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世界半導体は10〜15%のマイナス成長〜中国のスマホは69%が5Gで最先行

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世界の半導体生産は2018年に50兆円となり、過去最大規模に拡大した。しかし2019年はメモリ不況の影響で12%程度マイナス成長となり、44兆円程度に落ち込んだと思われる。2020年については、メモリの需給バランスが良くなってきたことで価格も上昇しており、5G高速スマホおよび5G対応のデータセンターの投資が成長要因となり、少なくとも10%成長の48兆円超まで回復してくると見られていた。

ところがここに来て、新型コロナウイルスの負の影響は大きい。各国政府は膨大な補助金、生活支援金、無償貸し付けを断行すると言っているが、この状況下にあってはやはり、食べること、さらには医療・健康対策など、生活直結のものにお金を使うことが主要になるため、不要不急のものは後回しになる。つまり自動車、スマホ、さらには書籍、DVD/CDなどについては、なかなかお金が回っていかない。しかも半導体における世界のサプライチェーンが完全に回復するにはかなりの時間がかかる。これらを勘案すれば2020年の半導体が前年比10〜15%のマイナス成長になる可能性はまったく否定できないのだ。

しかし、新型コロナで大きく傷ついた中国ではあるが、スマホにおける5G搭載機の投入はすさまじく速い。中国スマホは5Gの搭載比率が2020年2月時点の出荷台数ベースで、なんと全体の37%を占めるに至っている。日本やアメリカがもたもたしている間に先手を打って5G拡大を進めている。驚くべきことにこれから出て来る中国のスマホ新製品は実に69%が5G対応(2月の機種ベース構成比)という凄まじさなのだ。

ファーウェイのフラッグシップのスマホとも言うべき「P40」が3月26日に発表されたが、なんとCMOSイメージセンサやTOFセンサが6個使われていると見られる。このうち5個はソニー製であり、1個はオムニビジョンと言われている。他の中国メーカーもファーウェイに追随して、CMOSイメージセンサを大量に搭載することになり、5Gで世界に最先行していくだろう。こうした動きはソニー半導体の武器であるCMOSイメージセンサの一気拡大につながっていくことは間違いない。

一方、半導体設備投資については、世界レベルで2018年に9兆円まで拡大した。ところが、2019年はメモリ不況を反映し、6兆円程度までシュリンクしたと思われる。2019年夏から投資の回復がはっきりと見えてきており、2020年については、前年比10〜15%増の7兆円弱くらいの水準が期待されていた。半導体メーカーの強気の設備投資計画は、まだ修正されておらず、装置メーカーや装置部品メーカーに対する発注は拡大している。しかし、足元では新型コロナウイルスの感染拡大により、新規設備への導入が懸念されている。半導体メーカーの投資計画が今年後半から急拡大してきたとしても、装置や部品が間に合わない、という声は多い。

一般電子部品は、いまや世界市場25兆円以上の巨大マーケットになっているが、こちらもまた新型コロナウイルスによる減速を余儀なくされるだろう。とりわけ、自動車向けの電子部品はEVに代表されるエコカー向けを除けば決して増えてくる気配にはない。1〜3月の一般電子部品は、恐らく前年比30〜40%減となり、各社とも軒並み赤字となるだろう。4〜6月期は20〜30%減で少し改善し、7月〜9月は反転攻勢となり、前年比10%増が期待できる。そして、10〜12月期で失った分を取り返すべく、一気上昇で30〜40%増の押し上げたとしても、2020年通期の電子部品は前年比10%以上のマイナスは避けられないだろう。

ただ、証券アナリスト筋によれば、コロナショックと呼ばれる世界経済の一大減速は一過性のものであるとの認識が強い(編集室注)。ここがリーマンショックと違うところだ。リーマンショックでは、世界の金融システムそのものが破壊されてしまったわけであるから、本格回復するまでに4〜5年はかかった。ただ、コロナショックというのは、ウィルスの蔓延が終息すれば、そこですべてが終わる。それゆえに、各国政府は膨大な金額を投入してでもコロナを食い止め、経済回復を図るという史上最大の作戦を展開しているわけであり、そこに期待したい。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

編集室注
新型コロナウイルスは見えない敵と戦う戦争と同じだという見方もある("The Fight Against COVID-19 Is a War: Companies Adopting Military Principles to Defeat the Virus", Connected World)。だからこそ、最優先されることは味方を守ることだ、と元米陸軍特別フォースオフィサのChad Storlie氏は述べている。戦争に対して勝つためにはまず味方がやられないようにすること、すなわち新型コロナに対して医療関係者が絶対に感染しないような防護体制を組むことだという。これを踏まえたうえで、敵に勝つ戦術をとるべきだと述べている。

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