2023年、SiCパワーデバイスのトップ5社ランキング
2023年におけるSiCパワー半導体のトップ5社ランキングが発表された。これによると1位のSTMicroelectronicsは前年と同様だが、onsemiが前年の4位から2位に浮上した。トップ5社でSiCデバイス製品販売額の92%を占めているという。これは市場調査会社TrendForceが明らかにしたもの。SiCは電気自動車で今後の発展が見込まれる。
図1 SiC半導体上位5社が市場の92%を占める 出典:TrendForce
TrendForceの見積もりによると、トップ5社が占める売上額はSiC市場全体の91.9%にも及ぶ。しかもSiC市場をけん引するのは、バッテリーだけで作動する電気自動車(EV)であるため、いかに自動車メーカーに食い込むかが問われている。
トップのSTMicroeectronicsのSiC半導体がTesla MotorsのモデルSで採用されたことで、量産が進み、シェア32.6%とトップシェアを行く。だが、バッテリーEVはこの所、中国市場から値下げ攻勢が顕著になり、ややスローダウンしている。この影響を受け、SiCもスローダウンして2024年は前年比マイナス成長になる恐れがある。もちろん、生成AIブームでセータセンターやAIスーパーコンピュータ向け電源需要はあるが、SiCにとってさほど大きな成長は期待できない。シリコンのIGBTでも対応できるからだ。
トップのSTはSiCでさらに引き離すため、イタリアのカターニア工場にSiC専門プロセス工場を建設中で2026年に稼働を開始する予定だ。さらに中国のSanan Optoelectronicsと共同で8インチSiC工場も建設中で、今年の末には稼働する予定となっている。SiC材料はSanan Optoelectronicsが供給する。
2位になったonsemiは、韓国のブチョン市にあるSiC工場の拡張工事を2023年に終え、25年までに8インチラインの検証を終えると8インチ化へシフトする計画だ。Onsemiは結晶メーカーのGTATを買収して手に入れたことでSiCウェーハの半分を賄う。内部でSiCブールを成長させることで粗利益率50%目指す。
3位になったInfineon Technologiesは、SiC需要の半分は工業用から来ており、SiCウェーハプロセスのマレーシアのクリム工場における主要顧客のSolarEdge社が経営困難に直面しており、Infineonはその影響を受けたとしている。EV向けの事業は着実に進展しており、小米の新しいEV「SU7」が発表されるようになったが、EV市場は全体的に低調なため苦しい状況が続いている。
4位のWolfspeedはこの2年間市場の機会を失いパワー半導体事業を見直している。とはいえ、SiC結晶ビジネスではトップを行く会社であり、8インチ化は先行している。同社のJP工場はほぼ稼働可能な状態になっており、稼働すると生産量の増強が期待されている。ニューヨーク州のモアーク工場の試運転も進んでいる。ただ、工場の稼働率はまだ上がっておらず財務的に苦しい状況に直面しているという。
ロームは鹿児島の国富工場を手に入れ、今年8インチ基板を製造開始する予定だ。自動車のOEMとティア1サプライヤーVitesco Technologiesやマツダ、Geelyなどとも長期的な関係を築いており、次世代パワーモジュールの開発を促進する。
SiCは世界中で10社以上の企業が投資をしており、特に8インチウェーハラインに注力している。市場は拡大しており、競争はますます激化しそうだ。