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Apple Watchはじめアップル新製品発表への即刻の反応、波紋

本年の革新的な新製品の目玉の1つとして待望、注目されていた米アップルのApple Watchをはじめとして、MacBookアップデート版などが発表されている。Apple Watchの顔としては3点、(1)画面を自由にカスタマイズできる時計、(2)コミュニケーションツール、(3)健康や運動に関する計測機器、が指摘されており、ジョギングランナーはじめ街の声でもある程度の評価を得ている模様である。世界各国・地域からも、特性、サプライチェーンについて評価分析、解析が即刻出てくるというひと喧騒を巻き起こしている。

≪グローバルな評価、駆け引き≫

Apple Watchの発表については次の通り、高級時計の18金モデルからジョギングなどスポーツ仕様まで、幅広い趣味嗜好に合わせた中身となっている。

◇Apple debuts $17,000 watch, some waiting for killer app (3月9日付け Reuters)

◇アップルウオッチ、日米中などで4月24日発売−18金モデルは128万円以上 (3月10日付け 日経 電子版)
→米アップルが9日、米サンフランシスコで新製品発表会を開き、腕時計型ウエアラブル端末「アップルウオッチ」を日米中などで4月24日に発売すると発表した旨。18金を使った上位モデルの価格は1万ドル(日本では128万円)以上に設定、ウエアラブル製品を宝飾品の価格帯で投入するIT企業は初めて、4月10日から予約を受け付ける旨。ステンレス製の通常モデルは549ドル(日本では6万6800円)から、スポーツ仕様は349ドル(同4万2800円)からで、既存の腕時計型端末の倍以上の価格に設定した旨。

早速に様々な視点からのApple Watchに対する評価が、以下の通りである。打ち上げたばかり、どのような市場での定着を見せるかはこれからということで、辛口気味の内容が続く形である。

◇Apple Watch: Time Will Tell (3月9日付け EE Times/Blog)
→Appleが、新しいWatchおよびMacbookを支える意義深いソフトウェアおよびハードウェアを披露、しかし該製品は新しいカテゴリー構築にはなっていない旨。

今回の発表は中国市場への重点化が目立つが、果たして馴染むかどうか、評価は早計という見方がある。

◇Apple Watch not yet setting Chinese pulses racing (3月10日付け Reuters)
→Apple社が、同社smart Apple WatchのSan Franciscoでの発表にて中国を最重要とし、Hangzhou city(浙江省杭州市)の新店舗を高らかに宣伝、中国語messagingアプリ、WeChatを披露の旨。また、この新しいApple Watchは4月24日に中国で発売となり、米国と同じ日にち、米国より約1ヶ月後になったiPhone 6とは違う旨。しかし、このAppleに熱狂する国、米国に次いで第2のiPhone市場と言えども、Cupertinoからの湾曲したwristpiecesが中流から上流のmillions of中国人民層に良質のmust-haveアイテムとして売れるかどうかを言うのは早過ぎると思われる旨。

◇Apple's Watch is the Next Big Geek Icebreaker (3月10日付け IEEE Spectrum)
→Apple watchそれ自体、実質的に画期的なものではなく、スマートフォンから多くのalertsおよびアプリを腕にもたらし、fitness bandのfeaturesが入ってくる旨。

◇Apple Watch: Is it all hype? (3月10日付け EE Times India)
→Appleが、Spring ForwardイベントにてsmartwatchおよびMacBookを披露、ともに注目に値するソフトウェア&ハードウェア技術を謳っているが、該gadgetsは期待に合っていない様相の旨。以下の注目点:
*terraced sheets of cellsが支え、新MacBookの電池capacityが35%増
*MacBookのロジックボードが、主にIntel 14-nm Core Mのお蔭、67%小

時計メーカーのSwatchも黙ってはいられないということか、やはり中国市場に視点を置いた半導体搭載時計を追いかけすぐ出していく計画を発表している。

◇In smartwatch war, Swatch goes for cheap, quick and China (3月12日付け Reuters)
→世界最大の時計メーカー、Swatch Group(Biel, Kanton Bern, Switzerland)が木曜12日、安価なprogrammable半導体を時計に入れて腕を大きく振って中国からChicagoに支払いが行えるようにする計画を発表、Apple社のsmartwatchに対する突き返しを披露の旨。2ヶ月以内にnear field communication(NFC)半導体搭載時計を出していく旨。Appleの時計への動きは、Swatchがすでに競合するに良い位置づけにある市場を開いていく旨。

Apple Watchを構成する部品、コンポーネントについて、台湾のサプライチェーンの絡みが即刻以下の通り表わされている。

◇IC substrate, FPCB suppliers to benefit from Apple Watch release -Sources: Apple Watch supply chain includes suppliers of IC substrates, flexible boards (3月9日付け DIGITIMES)
→業界筋発。台湾のIC基板サプライヤ、Kinsus Interconnect Technologyおよびflexible PCBメーカー、Zhen Ding Technology Holding, Career TechnologyおよびFlexium Interconnectが、Apple Watchのsupply chainに加わっている旨。

◇Apple Watch, a Boost to Taiwanese Supply Chains (3月10日付け CTimes)
→Apple Watchの発売が4月24日、予約受け付け開始が4月10日、とAppleが3月9日米国でのpress conferenceで発表、2015年に24 million個のApple Watchが出荷されると広く浸透、台湾のsupply chainsがApple Watchで忙しくなっている旨。投資家はApple Watch受注の最初の波が3 million個と予測、台湾のsupply chainがそれに取り組み始めている旨。信頼できる筋によると、該supply chainsの内訳、次の通り。
 Quanta ComputerおよびFoxconn   …Apple Watchの組み立て
 Career                 …Flexible Print Circuit(FPC)
 Kinsus Interconnect Technology  …IC基板
 Merry Electronics        …electroacousticコンポーネント
 TXC社              …crystal
 Richtech             …power management IC
 Advanced Semiconductor Engineering(ASE)社 …packaging

中でもAdvanced Semiconductor Engineering(ASE)は、Apple Watchそして次期iPhoneの実装組立を独占的に受注したという以下の見方が流れて、株価が上昇する事態が見られている。

◇ASE grabs SiP module orders for iPhone 6S and 7, says report (3月9日付け DIGITIMES)
→Appleのsupply chain筋を引用、最近の中国語Commercial Times発。台湾のAdvanced Semiconductor Engineering(ASE)が、それぞれ2015年末および2016年に発表予定のiPhone 6Sおよび7で用いられるSiP(system-in-package)モジュールの組み立て受注を獲得の旨。ASEは、特定顧客あるいは製品についてはコメントしないと該報道に反応の旨。

◇ASE shares get a boost from Apple Watch launch (3月10日付け Focus Taiwan)

◇ASE shares receive a boost from Apple Watch launch (3月11日付け Taipei Times)
→dealers発。Apple社がApple Watchを披露、受けてAdvanced Semiconductor Engineering(ASE:日月光半導體)社株価が昨日台北の取引で上昇、世界最大のintegrated circuit(IC) packagingおよびtestingサービスプロバイダーであるASEは、Apple Watchに向けてただ1つのIC packagingおよびtestingサービスサプライヤと目されており、多くの投資家は該新機器がASEの出荷を強めると見ており、特にグローバル半導体分野が第一四半期の停滞期間を抜け出て後の旨。

今回のMacBook関係の発表については以下の通りである。いくつかのモデルがIntelの新CPUsになっていくという下りが見られている。

◇Apple updates Macs with new processors for faster performance, longer life-Some MacBook models make the leap to Intel's new CPUs.-Apple announces upgrades for laptops (3月9日付け CNET)
→Appleの新しい12-インチMacBooksおよび11-インチ & 13-インチMacBook Airモデルでは、Intel CPUsが新しく、フラッシュメモリが高速に、そして電池寿命が良くなっている旨。

◇Apple updates non-Retina MacBook Airs and the 13” Retina MacBook Pro-All laptops pick up Broadwell, better battery life, and better 4K support. (3月9日付け Ars Technica)

◇Teardown reveals 2x faster PCIe-based flash storage in new 13-inch MBA -New MacBook model has quicker flash storage, according to iFixit teardown (3月11日付け Electronista)
→iFixitによるbrand-new 2015 13-inch MacBook Air(MBA)のteardown解析から、11-inchおよび13-inchモデルの間に驚くような相違、後者は、新しいMacBookに入っている新しいdouble-speed PCIeフラッシュストレージシステムも受け継いでいる旨。

業界各社にも今回の発表の様々な距離感のインパクトが見られ、これからも引き続くと思われるが、現下ではまず、来年のiPhonesにIntelのLong-Term Evolution(LTE) modem半導体が入るという見方が次の通りである。

◇iPhones will ship with Intel LTE chips inside in 2016-Sources: Intel will supply LTE modem chips for 2016 iPhones (3月10日付け VentureBeat)
→業界筋発。Intelが、来年新しいiPhonesで用いられるLong-Term Evolution(LTE) modem半導体の供給を求められている旨。
該Intel 7360 LTE modemは、南米およびアジアで販売されるApple handsetsにおいてQualcomm半導体に取って代わる旨。

MarvellからはAppleのHomeKit frameworkに向けたソフトウェア開発キットである。

◇Marvell ships HomeKit SDK for microprocessor, Wi-Fi lines-Marvell provides software development tools for Apple's HomeKit (3月10日付け Electronista)
→Marvell Technology Groupが、iOS 8 operating system(OS)の一部であるAppleのHomeKit frameworkに向けたsoftware development kit(SDK)を投入、MarvellのEZ-Connect Internet of Things(IoT) Platform上で出てくる該SDKは、同社88MC200 microcontroller(MCU)およびAvastar 88W801 Wi-Fi system-on-chip(SoC)デバイスとともに働く旨。

Samsungには、MacBooksに向けて同社3D V-NANDフラッシュメモリ搭載のsolid-state drives(SSDs)を供給する話が持ち上がっている。

◇Samsung seals big SSD chip deal with Apple -Report: Samsung will supply Apple with SSDs (3月13日付け The Korea Times (Seoul))
→Samsung Electronicsが、AppleのMacBooksに向けて同社3D V-NANDフラッシュメモリ搭載のsolid-state drives(SSDs)を供給、該取引は、数年にわたりbillions of dollars規模の可能性の旨。Samsungはコメントを控えている旨。


≪市場実態PickUp≫

【直近業績】

台湾の半導体各社の2月業績、そしてIntelの第一四半期売上げ見込みが発表されている。旧正月のある2月を反映してか、TSMCはじめファウンドリー勢が好調の前月から大きく売上げを落としているなか、Apple対応で注目のASEは増やす結果となっている。

◇UMC, VIS report decreased February revenues (3月9日付け DIGITIMES)
→ICファウンドリー2社の業績。UMCの2015年2月の連結売上げがNT$12.06 billion($382.8 million)、前月比6.4%減、前年同月比16.6%増。2015年1-2月累計がNT$24.94 billion、前年同期比22.2%増。
Vanguard International Semiconductor(VIS)の2015年2月の連結売上げがNT$2 billion、前月比3.9%減、前年同月比9.7%増。2015年1-2月累計がNT$4.1 billion、前年同期比12.4%増。

◇TSMC February revenues fall 28% on month (3月10日付け DIGITIMES)
→TSMCの2015年2月の連結売上げがNT$62.65 billion($1.99 billion)、前月比28.1%減、前年同月比33.8%増。この2月売上げは、2014年6月以降最も低い旨。2015年1-2月累計がNT$149.77 billion、前年同期比52.4%増。TSMCは、1月売上げが同社史上最高の月次水準としている旨。

◇TSMC February sales down 28.1% month-on-month (3月10日付け Focus Taiwan)

◇ASE reports on-year increase in February revenues (3月10日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)の2015年2月の連結売上げがNT$18.982 billion($601.61 million)、前月比18.72%減、前年同月比16.86%増。2015年1-2月累計がNT$42.337 billion、前年同期比21.54%増。

注目のIntelであるが、早々に以下の通り大幅な下方修正を打ち出している。今後に目が離せないところである。

◇Intel cuts revenue forecast as desktop demand weakens-Intel trims nearly $1B from Q1 forecast (3月12日付け Reuters)
→Intelの第一四半期売上げが、以前の予測、$13.7 billionから約$12.8 billionに減る見込み、business PCsの需要減およびPC supply chainでの在庫水準低下がある旨。マクロ経済そして特に欧州での通貨状態も、売上げ減少に効いている旨。

◇Intel slashes sales outlook on weak PC demand (3月12日付け Market Watch)

【FacebookのOpen Compute Summit】

Facebookのannual Open Compute Summit(2015年3月10日〜、SAN JOSE)にて、新しいサーバおよびスイッチの以下の動きが見られている。特に、Open Compute Projectの参加メンバー&活動の充実ぶりに注目している。

◇Facebook Readies New-Breed Servers, Aided by Intel-Company has been pushing hardware manufacturers to improve their designs-Intel aids Facebook with server chip for Open Compute Project (3月10日付け The Wall Street Journal)
→Facebookが火曜10日、Intelの協力を得てOpen Compute Projectのもとで開発した同社"Yosemite"サーバを披露、該サーバは、小さなボードが4枚あり、各々Intel Xeon-型プロセッサを搭載の旨。

◇Dell Switch Interface Will Speed Up SDN Adoption-Dell delivers open-source switch interface for SDN tech (3月10日付け eWeek)
→Dell Networkingが火曜10日、Open Compute Project(OCP)に見直しを求めてSwitch Abstraction Interface(SAI)を提出、該ネットワークAPIは、構成要素分けの最新ステップであり、software-defined networking(SDN)の採用を加速する重要ステップとなる旨。

◇Facebook Unveils Servers, Switches (3月11日付け EE Times/Slideshow)
→Facebookが、同社annual Open Compute Summit(2015年3月10日〜、SAN JOSE, Calif.)にて、新しいサーバおよびスイッチを披露の旨。
open-sourceハードウェアへの依然熱気の高まりの兆候、Open Compute Projectに参加の最新の顔ぶれとして、Apple, Bank of America, Cisco Systems, Hewlett-Packard(HP)およびJuniper Networksなど、該プロジェクトの広がりを印象づけている旨。以下の内容項目:
 Apple, HP join Open Compute Project
 Yosemite server: dense, disaggregated, agnostic
 Facebook rolls a software-defined network
 Hard disk array in a rack
 China preps flash-storage appliance
 Oily computing, optical storage
 HP jumps into open hardware
 ARM flexes its muscles, again

【2015年の製品別IC市場】

毎年恒例であるが、IC Insightsから2015年のIC製品カテゴリー別伸長予測が発表されている。IC市場全体では今年7%の伸びと見て、33カテゴリーのうち11がこれを上回るデータ内容となっている。

◇11 IC product categories to exceed total IC market growth in 2015 (3月12日付け ELECTROIQ)
→IC InsightsのMarch Update to the 2015 McClean Report(今月後半リリース)が、主要IC製品33カテゴリーの2019年までの予測を更新、Automotive Special Purpose Logic, DRAM, およびAutomotive Application-Specific Analogデバイスなど11の製品カテゴリーが、今年のIC市場全体についての伸び率7%を越えると見る旨。伸びるICカテゴリー総数が、2014年の28製品から今年は27に僅かに減ると見ている旨。
≪表≫ 2015年の製品別IC市場伸長予測
http://electroiq.com/wp-content/uploads/2015/03/IC-Insights-0312-Fig-1.png

◇11 IC product categories to exceed total IC market growth in 2015, says IC Insights (3月13日付け DIGITIMES)

【アジアの半導体製造関係】

グローバルウェーハ製造の200-mm capacityについて、昨年末時点で韓国が第1位という以下の見方が表わされている。

◇S. Korea tops rivals in global wafer manufacturing-Korea overtook Taiwan, Japan in 200mm wafer capacity, IDC says (3月10日付け The Korea Herald (Seoul)/Yonhap News Agency (South Korea))
→IC Insights発。12月末時点での200-mmウェーハcapacityについて、韓国が21.1%のシェア、台湾、日本がそれぞれ19.4%、18.3%の旨。4年前は韓国は200-mmウェーハcapacityで日本および台湾に後れをとっていた、と特に言及の旨。IC Insightsは、向こう5年にわたって韓国が引き続きアジアのライバルをリード、台湾、日本および中国が続く、と予想する旨。

アップデートが要るということでは、中国の300-丱ΕА璽fabもそうであるが、うち1つのXMC(武漢)にてCMOSイメージセンサ出荷1億個越えの発表が行われている。

◇XMC ships over 100 million units of backside illumination CMOS image sensors (3月12日付け ELECTROIQ)
→300-mm半導体製造のXMC(武漢)が、Backside Illumination(BSI) CMOS Image Sensor(CIS)の出荷が1億個を越えたと発表、該BSI CISはすべてウェーハbonding技術を用い5〜23 mega pixelsにわたるhigh end製品である旨。加えて、BSI CISについてXMCが開発した最新3Dウェーハstacking技術も現在量産に入っており、XMCが世界の大手BSI CISおよび3D IC製造メーカーの1つになっていることを示す旨。

【NANDフラッシュの各社展開】

SamsungおよびSanDiskそれぞれのスマートフォンに向けた新しいNANDフラッシュ半導体の投入、そしてMicron Technologyは、シンガポールでの3D NANDフラッシュを視野に入れた工場拡張を進めている。

◇SanDisk, Samsung Ramp Up Smartphone Performance-Samsung, SanDisk intro new NAND flash chips for smartphones (3月10日付け EE Times)
→メモリベンダー2社のストレージ大容量&高速スマートフォン需要に対応する異なるアプローチについて。今年のMobile World Congress(MWC)に間に合わせて、SanDiskは、e.MMC 5.0+ HS400スペックによる同社iNAND Acceleratorおよび新しいSmartSLC技術が入ったiNAND 7132を披露の旨。
SanDiskがiNAND 7132についてe.MMC(embedded MultiMediaCard:JEDECが定めた組み込み機器向けの外部記憶装置の規格)でTLC(Triple Level Cell)を用いている一方、Samsungは、新しい128GB embeddedメモリにおいてMLC(Multi Level Cell) NANDでUniversal Flash Storage(UFS) 2.0標準の使用を選択している旨。

◇Micron to expand NAND flash fab in Singapore-Micron kicks off expansion of its NAND flash fab in Singapore (3月10日付け DIGITIMES)
→Micron Technologyが最近、Singaporeの同社NANDフラッシュメモリfab拠点の拡張を始める起工ceremonyを行った旨。約255,000平方feetに及ぶ該拡張は、3D NANDフラッシュメモリ生産の先触れであり、同社2017年度の間に完了予定の旨。


≪グローバル雑学王−349≫

第二次世界大戦後の東西冷戦から現在に続く世界の対立の原風景について2回にわたり、

『大局を読むための世界の近現代史』
  (長谷川 慶太郎 著:SB新書 276) …2014年11月25日 初版第1刷発行

よりアメリカそしてソ連を巡るそれぞれの矛先の推移を辿っていく。第二次世界大戦でのソ連での多大な犠牲に驚くとともに、核のボタンを押す寸前までに至ったキューバ危機を回避させた「核の脅威」の抑止力が、それ以外にも何度も働いた経緯に改めて注目させられている。

第2章 冷戦と現在に続く対立のはじまり   =2分の1=

◇第三次世界大戦の勃発を確信していたスターリン
・アメリカを中心とする資本主義(西側諸国)と、ソ連を中心とする共産・社会主義(東側諸国)の対決の時代へ
 →「冷戦」
・スターリンは、1952年の第19回ソ連共産党大会にて、世界全体の情勢を分析
 →西側諸国とは対照的に、再び世界規模の戦争が起きると確信
・ソ連が共産・社会主義陣営をつくり上げることができた最大の原因
 →ソ連共産党の一党独裁体制
 →「国家総力戦」を戦い抜くには有利

◇市民の3割近くが犠牲になったレニングラード包囲戦
・第二次世界大戦でソ連では、国民に甚大な損害
 →その一例が「レニングラード(現在のサンクトペテルブルク)包囲戦」
・1941年6月、ドイツ軍がソ連領へ侵攻する「バルバロッサ作戦」を開始
 →包囲は1944年1月まで約900日にわたる
 →約90万人が餓死・凍死 …レニングラードの全人口の3割弱
・レニングラードの市民に対する食料の配給量は日に日に削減
 →最後の段階では、通常の5分の1ほどの食料しか
 →ただし、守備しているソ連兵には、平時どおりの食料
・第二次世界大戦において、ソ連は民間人・軍人合わせて約2600万人が犠牲に
 →全国民の約13%
 →敗戦国である日本が約300万人、ドイツが700万〜900万人
・これだけの被害には、スターリンが個人独裁体制を確立するために行った「大粛清」が関係
 →大佐以上の高級将校の実に約65%が粛清の対象に
・「共産党の政治目的が達成されるのであれば、国民の生活の犠牲や自国民の損失は致し方ない」という考え方
 →共産党の一党独裁体制を堅持するには、戦争を絶えず世界に持ち込む必要があった
 →最強ドイツ軍を破ったことで、ソ連共産党の国際的地位は相対的に高まった

◇「計画経済体制」の道を選んだ東側諸国
・経済面においては、ソ連は苦戦
 →第二次世界大戦後、凄まじいインフレーション(ハイパーインフレ)
 →1949年、通貨を切り下げ、改めて新ルーブルを発行
 →ハンガリー政府も通貨単位をペンゲーからフォリントに置き換え
・こうした状況下、「計画経済体制」が出来上がる
 →自由主義や市場経済主義をとる国でも、二度の世界大戦時には「計画経済体制」に近い統制体制
・敗戦前の日本にはいまでは信じられないほどの「格差」
 →食事も士官は白米、下士官兵は麦飯と差別:工場で職員用と工員用に分かれる出入り口
 →マッカーサーは、差別を片っ端から排除、平等な社会を日本国内に定着させた

◇世界を牽引する存在となったアメリカの勝因
・第二次世界大戦で、アメリカ本土は一切戦場にならず、生産設備やインフラがほとんど損傷を受けないまま勝利
 →大戦後の世界経済をリードする存在に
  →「ブレトン・ウッズ体制」(金と交換できる唯一の通貨が米ドル)の構築
  →GATT(関税及び貿易に関する一般協定)に象徴される自由貿易体制導入、世界を自由主義体制に
・いまも世界の対外取引の8割以上が米ドルで
 →基軸通貨としての地位はいまだ揺るがず

◇世界大戦勃発の抑止力となった核兵器
・「第三次世界大戦」の勃発は結局なかったが、東西陣営が局部的に争ったケースは多々
 →1950年、朝鮮戦争
 →1960年代から70年代、ベトナム戦争
・ベトナム戦争は、次第に東西陣営の代理戦争の様相
 →ソ連や中国は、兵器・弾薬のほか、最新鋭ジェット機、さらには2万門の高射砲を提供
  …→太平洋戦争中、日本軍が動員した高射砲が3000門
 →共産・社会主義国家の抵抗に加え、アメリカ国内で激しい反戦運動が巻き起こる
  →アメリカ軍は撤退を決断
・ベトナム戦争の終結後、アメリカは「冷たい戦争を絶対に『熱い戦争』にしてはいけない」という戦略を確立
 →以後、東西間の紛争は冷戦が終結するまで発生せず
 →長期にわたって戦争が存在しえない構造、その物的な基盤となったのが、「核兵器」
・「核戦争の脅威」が第三次世界大戦の発生を食い止める"抑止力"に

◇第三次世界大戦が一歩手前まで迫ったキューバ危機
・危うく「熱い戦争」が勃発する事態まで追い込まれた「キューバ危機」
 →1959年にキューバ革命が勃発、32才という若さのフィデル・カストロ率いる政権が誕生
 →米国の一連の振る舞いに激怒したカストロはソ連と接触、アメリカに敵対する行動へ
  →カストロはキューバ革命が共産・社会主義革命であることを宣言、「反米親ソ」の姿勢を鮮明に
・ソ連は核ミサイルをキューバに配備する「アナディル作戦」に取り掛かる
 →当時のソ連の大陸間弾道ミサイル能力はまだ開発中の段階
  →アメリカ本土を直接ミサイルで攻撃できる体制に向け、キューバに狙い
・1962年10月22日、ケネディは全米テレビ演説でソ連を激しく非難
・1962年10月27日、アメリカ空軍の偵察機がソ連軍の地対空ミサイルで撃墜される事態が発生
 →同日、アメリカ海軍はソ連の潜水艦に爆雷を投下
  →潜水艦側は核魚雷の発射を決定したが、寸前のところで副官のヴァシリー・アルヒーポフが反対して回避
 →結果、ソ連側がミサイルを撤去することで危機は回避
・じつはキューバ危機以外にも核戦争突入の危機を迎えた例
 →朝鮮戦争でも、ベトナム戦争でも、歴代大統領が核兵器の使用を認めず、最悪の事態は回避
 →「核の脅威」が核戦争の抑止力にも

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