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韓国の先端素材国産化はかなり困難〜利益が出ない開発期間を耐えられるか

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「LGディスプレイがフッ化水素の100%国産化を完了」、「中国やロシアなど、様々な素材を日本以外から調達」、「韓国政府は部品・素材の国産化に全力投球」。こうした報道が飛び交う中で、筆者は11月10日に韓国・ソウルに渡り「なぜ日本は素材産業が強いのか」というテーマで講演をさせていただいた。中央日報をはじめとする地元メディアの方々も聴講していた。なにしろ韓国は、日本からコア装置・材料の53%を輸入しており、得意とする半導体デバイスの生産が拡大すればするほど対日貿易赤字が積みあがる、というジレンマがずっと続いている。

そしてまた、日韓貿易摩擦ともいうべきことが起きており、日本政府は韓国を優遇措置を受けられるホワイト国から除外した。その前にレジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミドの3品種について厳しい審査を行うことを表明し、これが韓国全土を巻き込む反日運動に火をつけた形になっている。

韓国政府のいら立ちはわからないことはない。半導体用のレーザー作動機器はなんと100%日本から輸入している。半導体ウエハー製造用の石英壺も、99.2%を日本から輸入している。問題となっているフォトレジストも同93.2%、最も重要な素材のシリコンウェーハは52.8%を日本の輸入に依存している。戦略物資といわれる約150項目のうち、半導体、FPD関連は85項目もあり、日本からの輸入額は1000万ドル強になっているわけだから、問題にするのは当然だろう。ましてやレジストやフッ化水素がなければ半導体は作れないのであるからして、何が何でも国産化という政策を政府がヒステリックに叫んでいるのも理解ができる。

しかし、韓国政府がよくわかっていないのは、こうした日本のお家芸ともいうべき先端素材は長い年月を経て作り上げたものであり、そう簡単に国産化できるものではないということだ。それこそ30〜40年のスパンで先端素材に取り組む日本企業は、全く利益を生まない開発期間を忍耐強く経てきた。しかし、韓国のビジネスモデルは「今すぐ儲からなければ意味がない」という気風が強いだけに、我慢に我慢を重ねて長い期間をかけて先端素材を作る日本企業の風土とは全く異なっている。

そしてまた、レジストやフッ化水素はまさに生ものであり、在庫を持つことはほとんどできない。レジストについては、製造装置に合わせこむだけで2〜3年以上はかかる。それゆえに百歩譲って韓国がそうした先端素材のいくつかを国産化できたとしても、あらゆる企業の工場に合わせこむには膨大な時間が必要となるのだ。レジストなどはまさにカスタマイズ製品であり、汎用のものではない。そうした作り分けが韓国にできるのかといえば、筆者ははっきり言って否定的だ。

今回の韓国における講演の中では、日本の素材企業は100年以上の歴史を持つ長寿企業が支えていることを指摘した。ちなみに韓国において、100年間を戦ってきた企業はたったの3社しかいない。日本の経営者は「世の中に大きく貢献する」、「世界でただ一つのものを作る」、「人類の幸福を実現する」という高い理想のもとに、数十年にわたって利益を生まない素材産業を育ててきた。

2019年ノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉野彰名誉フェローは、リチウムイオン電池の負極材の開発で世界に知られているが、受賞の時の談話でこう語っていた。「リチウムイオン電池の基本概念を確立し、必要な素材開発にも成功してきたが、実用化されるまでには途方もない長い年月を我慢しなければならなかった。この電池はいいと思うけれど、コストやリスクを考えれば使えない、という人たちが多かった」。

しかし、こういう局面で常に登場してくるのが、「人のやらないことをやる」という哲学を持つソニーである。ソニーは世界で初めてリチウムイオン電池を採用し、量産に乗せたフロンティアランナーであったのだ。しかし、2017年段階においては、ソニーはすでに村田製作所にリチウムイオン電池部門を売却するということにならざるを得なかった。そしてリチウムイオン電池の世界チャンピオンの座に就いたのが、パナソニックである。ソニーが開拓し、パナソニックが最後のシェアをさらっていくという図式は、ここにも生きていたのだ。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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