AI需要を巡る半導体市場の見方および各社の活発な戦略的動きの現時点
パソコン、スマートフォンはじめ従来の半導体市場の本格回復が待たれる中、米国および中国の経済情勢の先行き懸念の見方もあって、勢い独り目立って半導体市場を引っ張っているAI需要に目が向く現下の市況に見えている。AI半導体にうまく乗っかかって好業績をあげている各社が、限られて目立っている。したがって、AI関連の波に効果的に乗るべく、各社の活発な戦略的動きが至るところ相次いでいる。当面引き続く動き&取り組みと思われ、ここらあたりでの更新ということで、AI需要を巡る半導体市場の見方および各社の動きの現時点に以下注目している。欧州はじめAI法規制の動向に目を向けながら、今後の展開に随時の注目を要するところがある。
≪AIの波への様々なアプローチ≫
AI需要が引っ張る好業績を謳う各社の業績発表の現時点の例である。
◇Applied Materials delivers record third-quarter sales as AI fuels chip demand (8月15日付け Silicon Angle)
→半導体製造装置メーカーのアプライド・マテリアルズ(AMAT)は本日、人工知能(AI)チップメーカーからの需要に牽引され、予想を上回る第3四半期の売上と利益を計上した。
株式報酬などの特定費用控除前利益は1株当たり2.12ドルで、アナリスト予想の2.03ドルを余裕で上回った。売上高は前年同期比5.5%増の$6.78 billionで、予想の$6.68 billionを上回った。
◇Synopsys expects upbeat Q4 on firm demand for chip design software―Synopsys sees AI driving chip design software growth (8月21日付け Reuters)
→シノプシスは、AI対応チップ・デザイン・ソフトウェアの需要に牽引され、第4四半期の売上高と利益が予想を上回ると予測している。CEOのSassine Ghazi氏は、AIが変曲点であると指摘し、次のように付け加えた。「それは誇大広告ではなく、現実のものであり、シリコンの複雑化を促進し、インフラやデータセンター、トレーニングの構築を、業界がかつて経験したことのないペースで進めている。」
◇SK Hynix's 1H24 revenue soars in US and China, driven by AI demand (8月22日付け DIGITIMES)
→2024年上半期に過去最高の業績を記録したSKハイニックスは、米国と中国市場で目覚ましい成長を遂げた。同社は以前は不採算であったいくつかの事業を活性化させることに成功し、現在では中国と米国がそれぞれ総売上高の29.8%と55.4%に寄与している。
AIの市場への浸透に関する記事内容である。今後の一層の伸びを期待させている。
◇中国、日常に生成AI続々 車と自然な会話・自動で旅程... (8月20日付け 日経)
→中国で生成AI(人工知能)の活用が多彩になっている。新興の電気自動車(EV)メーカーの上海蔚来汽車(NIO)は車との自然な会話を実現し、旅行予約サイト大手の携程集団(トリップドットコムグループ)は自動で旅程を作る機能を設けた。各社がサービス向上のためAIを導入し、消費者も受け入れる好循環が生まれている。
◇Nvidia Eyes Return to Record as AI Spending Bonanza Continues―Nvidia set for growth as AI investments surge (8月21日付け BNN Bloomberg (Canada))
→エヌビディアをはじめとする半導体企業は、AIインフラへの持続的な投資によって大きな成長を遂げている。Voya Investment ManagementのErik Swords氏は言う。「AIインフラの構築はあと一息で完了し、このことは、今後数年間に期待できる成長という点で、非常に良い見通しを与えてくれる。」
AIが引っ張る、焚きつける、という表現が目立つこのところであるが、半導体関連市場全体ではどうなのか。以下、いろいろな切り口の見方である。
◇AI頼み続く半導体、素材は成熟品向け苦戦 9指標分析 (8月21日付け 日経 電子版 05:00)
→7〜9月の半導体需要は先端品が主導した回復局面が続いている。けん引役は生成AI(人工知能)向けのデータセンターだ。全体として復調傾向は続くものの、車載用や産業用途の成熟品は最終需要が振るわない。中国市場の足踏みでスマートフォンなどの回復ペースも緩やかなまま。当面はAIけん引型の状況が続きそうだ。
◇AI-fueled demand buoys semiconductor market while legacy chips lag―Materials suppliers and producers in mature sectors left behind in current upcycle (8月22日付け Nikkei Asia)
→世界の半導体需要は、材料やレガシーチップ部門が低迷を続ける中、AIチップやその他の先端製品の受注に支えられ、上昇を続けている。
◇次世代GPU大幅高も、エヌビディア――半導体メモリーDRAM、価格2カ月横ばい (8月23日付け 日経)
→DRAMの指標品の7月の大口取引価格は前月から横ばいだった。横ばいは2カ月連続。パソコン(PC)やスマートフォン向けの需要の回復に時間がかかっている。
◇世界企業、半年ぶり増益 4〜6月 AI需要で半導体伸び 素材エネ、先行き懸念 (8月23日付け 日経)
→世界の企業業績が2四半期ぶり増益に転じた。2024年4〜6月期の純利益は前年同期より7%増えた。生成AI(人工知能)の旺盛な需要が半導体を伸ばしたほか、米テック大手の利益にも一部寄与した。半面、停滞が続く中国経済に加えて米国景気にも減速感が見られ、業績拡大を今後保てるかは不透明だ。
AI自体の今後について、これもいろいろな切り口の見方があらわされている。
◇Futurum Intelligence Releases AI Chipset Market Share Analysis (8月22日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→Futurumグループの調査部門であるFuturum Intelligenceは本日、AIチップセット市場のアナリストと調査結果を発表し、5年間の市場予測とセグメントサイジングを行った。同調査では、データセンター業界の$400B規模の世界データセンター市場に焦点を当て、AI処理が行われるサーバーセグメントを分析し、このセグメントが最も急速に成長し、AIアプリケーションの利用が最大規模になると推定している。
◇世界の原発、発電能力最大 今年、AI・脱炭素けん引 新設の6割が中ロ (8月22日付け 日経)
→世界の原子力発電の発電能力が2024年、6年ぶりに過去最大となった。人工知能(AI)の普及や脱炭素に伴う電力需要が急増し、二酸化炭素(CO2)を排出せず、出力の安定した原発の再興機運が高まっている。過去10年に新設された原発の6割は中国とロシアが占め、技術力も高めている。維持費は上昇し、米欧では政府が開発支援の動きを強めている。
◇NVIDIA次世代GPU、大幅高も 素材市況波及は限定的か (8月23日付け 日経 電子版 02:00)
→米半導体大手エヌビディアが近く投入する次世代GPU(画像処理半導体)を巡り、価格の見通しに市場関係者の関心が高まってきた。生成AI(人工知能)が普及するなかでデータセンター向けなどの引き合いが強く大幅高となりそう。DRAMなどメモリー市況もけん引する一方、製造を支える日本の素材の取引価格への波及は限定的なようだ。
次に、AI需要を巡る各社の活発な戦略的動きを、現時点基本時間順に以下示していく。まずは、ソフトバンクから。
◇SoftBank ends AI chip partnership with Intel, turns to TSMC (8月15日付け MSN)
→ソフトバンクは、AIチップ開発におけるインテルとの提携を正式に中止した。Financial Timesによると、インテルはソフトバンクが設定した生産量と速度の要件を満たすことができず、契約を失ったという。この挫折は、インテルが自身の財政難と闘う中で克服しなければならない問題について疑問を投げかけるもの。
そのインテルと、マイクロンによるAI向けメモリモジュールである。
◇Micron, Intel Bring MRDIMM Modules to Market―Micron, Intel introduce MRDIMMs for AI and HPC (8月16日付け EE Times)
→マイクロン・テクノロジーとインテルは、データセンター・アプリケーションのAIおよびハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)向けに設計されたmultiplexed rank dual inline memory modules(MRDIMMs:多重化ランク・デュアル・インライン・メモリ・モジュール)を発表した。32GBから256GBまでのMRDIMMsは、メモリ帯域幅とレイテンシを改善し、現行のTSV RDIMMsを上回る性能を提供する。
インド初のAI半導体が発表されている。
◇Ola Electric announces India’s first AI chip − Bodhi 1, Ojas, and Sarv 1 slated for 2026 and Bodhi 2 for 2028―Ola Electric readies India's first AI chips―A new player enters the AI market. (8月17日付け Tom's Hardware)
→Ola Electricは2026年からインド初のAIチップを発売する予定。Bodhi 1、OjasおよびSarv 1が最初にデビューし、Bodhi 2チップが2028年に続く。
AMDのAI事業拡大に向けたZT Systems買収関連が以下続いていく。
◇AMD to acquire server builder ZT Systems for $4.9 billion in cash and stock―AMD looks to boost AI ability with ZT Systems acquisition (8月19日付け CNBC)
→アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、ZTシステムズのコンピューティング・インフラ設計に関する専門知識を取り入れることで、AIエコシステムにおけるAMDの地位を強化する目的で、ZTシステムズを$4.9 billionで買収する。該買収は来年前半に完了する予定。
◇AMD to acquire infrastructure player ZT Systems for $4.9B to amp up its AI ecosystem play (8月19日付け TechCrunch)
◇AMD to buy AI equipment maker for $4.9B (8月19日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→サンタクララを拠点とするAMDが、データセンターおよびストレージ・インフラ・システムを設計・販売するZT Systems社を買収。
◇Five Ways AMD’s ZT Systems Acquisition May Enhance AI Sustainability―AMD looks to boost AI sustainability with ZT Systems (8月20日付け DevOps)
→アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は最近、ZTシステムズを$1.9 billionで買収したが、これはAI市場とデータセンターの持続可能性を高める可能性がある。AMDのプロセッサーは、ZTのエネルギー効率の高いサーバー・ソリューションと組み合わせることで、物理的フットプリントを削減し、エネルギー効率を向上させ、そしてより環境に優しいサプライチェーンを提供することができる。
◇AMD to acquire ZT Systems in US$4.9 billion deal to challenge Nvidia Corp (8月20日付け Taipei Times)
→アドバンスト・マイクロ・デバイセズ社(AMD)は、サーバー・メーカーのZTシステムズ社を現金と株式で買収することで合意した。
Secaucus, New Jersey(ニュージャージー州セコーカス)を拠点とするZTシステムズは、AMDのデータセンター・ソリューション事業グループの一員となると、昨日の声明で述べた。
◇AMD、サーバー企業7200億円で買収 AI事業拡大へ (8月20日付け 日経 電子版 03:46)
→米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は19日、サーバー機器を手がける米ZTシステムズを現金と株式交換で買収すると発表した。買収額は$4.9 billion(約7200億円)。データセンター向け技術を強化し、人工知能(AI)向け半導体で先行する競合の米エヌビディアに対抗する。
買収手続きは2025年前半に完了する見通し。
◇AMD Takes a Systems Approach to AI With ZT Acquisition (8月21日付け EE Times)
→*AMDは、フルスタックで垂直統合されたAIシステム・ソリューションの提供に向けて、新たな重要な一歩を踏み出した。
*AMDは、ニュージャージー州を拠点とするZTシステムズを買収する最終契約を締結したと発表した。2025年前半までに完了する見込みのこの買収は、現金と株式による取引で、買収後の業績連動報酬$400 millionを含む$4.9 billionと評価される。
Nvidiaの新しいAIお天気モデルである。
◇Storm chasers: Nvidia builds new AI weather model (8月19日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→StormCastと名づけられたこの新しいAIモデルは、スーパーコンピューターによる天気予報を打ち負かすことができると言われている。
韓国のAI半導体メーカー2社の合併である。
◇Domestic AI processor makers aim to boost market value―Rebellions, FuriosaAI set to challenge Nvidia (8月19日付け The Korea Times (Seoul))
→ニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)メーカーのRebellions(レベリオンズ)が、ライバルのプロセッサーメーカーであるSapeon Korea(サペオンコリア)と合併する正式契約を結んだと、サペオンコリアの筆頭株主であるSKテレコムが日曜18日に発表した。韓国のAIアクセラレーター・チップ企業、FuriosaAI(フュリオサAI)もIPOを目指し、投資家の注目を集めている。
◇AI chipmakers Sapeon Korea, Rebellions sign formal merger deal―AI chipmakers Sapeon Korea and Rebellions finalize merger (8月19日付け The Korea Times (Seoul))
→韓国の人工知能(AI)チップメーカー2社であるSapeon KoreaとRebellionsが正式な合併契約に調印した。
合併後の社名はリベリオンズになると同社関係者は述べた。
Sapeon Koreaは、国内大手の携帯キャリアであるSKテレコムのAIチッププロセッサー関連会社であり、レベリオンズは2020年に設立されたAIチップのファブレス・スタートアップである。
◇AI chipmakers Sapeon Korea, Rebellions sign formal merger deal (8月19日付け Yonhap News Agency)
→韓国の人工知能(AI)チップメーカー2社であるSapeon Korea Inc.とRebellions Inc.が正式な合併契約に調印した。
両社は6月、AIチップの世界市場での競争力向上を目指し、合併を模索していると発表した。
Qualcommの低価格スマートフォンでの高度なAI機能搭載である。
◇Qualcomm Pushes AI to Lower-Cost Phones With Snapdragon 7s Gen 3―Qualcomm brings advanced AI to budget phones (8月20日付け PC Magazine)
→1)該Snapdragon 7s Gen 3は、より低価格のスマートフォンでジェネレーティブAIをサポートし、より優れたマルチメディアエクスペリエンスを提供する。
2)クアルコムはSnapdragon 7s Gen 3モバイルプラットフォームを発表し、低価格スマートフォンに高度なAI機能を搭載することを目指している。このチップは、アップグレードされたKryo中央処理ユニット(CPU)とAdrenoグラフィック処理ユニット(GPU)を搭載し、20%の性能向上と45%の省電力化を実現している。
ベトナムのIT最大手が、AI関連で我が国に以下の通り進出である。
◇ベトナムFPT、日本でAIに300億円 エヌビディアと連携 (8月20日付け 日経 電子版 15:44)
→ベトナムのIT(情報技術)最大手FPTは日本で人工知能(AI)関連事業に$200 million(約300億円)を投資する。米エヌビディアの画像処理半導体(GPU)を導入して、2025年初めにもAI向けクラウド事業やAI関連のソフトウエア開発を始める。日本法人の人員も5000人まで増やす。
FPT本体の副社長で、中核子会社FPTソフトウエアのファム・ミン・トゥアン社長がインタビューで明らかにした。
米国のAI半導体スタートアップの資金調達である。
◇AI半導体の米グロック、950億円調達 エヌビディアに対抗 (8月20日付け 日経)
→半導体開発を手掛けるスタートアップの米グロック(Groq)は$640 million(約950億円)を調達したと発表した。人工知能(AI)向けの半導体の供給増に充てる。先端AI半導体をほぼ独占的に供給する米エヌビディアに対抗する。
AIのデータ処理は賢くするための「学習」と、質問に対する答えを導く「推論」がある。グロックが手掛ける半導体は推論に特化している。この分野ではエヌビディア製の画像処理半導体(GPU)より高速に処理できると説明している。
AMDがAIなどに向けたR&D拠点を、台湾の台南と高雄に設ける動きである。
同社CEOのLisa Su氏は、台南生まれとのこと。
◇AMD unveils locations for R&D centers―‘AL SILICON ISLAND’: Tainan is the birthplace of AMD chief executive officer Lisa Su, while TSMC is building a new fab to produce 2-nanometer chips in Kaohsiung (8月22日付け Taipei Times)
→経済部が昨日発表したところによると、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ社(AMD)は、人工知能(AI)やシリコンフォトニクスなどの最先端技術の開発を進めるため、米チップ企業同社の86億4000万台湾ドル($270.5 million)プロジェクトの一環として、台南と高雄に新たな研究開発(R&D)センターを設置することを決定した。
◇米AMD、台湾に2拠点 AI半導体を研究開発 (8月23日付け 日経)
→台湾経済部(経済省)は21日、米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が台湾南部の2カ所に研究開発センターを設けると明らかにした。総投資額は86億台湾ドル(約390億円)で、台湾当局が33億台湾ドルを支援する。
それぞれ南部の高雄市と台南市に立地する。台湾メディアによると400人ほど雇用し、人工知能(AI)向け半導体や、電気処理を光に置き換える「光電融合」などの研究開発を手掛ける見通し。
AI半導体メモリが好調なSK Hynixを傘下にもつSKグループのAIの変化へのいち早い対応が謳われている。
◇SK Group chief sees AI-induced changes as business opportunities (8月22日付け Yonhap News Agency)
→韓国のchip-to-chemicalコングロマリットであるSKグループの最高経営責任者は木曜22日、ビジネスチャンスをつかみ成長を追求するため、AIによる変化にいち早く対応していくと語った。
AIアクセラレータの開発は中止、今後はAI向けエッジGPUに注力する英国のImagination Technologiesである。
◇Imagination Raises $100 Million Investment To Take On Edge AI (8月23日付け EE Times)
→*英国のIPプロバイダーはAIアクセラレータの開発を中止し、今後はAI向けエッジGPUに注力する。
*英IPプロバイダーのイマジネーション・テクノロジーズは、Fortress Investment Groupから$100 millionの転換社債型term loanという形で投資を調達した。イマジネーションはこの資金で、エッジにおけるグラフィックス、コンピュート、AI向けの技術開発を支援するとともに、同社の野心的な成長目標に資金を供給する。
中国でもAIで全体の停滞を補う様相、ネット大手の百度が、「AIファースト」を鮮明にしている。
◇百度、「AIファースト」鮮明 中国17兆円市場で再成長狙う (8月23日付け 日経 電子版 17:24)
→中国ネット大手の百度(バイドゥ)が人工知能(AI)関連の収益を伸ばしている。22日に発表した2024年4〜6月期決算はAI関連サービスが成長し、全体の不振を補った。28年に17兆円規模に膨らむ見通しの中国AI市場の開拓を進め、同業大手の騰訊控股(テンセント)やアリババ集団を追う。
多岐多彩なAI応用に向けた半導体市場の見方、および各社の取り組み&動きについて、随時アップデートを要する状況と捉えている。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□8月20日(火)
9月利下げについてパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言が注目された今週であるが、以下の流れでその示唆が行われて、市場最高値に迫る上げで締めた米国株式市場である。
◇ 米S&P500、8日続伸 景気軟着陸期待でダウも上昇 (日経 電子版 06:39)
→19日の米株式市場でS&P500種株価指数は8日続伸し、前週末比1.0%高の5608.25で引けた。2023年11月以来、9カ月ぶりの続伸記録となった。前週発表の経済統計で過度な景気後退への警戒が和らぎ、経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まっていることが引き続き支えとなった。
ダウ工業株30種平均は5日続伸し、前週末比236ドル(0.6%)高の4万0896ドルで終えた。
米国大統領選挙に立ち向かう民主党大会が開かれ、中国へのスタンスが次の通りあらわされている。
◇米民主党大会が開幕 公約で「中国の挑戦に立ち向かう」 (日経 電子版 13:15)
→米民主党の全国大会が19日、中西部イリノイ州シカゴで開幕した。11月の大統領選の選挙公約となる党の政策綱領を採択し、中国との関係は「競争を責任を持って管理しながら、挑戦に立ち向かう」と盛り込んだ。大統領候補のハリス副大統領はバイデン大統領の外交方針を大筋で踏襲する。
□8月21日(水)
◇米S&P9日ぶり反落、FRB議長講演前に調整 ダウも下落 (日経 電子版 06:16)
→20日の米株式市場でS&P500種株価指数は9日ぶりに反落し、前日比0.2%安の5597.12で引けた。9カ月ぶりの8日続伸を記録した前日から、持ち高調整の売りが出た。カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を前に様子見ムードも広がる。
米主要株価指数は20日にそろって小幅安となった。ダウ工業株30種平均は前日比61ドル(0.2%)安の4万0834ドルで終えた。
米国の雇用統計発表が一波乱となっている。
◇U.S. Job Market Was Weaker Than Previously Reported, Data Show―US job growth sees largest revision since 2009―Employers might have added 818,000 fewer jobs in the 12 months through March, the Labor Department says (The Wall Street Journal)
→米労働省は、3月までの1年間の雇用増加予想を修正し、雇用者数が当初の発表より81万8000人減少したことを明らかにした。この大幅な下方修正により、月平均の雇用増加数は17.4万人となり、既報の24.2万人から減少した。この修正は2009年以降で最大であり、労働市場の健全性に対する懸念を高め、米連邦準備制度理事会(FRB)の9月の利下げ決定に影響を与える可能性がある。
□8月22日(木)
◇米雇用統計、市場騒がす年次改定 調査手法の課題指摘も (日経 電子版 11:09)
→米労働省が21日に雇用統計の年次改定を発表した。普段は市場を騒がせることのないものだが、事前に市場の予想していた下方修正幅が大きく、米労働市場の軟化を示すとの観測から、かつてない注目を集めた。公表が30分あまり遅れるというおまけもついたが、修正幅の大きさは統計がはらむ課題とともに雇用の弱さを改めて浮かび上がらせた。
◇NYダウ小反発、55ドル高 利下げ観測支えも上値重く (日経 電子版 06:26)
→21日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比55ドル52セント(0.13%)高の4万0890ドル49セントで終えた。米雇用統計の年次改定や米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の公表を受け、米連邦準備理事会(FRB)による9月の利下げ観測が相場を支えた。もっとも、23日に予定されるパウエルFRB議長の講演を見極めたい雰囲気が強く、ダウ平均の上値は限られた。
□8月23日(金)
◇NYダウ反落、177ドル安 FRB議長発言前に調整売り (日経 電子版 06:09)
→22日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比177ドル71セント(0.43%)安の4万0712ドル78セントで終えた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が23日に発言するのを前に持ち高調整の売りが出たほか、金利の上昇がハイテク株の重荷だった。もっとも、FRBが9月に利下げに転じるとの見方は根強く、ダウ平均の下値は堅かった。
FRB議長の発言を受けた米国株式市場の今週の締めの動き関連である。
◇FRB議長、9月利下げ「時が来た」 米金融政策が転換点 (日経 電子版 23:01)
→米国の金融政策が転換点を迎えた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は23日の講演で「政策を調整すべき時が来た」と次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げをほぼ明言した。世界最大の経済大国の4年半ぶりの利下げは、世界の市場やマネーの動きにも大きな影響を与える。
□8月24日(土)
◇ダウ最高値を阻んだジャクソンホール会議(NY特急便) (日経 電子版 05:34)
→23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比462ドル高の4万1175ドルで終えた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が同日の講演で利下げを示唆し、買いが集まった。一時は7月中旬に付けた最高値(4万1198ドル)を上回った。
「政策を調整する時が来た」。パウエル議長は23日の米カンザスシティー連銀が主催する経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)の講演でこう語った。
◇NYダウ462ドル高、迫る最高値 利下げ示唆で割高感薄れ (日経 電子版 05:37)
→23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比462ドル(1.1%)高の4万1175ドルで引けた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が23日の講演で9月利下げ開始をほぼ明言し、リスク資産の株に資金が向かった。ダウ平均は7月の最高値に迫るが、金利対比でみた割高感はやや薄らいでおり株買いを支える。
≪市場実態PickUp≫
【米国CHIPS and Science Act関連】
制定されてから2年が経過、前回も主テーマとして取り上げたが、今週の今回も下記の通りいくつか、米国国内の半導体製造強化に向けた動き&内容が見られている。
◇Texas Instruments to receive a total of US$4.6bn in CHIPS Act grants, loans (8月17日付け Taipei Times)
→テキサス・インスツルメンツ(TI)社が$1.6 billionのCHIPS法補助金と$3 billionの融資を受けると、ジョー・バイデン米大統領政権が木曜15日に発表、米国の半導体製造業を後押しするプログラムからの最新の主要な供与。
◇Harnessing Data Is Paramount to Reshoring the Chip IndustryOpinion (8月19日付け EE Times)
→経済的および国家安全保障上の理由から、半導体産業は30年以上にわたる協調的なオフショアリングの後、米国内で再建されつつある。このリショアリングの規模は莫大であり、2022年の連邦政府CHIPSおよび科学法(CHIPS and Science Act of 2022)による$52.7 billionの注入はその始まりに過ぎない。米国半導体産業協会(SIA)は、今後10年間で、米国の数十カ所の工場建設やその他のインフラ整備に$650 billion近くが投じられると予想しており、これは同業界の世界的な資本支出の28%に相当する。
◇CHIPS Act Stimulus Winner Sold Home to Start Fab News (8月19日付け EE Times)
→CHIPS法の景気刺激策の獲得者は、21年前にRogue Valley Microdevicesを起業するために家を修理を施して充てた。この微小電気機械システム(MEMS)メーカーの設立には、気概と2年制の学位、そして多くの決意が必要だったと、Jessica Gomez(ジェシカ・ゴメス)CEOはEE Timesに語った。20年前、ゴメス氏と彼女の夫は、ローグ・バレーを立ち上げるために、カリフォルニアの家の売却益から$180,000を取り出した。
◇CHIPS Act: Two years later―Two years in: CHIPS Act spurs $450B in private investments (8月22日付け Electronics360)
→2年前にCHIPS and Science Actが制定されて以来、米国では半導体製造分野が急成長し、チップメーカーに$30 billion以上の直接資金が提供された。米国・Semiconductor Industry Association(SIA:半導体産業協会)によれば、この法律は$450 billionの民間投資と56,000人以上の直接雇用の創出につながったという。
【米中摩擦関連】
米国および我が国など同盟国、そして相対する中国、という構図の中で、それぞれ関連する動き&内容が相次いで見られており、基本時間順に以下示している。
◇Tech war: China pumps up state subsidies for chip industry to counter US sanctions (8月16日付け South China Morning Post)
→*Huawei社、SMIC社、Naura Technology社など中国の主要チッププレーヤーへの政府補助金が2023年に膨れ上がったことがPostの分析で明らかになった。
*ワシントンとの緊張が高まる中、北京が科学技術的自給を高める努力を倍増させたため、中国の半導体業界の主要プレーヤー - ファウンドリー、チップ設計およびパッケージング会社を含む - が受ける政府補助金が昨年大幅に急増した。
◇Japan tightens rules to secure its chip supply (8月17日付け Taipei Times)
→日本の財務省は昨日、安定したサプライチェーンを確保する努力の一環として、チップ製造装置に外国貿易規制を適用することを決定したと発表した。外国人投資家は、上場企業の1%以上の株式を取得する場合や、非上場企業の株式を購入する場合を含め、チップ製造に関連する装置に直接投資を行う場合、事前に通知する必要があると同省は声明で発表した。
◇ASML’s CEO Believes That Europe Needs China’s Legacy Chips To Sustain Demand But 10 Years Behind In Chip Tech (8月19日付け wccftech)
→*ASMLのCEOが、技術面で数年遅れているにもかかわらず、グローバル市場にとって中国の半導体生産の重要性を改めて強調している。
*ASMLのCEO、欧州が半導体生産で自立するまでには長い道のりがあると主張、中国はチップ技術で数年遅れているかもしれないが該地域には必要
◇Tech war: Shanghai injects US$1 billion into chip fund as China strives for self-reliance (8月19日付け South China Morning Post)
→*最新の資金調達ラウンドにより、Shanghai Semiconductor Industry Investment Fund(SSIIF:上海半導体産業投資基金)の規模は$2 billionに拡大
*上海市政府が地元のチップ業界を支援するために運営する上海半導体産業投資ファンド(SSIIF)が、新たな資金調達ラウンドの後、その規模が約$20 billionに倍増、米国が半導体業界を標的とする制裁の中、中国の半導体ハブがこのセクターにさらに資金を投入している。
◇China tightens antimony exports, raising supply concerns (8月19日付け DIGITIMES)
→中国商務部は、半導体材料に不可欠なレアメタルであるantimony(アンチモン)に輸出規制を拡大すると発表した。9月15日以降、中国の輸出業者がアンチモン関連製品を海外に出荷するには政府の承認が必要となる。
◇Tech war: upcoming Huawei chip unit event stokes speculation over breakthrough (8月20日付け South China Morning Post)
→*チップ設計からOSまで、ファーウェイ中心のテクノロジー・エコシステムが正式に形成されるとの話も
*ファーウェイ・テクノロジーズの秘密裏に設立されたチップ設計部門、HiSiliconが来月予定しているカンファレンスは、制裁を打破する突破口が発表されるかもしれないとの憶測を呼び、一部の中国上場ハイテク株の急騰を引き起こした。
◇Chip war: China is 5 years behind global leading-edge production, report says (8月20日付け South China Morning Post)
→*米シンクタンク、ITIFによると、先端チップ製造において世界のトップ企業は中国トップ企業より数年先行している。
*中国は、先端ロジックチップの商業的製造では世界のトップに5年遅れており、半導体製造装置では遅れをとり続けている。
最先端のロジックチップ製造では、台湾積体電路製造(TSMC)などのトッププレーヤーは、中国本土最大のファウンドリーであるセミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル・コーポレーション(SMIC)よりも技術的に約5年進んでいると、ワシントンに拠点を置く科学技術政策シンクタンク、Information Technology and Innovation Foundation(ITIF:情報技術革新財団)が月曜19日に発表した報告書は述べている。
◇Securing the US semiconductor sector (8月21日付け East Asia Forum)
→半導体産業は米国経済と国家安全保障にとって極めて重要であるが、大きな課題に直面している。CHIPS and Science Actは、国内製造の不足に対処し、海外サプライヤーへの依存を減らすことを目的としており、すでに$450 billionを超える民間投資に拍車をかけている。しかし、財政的制約、サプライチェーンの混乱および中国との地政学的緊張の中で、懸念は根強い。戦略的な政策改革、国際協力および人材育成の強化は、この重要分野における米国のリーダーシップを確保するために不可欠である。
◇China's semiconductor companies report stellar operational gains despite US crackdown―Sector navigates US crackdown, achieves strong growth (8月21日付け Global Times (China))
→世界の半導体業界が力強い立ち直りを見せる中、中国の半導体企業が上半期に素晴らしい利益を計上した。
米国の無謀な取り締まりにもかかわらず、中国半導体企業は自立において大きな前進を遂げ、グローバル半導体業界においてより顕著になった、と中国のアナリストが水曜21日に述べた。
◇Chinese Imports of Chip Gear Hit Record $26 Billion This Year―China has imported a record $26B in chipmaking equipment so far this year (8月22日付け BNN Bloomberg (Canada))
→中国の半導体製造装置の輸入が、今年最初の7ヶ月間で過去最高を記録、米国およびその同盟国がさらに購入を阻止する場合に備え、このアジアの国の企業が購入を拡大し続けている旨。
China’s General Administration of Customs(中国税関総署)が今週発表した貿易データによると、中国企業は約$26 billion相当のチップ製造装置を輸入した。アメリカ、日本およびオランダの当局者が中国企業への規制強化に取り組む中、この額は2021年の最高額を上回った。
◇Chinese companies spend $26 billion on advanced chipmaking machinery investment―Chinese firms ramp up chip gear spending to $26B ―More tools, more chips. (8月22日付け Tom's Hardware)
→ブルームバーグが中国税関総署のデータを引用して報じたところによると、中国企業はチップ製造装置の輸入を大幅に増やし、今年最初の7ヵ月間で$26 billion近くを費やしている。この急増は、2021年に記録したこれまでのピークを上回る新記録となった。これらの企業は、米国とその同盟国による高度なチップ製造ツールに対するさらなる規制の可能性に備えている。
【TSMCのドイツ工場起工】
TSMCが欧州に進出、ドイツ・ドレスデンでの工場起工関連が、以下の通りである。TSMC、Robert Bosch, Infineon, およびNXPの合弁会社、ESMCとの表記もある。
◇TSMC Breaks Ground on 10 Billion Euros German Plant in Chip War Salvo―TSMC begins construction on first European chip plant (8月20日付け BNN Bloomberg (Canada))
→Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.(TSMC)が、ドイツのDresdenに欧州初となる$11 billion fabの建設を開始した。ドイツのOlaf Scholz(オラフ・ショルツ)首相は、「われわれは持続可能な未来技術のために半導体に依存しているが、半導体の供給を世界の他の地域に依存してはならない。」と述べた。
◇TSMC breaks ground on EUR10 billion semiconductor fab in Dresden (8月21日付け DIGITIMES)
→ESMCは、ドイツのドレスデンに新しい半導体製造施設の建設を開始した。TSMC、Robert Bosch, Infineon, およびNXPの合弁会社は、100億ユーロ($11 billion)以上を投資し、EU初のFinFET対応専業ファウンドリーを設立する。この拠点は、欧州における半導体製造能力を強化し、大きな雇用機会を生み出すと期待されている。
◇TSMC breaks ground on German fab (8月21日付け Taipei Times)
→*チップ競争:該Dresden拠点は半導体のアジアへの依存を減らす一方、ドイツは2030年までに世界のチップの5分の1を生産することを目指している。
*Taiwan Semiconductor Manufacturing Co(TSMC、台積電)が昨日、ドイツのドレスデンで初の欧州工場に着工、米国と中国の緊張が高まる中、欧州大陸がチップ供給を守ろうとしている。
◇TSMC、欧州に車載半導体供給拠点 ドイツ工場起工 エンジニア数百人派遣 (8月21日付け 日経)
→半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)は20日、同社として欧州初となる工場の起工式をドイツ東部・ドレスデンで開いた。独自動車部品大手ボッシュなどとの共同出資で運営し、欧州向けの車載半導体の供給基地とする。エンジニア数百人を派遣し人材不足にも先手を打つ。
式典にはTSMCの魏哲家・董事長兼最高経営責任者(CEO)、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長、ドイツのショルツ首相らが出席した。魏氏は「ドレスデンを選んだ理由はシンプルだ。顧客にとても近く、優秀な人材にアクセスできる」と述べた。
◇Global Efforts Heat Up to Boost Semiconductor Production―SK Hynix, TI, ESMC help lead production surge―Investments in semiconductor manufacturing have been on the rise in recent years. Here’s a few new examples. (8月22日付け All About Circuits)
→各国政府と半導体企業は、以下のように生産努力を強化している。
- SKハイニックスは、インディアナ州の先端パッケージング拠点のために米国商務省と資金援助契約を締結した。
- テキサス・インスツルメンツはテキサス州とユタ州に300mm半導体ウェーハ工場を新設するための資金援助を受ける予定である。
- ヨーロピアンセミコンダクターマニュファクチャリング社(ESMC)は、ドイツで半導体工場の基礎工事を開始した。
【第2四半期の世界半導体製造業界】
SEMIが発表した4−6月四半期の業況、AI需要が引っ張って強まりを増す、と以下の通りである。
◇Global Semiconductor Manufacturing Industry Strengthens in Q2 2024, SEMI Reports (8月19日付け SEMI)
→SEMIが本日、TechInsightsとの提携で作成したSemiconductor Manufacturing Monitor(SMM)レポート2024年第2四半期で発表したところによると、2024年第2四半期の世界半導体製造業界は、IC売上げの大幅な伸び、設備投資の安定化、およびウェーハfab設備能力の増加で引き続き改善の兆しを示している。一部の最終市場における回復の鈍化が今年前半の成長ペースに影響を及ぼしたものの、AIチップおよび高帯域幅メモリ(HBM)に対する需要の急増が業界拡大を牽引する強力な追い風となった。
◇Global Semiconductor Manufacturing Industry Strengthens in Q2 2024, SEMI Reports (8月19日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→SEMIは本日、TechInsightsとの提携で作成したSemiconductor Manufacturing Monitor(SMM)レポート2024年第2四半期発行の中で、2024年第2四半期の世界半導体製造業界は、IC販売高の大幅な伸び、設備投資の安定化、およびウェーハファブ設置能力の増加で引き続き改善の兆しを示したと発表した。一部の最終市場における回復の鈍化が今年前半の成長ペースに影響を与えたものの、AIチップおよび高帯域幅メモリ(HBM)に対する需要の急増が業界拡大を牽引する強力な追い風となった。
◇Global semiconductor manufacturing industry strengthens in 2Q24, SEMI reports―Report: Global chip manufacturing improved in Q2 (8月20日付け DIGITIMES)
→SEMIおよびTechInsightsによると、世界の半導体製造業界は第2四半期に強化された。IC販売高が伸び、設備投資が安定し、そしてウェーハ工場の設備容量が増加したとのこと。「半導体サプライチェーン全体が今年回復しており、市場は2025年の急増に備えている。」とTechInsightsの市場分析担当director、Boris Metodiev氏。「AIは確実に高価値ICsを市場に押し上げ続けている。」
【新半導体市場圏】
インド、そしてマレーシア、シンガポール、ベトナムはじめ東南アジアにおける半導体サプライチェーン構築の動き関連、これも定点観測のテーマとなる様相である。
◇PM Modi Outlines India’s Semiconductor Industry Commitment (8月21日付け EE Times India)
→Narendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相は、インドが半導体生産の世界的リーダーになるためのコミットメントを概説した。
◇Southeast Asia and India deployment of semi supply chains―Semiconductor supply chains diversify to Southeast Asia, India (8月21日付け DIGITIMES)
→世界の半導体業界は、シンガポールとマレーシアへの展開をさらに推し進める一方、インドへの注目も高まっている。
【Fan-on-a-Chip】
デバイスの冷却に向けた“Fan-on-a-Chip”の取り組みがあらわされている。興味深い内容、今後に注目である。
◇Xmems Labs introduces tiny fans on chips for micro-cooling―Xmems Labs offers "fan-on-a-chip" micro-cooling for mobile devices (8月20日付け VentureBeat)
→Xmems Labs(エクスメムズ・ラボ)は、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器を積極的に冷却するための「fan on a chip」マイクロ冷却部品を発表した。
これは、同社がMEMS(Micro Electromechanical Systems:微小電気機械システム)技術を使って製造している全シリコンのマイクロスピーカーと同様、厚さわずか1ミリのオールシリコン・デバイスであり、半導体チップ上のシリコンから極小の機械構造が作り出されている、とXmemsのCEOであるJoseph Jiang氏は、VentureBeatとのインタビューで語った。
◇All-Silicon “Fan-on-a-Chip” Keeps Thin Devices Cool ―The xMEMS fan can enable better on-device AI systems on phones and laptops (8月20日付け IEEE Spectrum)
→マイクロスピーカーメーカーのxMEMSは、世界初のオールシリコンファン・オン・チップであるXMC-2400で解決策を得たと考えている。厚さ約1ミリ、幅と奥行きは1センチ未満というその設計は、xMEMSのオーディオ製品から得た教訓に基づいている。