中国DeepSeekのもたらす意味〜Nvidiaチップ入手、日本でもAI企業は多い
中国のAI(人工知能)企業のDeepSeek新製品が発表され、世界中のサプライズを呼び込んでいる。何しろ今回発表したDeepSeekの新製品は600万ドル(約8億円)以下の費用でチャットGPT同等の性能を提供できることが、世界を驚かせたのである。
DeepSeekはAI分野で世界トップシェアを持つエヌビディアの半導体H800チップを2,000個使用したとしているが、実際には5万個以上のH100チップを使用したのではないかとの見解が出ている(編集注1)。
問題となるのは、これらのエヌビディアのチップは米国輸出管理規制の対象であり、これらのチップを中国が入手できること自体が問題となっている。
それにしても、DeepSeekに「中国天安門事件」というワード検索をすれば、「そんな事件は歴史上存在しない」という回答が出てくるのであるからして、世界の標準AIになるとはとても考えられない(編集注2)。しかも、世界で数百社が既に使用しており、個人情報が流出し、中国にみな集まってしまうという懸念は大変なものがある。これを反映し、日本政府はDeepSeekを政府内で利用することは好ましくないとの見解を出している。
ここに来てはただひたすらにDeepSeekの話ばかりが語られているが、我が国においても、AI開発企業はたくさんあるのである。Nvidiaの性能を大きく上回るAIチップを開発していることで話題のプリファードネットワークスを筆頭に、アースアイズ、モルフォ、アイアール・アルト、WACULなどの企業がすさまじい勢いでAI開発を進めているのだ。
プロ野球で日本一に輝いた横浜DeNAベイスターズの南場オーナーは新たなAI開発に全力をあげると決意を述べている。半導体商社で大手のマクニカもAI開発には注力している。富士通も子会社を通じて、AI開発にはすさまじい勢いで事業開発を考えている。AIエンジニアのレベルの高い会社としては野村総合研究所、キーエンス、トヨタ自動車、NEC、住友重機械工業などがある。もちろん半導体分野においてもルネサスを筆頭にAIチップ開発に余念がない。
ついに始まったAI世界戦争の行方はどうなっていくのか。まことに持って、関心が高まるばかりである。
編集注
1. 複数のレポートが、DeepSeekは5万個のH100GPUを入手している、と報じているが、使っているとは報じていない。また、新しいAIモデルを開発したようだが、学習させたデータは中国語と英語に限っているため、日本の情報には強くない。また学習させる歴史に関しては中国だけの情報をベースにしているようだ。
2. 日本のメディアがそれぞれ聞いてみると、「回答できません。話題を変えましょう」だけではなく、きちんと回答する場合もあります。以下のように答えています。
「DeepSeekのAI試してみた 中国政治や『天安門』に回答」、日本経済新聞、(2025/02/01)