生成AIやHPC市場に向け、HBM製品の競争始まる
長いゴールデンウィークが開け、その間DRAMメーカーのHBM(High Bandwidth Memory)への開発が続々発表された。これまで圧倒的にリードしてきたSK Hynixに続きSamsung、さらにMicron TechnologyなどがHBM製品をサンプル出荷している。2日にはファウンドリPSMCが新工場を台湾に設立、半導体産業は攻めの姿勢を見せた。
韓国Samsungは、4月30日に2024年度第1四半期(1Q:1〜3月期)の決算発表を行い、半導体部門が黒字に転じたと発表した。メモリ売上額が前年同期比96%増の17.49兆ウォン(1ウォン=0.11円)、システムLSIやイメージセンサ、ファウンドリなど非メモリ部門の売上額は同15%減の5.65兆ウォンとなった。半導体全体では前年同期比68%増の23.14兆ウォンとなった。半導体部門の営業損益は1.91兆ウォンの黒字となり、1年以上赤字が続いてきた最後の前期(2023年第4四半期)の赤字2.18兆ウォンから脱出した。高速DRAMのDDR5や生成AI向けのストレージなどの需要が高まり単価の値上げも続いたことで黒字に転換できたとしている。
5月1日の日本経済新聞によると、今後HBMに力を入れていくという。「金在駿(キム・ジェジュン)副社長はHBMの供給能力を24年は前年比3倍以上、さらに25年は24年比2倍以上に増やす計画を明かし、『市場でのリーダーシップを高める』と強調した。3月にはHBMを中心とする半導体の研究開発拠点の整備に20兆ウォンを投じ、2〜3年以内に業界首位になる目標も掲げていた」と報じた。
第2四半期に対する見通しに関しては、生成AIに関係する需要に対応して、HBM3E 8Hと12Hの製品を量産する計画だ。8H、12HはそれぞれDRAMダイを8枚、12枚積層した製品を意味している。またサーバ市場では、1βnmプロセスによる32GビットのDDR5製品も量産開始する予定だとしている。また、パソコンやスマートフォン市場の回復が遅れているようで、PC・スマホ向けよりもサーバとストレージ市場向けに生産の割り当てを増やしていくとしている。
Samsungの非メモリ部門に属するファウンドリ事業の2Q見通しについて、市場が少しずつ回復してきているため2桁成長に達すると期待している。2nmの設計インフラの開発を完了し、4nmプロセス技術を準備して3D-ICに応用し先端技術で競争力を上げるとしている。年内には3nmプロセスでGAA(Gate All Around)トランジスタ技術を量産適用するとともに、AIやHPC(High Performance Computing)向けなどの高成長が期待される分野に向け2nm技術を完成させていく、としている。
Samsungよりも一足先に黒字化を達成していたSK hynixはSamsungの5日前に決算発表をしており、売上額が前年同期比144%増の12.43兆ウォンと急増し、営業損益は同3.4兆ウォンの赤字から2.89兆ウォンの黒字に転換した。
図1 SK HynixのHBM3Eチップ 出典:SK Hynix
2Q見通しに関してDRAMは、前期比で10数%の中ごろ増の売り上げ増を見込んでおり特に、HBM3E(図1)の出荷を増やしていく。1βnmプロセスを使ったDRAMダイを使ったHBM3Eの量産を3月に開始した。さらにその次の製品となるHBM4に関しては、TSMCと共同開発してHBB製品のトップを維持する考えだ。HynixはTSMCと合意したことを4月19日に発表している(参考資料1)。
NANDフラッシュメモリに関してNAND市場は前四半期比でほぼフラットで、企業向けSSDを増やしていく。消費者向けNANDフラッシュは需要がはっきり見えるようになるまで在庫を確保しておくとしている。
Micronは、2月26日のHBM3Eの量産を開始したことを発表したが、HBMだけではなくDDR5の128GBメモリモジュール(RDIMM)でも生成AI向けのメモリとして供給すると5月1日に発表した(参考資料2)。Micronの決算月はカレンダー月ではないため財務発表はないが、技術力を誇示した。DRAMダイとして量産中の1βnmプロセスによる32GビットDRAMを多数搭載した。この128GB DDR5 RDIMMは、TSVを使った製品と比べ、集積度は45%増、エネルギー効率は22%増、レイテンシ(遅延)は16%短縮したとしている。
5月2日には、台湾のファウンドリPSMCが、台中市と新竹市との中間に位置する苗栗県の銅羅サイエンスパークに新工場を完成させセレモニーを行った(参考資料3)。3000億台湾元(約1.2兆円)強を投資した300mmウェーハプロセス工場で、トライアル生産を開始した。ここで55nm、40nm、28nmプロセスの製品を生産し、将来はさらに微細の2x nmにも対応していく。海外のIDM(Integrated Device Manufacturer)やファブレス半導体企業などのサプライチェーンとなるとCEOのFrank Huang氏は述べている。
参考資料
1. "SK hynix Partners with TSMC to Strengthen HBM Technological Leadership", SK Hynix Newsroom, (2024/04/19)
2. "Micron First to Ship Critical Memory for AI Data Centers", Micron Press Release, (2024/05/01)
3. "PSMC’s Tonglou New Fab Inauguration Attracts Attention forom Domestic and Foreign Leaders", PSMC Press Releases, (2024/05/02)