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韓国でなかなか育たない非メモリビジネス事情(3)−巨額投資計画明らかに

昨年7月に「韓国でなかなか育たない非メモリビジネス事情―韓国政府の危機感」と題して、中国勢の隆盛で韓国の半導体産業が競争力を失ってしまうのではないかという強い危機感を持つ韓国政府が非メモリ強化策を打ち出したがどれも成功していないことを紹介した(参考資料1)。

引き続き8月には「韓国でなかなか育たない非メモリビジネス事情(続編 −DRAM企業のジレンマ」と題して、韓国勢は濡れ手に粟状態のメモリビジネスにどっぷりとはまっており、政府が非メモリビジネス強化の笛吹けど踊らない状況を紹介した(参考資料2)。

しかし、最近になってメモリバブルがはじけて事態が急変した。韓国勢が世界市場で7割超のシェアを握るDRAMの需要減退にともなう価格急落と在庫増加で、SamsungとSK Hynixの業績は2018年第4四半期に続き2019年第1四期にはさらに大きく悪化してしまった。第2四半期も反転しないとの観測が有力である。

韓国勢のメモリ偏重経営は、メモリバブルの際には莫大な利益をもたらしたが、不況になるととたんに総崩れ状態になってしまう。このような事態の急変に直面して、韓国では、本気の非メモリ強化策が急浮上してきた。

SamsungがシステムLSI強化に13兆円投資へ

Samsung Electronicsは4月24日、同社のシステムLSI (SoC) およびファウンドリビジネス(Samsung社内や韓国内で非メモリと呼ばれている事業)を強化するため、2030年までに総額133兆ウォン(約13兆円)の投資を行うとの長期計画「半導体ビジョン2030」を発表した(参考資料3)。同社のシステムLSI事業部門(CMOSイメージセンサ、スマホ用プロセッサ、5G用モデムチップなど自社開発のシステムLSI製造)と同部門から独立した製造受託事業部門であるSamsung Foundryの強化策である。

これに続いて、財閥に距離を置いてきた文在寅(ムン ジェイン)大統領は4月30日、はじめてSamsung半導体工場を訪れ、同社の「非メモリ半導体ビジョン宣言式」に出席して、「政府も同社のシステムLSI強化に積極的に支援する」と約束した。そして、大統領は「(韓国半導体業界は)半導体メモリ分野で世界1位を維持しながら、2030年までにシステムLSIのファウンドリ事業分野で世界1位、ファブレス分野で世界シェア10%を達成し、総合半導体強国に飛躍する」と宣言した。韓国政府は、かねてよりSamsungに非メモリ事業を強化するように再三要請していたが、メモリ不況で業績暴落に見舞われた同社がやっと重い腰を上げたようだ(参考資料1)。

韓国産業通商資源部(日本の経済産業省に相当)は、大統領宣言に呼応する形で「システム半導体ビジョンと戦略」と称する非メモリビジネス強化施策を発表した。そして、ファブレス需要創出、ファウンドリ支援、共生生態系の構築、人材育成・雇用創出、技術開発支援を重点的に支援することにした。さらには、2021年から延世大学と高麗大学に政府支援のシステム半導体契約学科を新設し、段階的に支援をほかの大学にも拡大して行くとしている。契約学科では、すでに入学の時点で、Samsungなどと卒業後の雇用契約を結び、卒業後の就職が保証されるだけではなく、学費などを企業や政府が援助することになっている。

SK Hynixは12兆円投資、ソウル近郊に新たな巨大半導体工場群建設へ

メモリ専業のように思われてきSK Hynixも、非メモリビジネス強化策の一環として、CMOSイメージセンサおよびファウンドリ事業に注力し始めているが、まだまだ巨象Samsungと勝負できるまでには成長していない。韓国内には日本同様にファブレスが育っておらず、子会社SK Hynix System ICは、韓国内でのファウンドリ事業で苦戦しており、中国市場に焦点を当てて中国無錫に現地政府と共同出資でファウンドリファブを建設中である。さらに同社は、ロジックLSIビジネス強化のため、韓 MagnaChip Semiconductorのファウンドリ事業を、工場も含めて買収を検討していると韓国メディアは伝えている。2004年に経営再建中のHynix(SK Hynixの前身)はメモリ事業に専念するため、システムLSI事業を売却したが、今度は非メモリビジネス強化のために買い戻そうとしている。

今年2月、SK Hynixは、総額120兆ウォン(12兆円)を投じてソウル近郊の京畿道龍仁(ヨンイン)に、世界最大規模の半導体工業団地(Semiconductor Cluster; 448万m2)を2022年から建設を始めることを決めた。ここに当面4つの半導体製造棟(ファブ)を建設し、月産80万枚の300mmウェーハを生産するという。主力のDRAMに加えて次世代メモリ(東芝と共同開発中のMRAMか?)やシステムLSIなど未来志向のデバイスの製造拠点になるのではないかと見られている。

私たちが半導体の歴史から学ぶことは、不況期であっても、いや不況期であればこそ、将来に備えてファブ建設や設備投資を行い、好況期に向けた生産能力向上準備を怠らないことが、半導体業界で勝ち残る鉄則であるということだ(参考資料4)。日本勢は、1995年のDRAM半導体バブル後の不況時や2000年のITバブル後の不況時に、各社横並びで投資を怠り、即断即決の李健熙(イ ゴンヒ)会長率いる猛進Samsungに負けてしまった。

韓国を代表する半導体企業2社によるメモリ不況下での巨額投資計画の発表、韓国政府による非メモリ強化策の発表で、2020年代に韓国が「半導体メモリ強国」から「総合半導体強国」(文大統領)に脱皮できるか注目される。

Hattori Consulting International 代表  服部毅

参考資料
1. 韓国でなかなか育たない非メモリビジネス事情―韓国政府の危機感 (2018/07/24)
2. 韓国でなかなか育たない非メモリビジネス事情(続編)−DRAM企業のジレンマ (2018/08/02)
3. Samsung Electronics to Invest KRW 133 Trillion in Logic Chip Businesses by 2030 (2019/04/24)
4. 服部毅:「低迷する半導体、反転の糸口:不確実な半導体業界にも“勝利の方程式”はある、それは不況期の積極投資」日経xTECH (2019/04/25)

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