは急増、300mm投資も活発

SDGs革命とよく言われるが、最近の取材活動を通して、これを口にしない経営者はまずもって全くいない。全社にLED照明を導入するのは当たり前、使うエネルギーを全て太陽光発電に変えるケースも非常に多いのだ。そしてまた生産工程の中で、どうやってCO2を減らすのかという課題に取り組んでいる会社も増えてきた。

SDGs(持続可能な17項目の開発目標)の進展と半導体は深い相関関係を持っている。データセンターのハードディスクをNANDフラッシュメモリに変えるだけで、使用電力は飛躍的に引き下がる。ここではサムスンや東芝などが鍵を握る。ウェアラブル端末であるスマートウォッチについても、MRAMを搭載すれば消費電力は二桁三桁の範囲で少なくなる。新世代のMRAMについては、遠藤哲郎教授率いる東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターが、世界をリードしていると言ってもよいだろう。さらに加えてEVや燃料電池車などのエコカーに必須であるのがパワー半導体である。

パワー半導体の世界市場は10年後には15兆円を超えてくるという予想がある。中でも省エネ性に優れるSiCパワーは20〜30倍に伸びてくるという予想もあるのだ。

「ロームのSiC事業は25年度に売上高1100億円以上、シェア30%以上の獲得を目指す。25年以降も手を緩めることなく、投資を継続していく。21〜25年度累計で最大2500億円をSiCデバイスの増強に投じる計画だ。マツダのEV戦略に参画もするし、日立のEV用インバータにもわが社の製品が採用された」。こう語るのは今や国内の半導体企業ランキングで第4位に躍進したロームの松本功社長である。松本氏はここ数年のうちでSiCデバイス市場は8000億円以上に一気に膨れ上がると判断している。

パワー半導体のもう1つの重要ファクタは300mmウェーハにある。加賀東芝は300mmウェーハ対応のパワー半導体製造棟の起工式を先ごろ行った。同時に太子町の工場内に新たな製造棟を建設し、生産能力を2倍以上に増強する。東芝全体としてパワーの能力は数倍に膨れ上がることになるだろう。

国内のパワー半導体の最大手である三菱電機も動き出した。熊本県泗水地区にSiCの8インチウェーハの新工場を建設することを決めたが、ここには1000億円を投入する。またパワー半導体の後工程工場を福岡県に新設し、これにも100億円を充当する。同社の21〜25年度のパワーデバイス事業の投資は、2600億円に倍増される。

こうした動きの中で材料メーカーの動きもかなり強いものが出てきた。今や半導体材料の世界ランキングで第3位の地位にあるレゾナックの動きが活発だ。レゾナックホールディングスの森川宏平会長は、SiCエピウェーハを強化するとして、以下のように述べている。「レゾナックはSiCパワー半導体のエピウェーハの分野では世界トップの技術と量産体制を確立している。外販企業としてはトップシェアであろう。パワー半導体の大手であるドイツのInfineon Technologiesとの間では、SiCエピウェーハの長期安定供給について約束を取り付けている。Infineonは27年にはSiCパワー半導体の能力を10倍にすると表明しており、当社もこれに合わせてきっちりと供給していかなければならないと思う」。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉
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