台湾大地震、TSMCの回復力は高そう、震度5の新竹でも80%以上復旧
4月3日に発生した台湾の大地震によるTSMCへの影響はどうだったか。徐々にそれが明らかになりつつある。地震から数日たち、TSMCは地震からの回復力(Resilience)が高そうだ。また、熊本のJASMを訪問しているTSMCのC.C. Wei CEOは、第2工場を第1工場と同じ菊陽町に建設すると述べた。
4月3日、台湾東海岸の花蓮市を中心に大きな被害が出た大地震がTSMCに与える影響がどうやら少しずつ明らかになりつつある。4月5日の日本経済新聞によると、「TSMCは4日夜、工場設備の80%以上が復旧したと明らかにした。安全確認のため各地で中断していた新工場の建設工事も同日再開した」。特に、先端品を生産する南部・台南市の工場は同日中にも完全復旧するという。中央通訊社が発行するFocus Taiwanの4月6日の記事では、TSMCは4月3日の地震の10時間後には70%が回復したと発表した、とレポートしている。
今回の大地震では、TSMCは工場の稼働を止め、細部にわたって点検した後、問題なければすぐに稼働させると直後に述べている。「地震そのものと、工場の緊急停止によるウェーハの損傷や割れなどの損害はあるものの、成熟プロセスの稼働率は50〜80%だったため、最小限の影響で済んだ」、と台湾を拠点とする市場調査会社のTrendForceは述べている。
現実には台湾東部中央の花蓮市(震度6以上)から北の地域では、TSMCの工場のある新竹(震度5)において被害が出た。しかし、TSMCの新竹地区以外の台南、台中(共に震度4)の工場の被害は少ないようだ。
図1 TSMCの研究開発拠点Fab12A 出典:TSMC
TSMCでは、6インチと8インチの工場であるFab2とFab3、Fab5、Fab8と、12インチ(300mm)のR&Dの拠点であるFab12(図1)、そして新竹県内の宝山にある最新のFab20において震度4の揺れを観測した。このうち、Fab12だけが配管の損傷によりウェーハがダメージを受けたとTrendForceがレポートしている。ここではまだ量産していない2nmプロセスに影響が出て、新規に装置を購入する必要がある可能性が高く、費用がかかりそうだ。しかし、他の工場は重大な損傷は報告されていないため、順次再開していくという。
DRAM生産では新北市にあるNanyaのFab3A工場が損害を受けたという。また、新北市に近いMicronの林口工場は1β nmプロセスを開発しており、被害はまだ評価中だとしながらも、数日以内に回復すると見込んでいる。
4月6日の日経夕刊は、「TSMCは5日夜、台湾東部沖を震源とする大規模地震を巡り、稼働に影響が出ていた工場設備がほぼ復旧したと発表した」と報じている。また、TSMCは今年の売り上げ見込みは震災後も変わらないとしている、とFocus Taiwanが報じた。
熊本で、Wei CEOは第1工場の現地調達率が30年までに60%に達する見通しを示し、両工場で3500人以上の高度技術専門職を直接採用し良質な雇用を提供する、と述べたことを7日の日経が報じた。これは日本がTSMCにとって最適な場所であることを認識したためであろう。実際、東京で開催された「2024年台湾半導体デー」(参考資料1)において、著書「TSMC、世界を動かすヒミツ」を執筆したジャーナリストの林宏文氏は「JASMは、TSMCの海外工場で最も成功しそうな工場」と述べており、日本では半導体製造のサプライチェーン(製造装置や材料など)がしっかりしており、人材も期待できそうと見ている。
参考資料
1. 「日台相互協力が今後の半導体の鍵に〜2024年台湾半導体デーから」、セミコンポータル (2024/04/05)