またも米中摩擦:AIモデルを巡るDeepSeek台頭の衝撃、半導体開発でも
米中摩擦がまたもや再燃の兆し、今週非常に大きく注目を集めたのは、ほぼ無名の中国のAIソフトウェア・プログラム開発のスタートアップ、DeepSeek(深度求索)が圧倒的な低コストで開発した大規模言語モデル(LLM)の性能が米国製の競合モデルを上回ったという主張である。先週末のCNBCテレビでの報道がきっかけとされている。半導体業界含め関連各方面にいろいろ衝撃を与えて、以下取り出している。米国政府は、AI訓練に使われた先端半導体の入手経路を調べる動きが見られている。AIモデルに加えて、米国の先端技術輸出規制を受ける中で、中国の半導体開発の最先端に近づける動きが続いており、今後の展開に目が離せないところである。
≪中国の追い上げの気配≫
今回のDeepSeek出現はじめ概要関連を、まず示していく。
◇How China’s new AI model DeepSeek is threatening U.S. dominance (1月27日付け CNBC)
→中国にあるあまり知られていない人工知能研究所が、より安価で低性能のチップを使用しているにもかかわらず、アメリカ最高のAIを凌駕するAIモデルを発表し、シリコンバレー中をパニックに陥れている。
DeepSeekと呼ばれるこの研究所は、12月下旬に無料でオープンソースの大規模な言語モデルを発表し、H800sと呼ばれるNvidiaの対応能力低減チップを使用して、わずか2ヶ月と$6 million未満で構築したという。
◇China’s DeepSeek AI programme developer astonishes the AI community―DeepSeek's AI breakthrough challenges US tech giants (1月27日付け Electronics Weekly (UK))
→1)中国のAIソフトウェア・プログラム開発会社、ディープシークが、米国のトップAI開発会社が挙げる$100 million 〜 $1 billionのコストに比べ、$5.6 millionのコストで業界をリードするプログラムを訓練できると発言し、AIコミュニティに混乱を引き起こしている。
2)中国のAI研究所、DeepSeekは、ミッドレンジのハードウェアを使ってわずか数ヶ月で開発したチャットボット、DeepSeek-V3を$5.6 millionでリリースした。この開発は米国のハイテク大手に衝撃を与え、彼らの支出や競争力について疑問を投げかけた。R1モデルは2,000台のNvidiaグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPUs)でトレーニングされた。ディープシークは、同社のAIアシスタントが米アップルのApp Storeで無料アプリのトップになった後、大幅な機能停止に見舞われたが、同社によると問題は解決したという。
◇What is DeepSeek? China’s ChatGPT rival sends Nvidia and Microsoft stocks tumbling, rattles AI giants―ChatGPT rival's debut shakes Nvidia, Microsoft stocks (1月27日付け Fast Company)
→1)アメリカの人工知能企業は、中国の小さなスタートアップ企業が一般的なコストの数分の一でLLMを構築した後、動揺することになった。以下がその内容である。
DeepSeekという小さな中国企業が先週、チャットボットのアップデート版をリリースし、ChatGPTの最新版さえも凌駕しているようだということで、アメリカのAI業界は週末に動揺を隠せなかった。
しかし、米国の人工知能大手が動揺しているのはディープシークの性能だけではない。それは、ディープシークがわずか数カ月で、劣悪なハードウェアを使い、以前ではほとんど考えられなかったほどの低コストでモデルを構築したという事実だ。ディープシークについて知っておくべきことは以下の通りだ。・・・・・
2)中国のAIモデル「DeepSeek」の登場により、主要なAI関連銘柄が下落した: Nvidiaの株価は、企業がより高度でないチップを使用して優れたAIモデルを構築できるようになった場合、将来の収益が懸念され、10%以上下落した。ASMLホールディングは9%下落し、OpenAIの主要投資家であるマイクロソフトは6%下落した。
◇Chinese AI disrupter DeepSeek claims top spot in US App Store, dethroning ChatGPT (1月27日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→*DeepSeekは、その推論モデルをウェブ版とアプリ版のチャットボットに統合し、無償で無制限に使用できるようにした。
*中国のAIスタートアップ企業、DeepSeekのチャットボットアプリが、OpenAIのChatGPTを退け、アップルのUS App Storeでトップの座を獲得した。
*DeepSeekの名を冠したAIチャットボットは、1月10日にアップルのUS App Storeでリリースされ、無料で利用できる。その後、該中国企業がR1オープンソースの推論モデルを発表したことで、人気が急上昇した。
◇DeepSeek創業者インタビュー「中国AI、米追随を脱す」 (1月30日付け 日経 電子版 11:20)
→中国の新興企業DeepSeekが開発した安価で高性能なAIモデルが注目を集めている。米国製をしのぐ性能で10分の1以下の費用でつくったとしており、その影響などについて議論も広がる。スタートアップ情報サイト「36Kr」は2024年7月にディープシーク創業者の梁文鋒氏にインタビューした。当時のインタビュー記事を日本語で掲載する。主な一問一答は以下の通り。・・・・・
まさに桁違いの突出を受けて、各方面様々な衝撃、インパクトが続いており、以下の通りである。
◇S&P 500 slides, Nasdaq drops 3% in sharp AI stock sell-off spurred by China’s DeepSeek: Live updates―Stocks poised for drop amid AI competition fears (1月27日付け CNBC)
→中国のDeepSeekによるAI競争への懸念がハイテク株を動揺させたため、ナスダック100先物の2.9%安を筆頭に、世界の株式先物は月曜日の取引を前に下落した。投資家は今週、マイクロソフト、メタおよびアップルが発表する主要決算を注視し、AIによる市場上昇の持続性を見極めようとしている。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)の水曜会合と金曜の主要インフレ・データが市場の不確実性を高めている。
◇Nvidia's market cap plummets as Chinese AI startup DeepSeek sinks the stock―Nvidia's market cap posts historic $600B drop―Chinese AI startup DeepSeek is challenging U.S. tech giants and shaking markets (1月27日付け Quartz)
→エヌビディアの時価総額は月曜27日、歴史的な下落に見舞われ、株価から$600 billionの価値が消え去り、米国株式市場史上最大級の1日の値下がりとなった。中国のAI新興企業、ディープシークの出現の影響はハイテク業界全体に及び、ハイテク業界の設備投資と評価の見直しを促した。
◇DeepSeek hit by cyberattack as users flock to Chinese AI startup (1月27日付け Reuters)
→中国のスタートアップ企業、DeepSeekは月曜27日、同社のAIアシスタントが突然の人気を集めた後、サイバー攻撃により一時的に登録を制限すると発表した。
同社のAIアシスタントが米アップルのApp Storeで入手可能な無料アプリケーションの中でトップクラスの評価を得たことを受け、同スタートアップは同日未明、ウェブサイトの障害にも見舞われた。
◇米中AI戦争に新たな火種 中国発「DeepSeek」が脅威に (1月27日付け 日経 電子版 14:16)
→中国発のAI企業「DeepSeek」が開発した高性能AIが市場で脚光を浴びている。ディープシークのアプリはアップルの無料ダウンロードランキングで27日、米国や中国で首位となった。米オープンAIの生成AI「ChatGPT」の中国版ともいえる同サービスが本家を抜き、思わぬ「ダークホース」の登場に株式市場がざわつき始めている。
◇中国「DeepSeek」はAIのスプートニクショックか (1月27日付け 日経 電子版 16:03)
→27日の東京株式市場で半導体などAI関連株が急落した。中国の新興企業が開発した生成AIが米国製よりも安いコストで、高い性能を出しているというニュースが駆け巡った。中国製AIが伝えられているような性能を発揮できるのかは定かではないが、AIで巨額投資に踏み切る米ハイテク大手の脅威となるのではないかとの懸念が広がったようだ。
◇DeepSeek Challenges Everyone’s Assumptions About AI Costs (1月28日付け Bloomberg)
→中国の新興企業、DeepSeekは、ChatGPTへの対抗はわずかなコストで実現すると言い、宇宙規模のAI予算の根拠について疑問を投げかけている。
◇Now what? Nvidia, Silicon Valley try to recover from DeepSeek juggernaut (1月28日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→地元で15,999人の従業員を抱える該サンタクララの会社への長期的な影響は、壊滅的なものになるかもしれない。ライバルたちが目まぐるしく変化するテクノロジーを追い求める中、さらなる「AIサプライズ」が起こるかもしれない。
◇Nvidia says DeepSeek advances prove need for more of its chips―Nvidia: DeepSeek's AI progress highlights chip demand―The US microchip export controls were designed to freeze China’s development of supercomputers used to develop nuclear weapons (1月28日付け South China Morning Post (Hong Kong)/Reuters)
→1)Nvidiaは月曜27日、中国のAI企業であるDeepSeekの進歩は、中国市場における同社のチップの有用性を示しており、DeepSeekのサービスに対する需要を満たすために、将来的にはより多くの同社のチップが必要になるだろうと述べた。
Nvidiaは月曜27日、DeepSeekが米国企業よりもはるかに少ないNvidiaチップを使用してOpenAIなどのライバルに匹敵したとの投資家の懸念から、同社の株価が17%下落し、$118.58となったことを受けて声明を発表した。エヌビディアのライバルであるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価も$115.01と6%以上下落した。
2)Nvidiaは、中国のAI企業DeepSeekの進歩を受け、中国市場における自社チップの重要性を強調している。DeepSeekは約2,000個のNvidia H800チップを使用しており、これは米国の輸出規制を遵守している。世界経済フォーラムでは、ハイテク業界のリーダーたちが、AI開発で中国に対するリードを維持するために、米国がより多くのデータセンターを建設し、規制のバランスをとる必要性を強調した。
◇Tech selloff deepens as DeepSeek triggers AI rethink (1月28日付け The Korea Times (Seoul))
→中国の低価格人工知能(AI)モデルの出現に端を発した世界的な株安が2日目を迎え、投資家がAIブームの急先鋒である企業の高値評価と優位性に疑問を投げかける中、日本のテクノロジー関連株が火曜28日下落した。
近年のAIブームの申し子であるエヌビディアの株価は、米国株の下落の足を引っ張り、月曜27日には17%下落し、該チップメーカーの時価総額から$593 billionを消し去った。
◇中国AIアプリ、米で首位 「ディープシーク」波紋 市場は警戒感 (1月28日付け 日経)
→中国のAI開発企業、DeepSeekの生成AIアプリが米国のアプリストアで一時首位に立った。低コストで開発した大規模言語モデルの性能が米国製の競合モデルを上回ったと主張し、消費者らが注目している。米国のAI産業の優位性が揺らぐとの警戒感から、株式市場も反応した。
ほぼ無名だった中国のスタートアップがにわかに注目を集めるきっかけとなったのは、米CNBCテレビの前週末の報道だ。ディープシークが安価で性能の低い半導体を使って構築したAIモデルが「シリコンバレー全体にパニックを引き起こしている」と伝えた。
◇DeepSeekショック、米AI株急落 NVIDIA時価総額91兆円消失 (1月28日付け 日経 電子版 06:17)
→中国のAI企業であるDeepSeekが低コスト生成AIモデルを開発したことを受け、米金融市場が揺れている。AI半導体大手エヌビディアの株価は27日に17%安となった。1日の下落率として新型コロナウイルスの感染拡大初期である2020年3月中旬以来、約5年ぶりの大きさを記録した。
◇公開技術でAI開発費「10分の1以下」 DeepSeekの衝撃 (1月28日付け 日経 電子版 06:22)
→中国のAI企業DeepSeekの生成AIモデルが米テック業界に衝撃を与えている。オープンAIなど米国製AIをしのぐ性能を持つと主張するモデルは、最先端の半導体を入手しにくい環境で約8億円で開発したとしている。これは従来の10分の1以下で、AI開発には莫大な資金が必要だとしてきた業界の通説が覆りかねない。
◇DeepSeekの衝撃 中国AIが変えたゲームのルール (1月28日付け 日経 電子版 11:00)
→中国の生成AI(人工知能)スタートアップ「DeepSeek」が米オープンAIの「ChatGPT」を超えるといわれる新モデルを発表した。圧倒的な低コストを誇る同モデルの登場でAI業界のゲームのルールは一変した。激化する米中AI戦争はこの先の世界の形すら変えようとしている。
◇DeepSeekショックで日経平均大幅安 投資評価修正迫る (1月28日付け 日経 電子版 19:00)
→中国のAI企業であるDeepSeekが世界の市場を揺らしている。生成AI市場で米国の技術優位が崩れるとの見方から米半導体大手エヌビディアの時価総額は27日だけで91兆円吹き飛んだ。東京市場では日経平均株価が2日で900円超下落した。AI市場の長期的な成長に疑いはないものの、米技術覇権シナリオに傾きすぎた投資マネーは評価軸の修正を迫られている。
以上、月曜27日、火曜28日の相次ぐ反応であるが、水曜29日にも次の通り及んでいる。
◇DeepSeekショック2日目、M7株高に「ジェボンズの逆説」 (1月29日付け 日経 電子版 09:57)
→「DeepSeek・ショック」から一夜明けた28日の米株相場は上昇し、ひとまず落ち着きを取り戻した。前日に急落したエヌビディアも8.9%高で終えた。「マグニフィセントセブン(壮大な7銘柄、M7)」と呼ばれる主力株は軒並み高となったが、中国発のAI企業がもたらした衝撃の影響を見極めるにはまだ時間がかかりそうだ。
(注)ジェボンズのパラドックス(英語: Jevons paradox)…技術の進歩により資源利用の効率性が向上したにもかかわらず、資源の消費量は減らずにむしろ増加してしまうというパラドックス。
DeepSeekの取り組みについての見方、評価が、各方面から続いてあらわされている。
◇Trump calls China’s DeepSeek AI app a ‘wake-up call’ after tech stocks slide―China’s DeepSeek AI app sends U.S. tech stocks reeling (1月27日付け The Washington Post)
→シリコンバレーとワシントンのリーダーたちは、このアプリは中国が米国に挑戦できることを示していると述べた。ナスダックは3%下落し、チップメーカーのエヌビディアは時価総額$589 billionを失った。
◇Nvidia calls China’s DeepSeek R1 model ‘an excellent AI advancement’ (1月28日付け CNBC)
→*Nvidiaは、DeepSeekのR1モデルを「優れたAIの進歩」と呼んだ。中国の新興企業の出現により、該チップメーカーの株価は月曜27日に17%急落したにもかかわらず、である。
*このコメントは、ディープシークが先週、オープンソースの推論モデルであるR1をリリースし、OpenAIのような米国企業の最高のモデルを上回ったと報告された後のものだ。
*Nvidiaの声明は、DeepSeekの躍進がこのアメリカのチップメーカーのグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPUs)の仕事を増やすと見ていることを示している。
◇DeepSeek「パニック大げさ」「AI普及に扉」米金融市場 (1月28日付け 日経 電子版 08:43)
→中国の新興企業「DeepSeek」が低コストで開発した生成AIが台頭しつつあるとの報道を受け、27日の米株式市場ではAIインフラ関連とされる銘柄が軒並み売られた。AI開発競争の構図を大きく変えうるだけにショックが広がったが、米国のAI開発企業にどのような影響があるのか、アナリストのリポートなどから市場参加者の見解をまとめた。・・・・・
◇トランプ氏、DeepSeekを評価「安価なのはよいこと」 (1月28日付け 日経 電子版 09:56)
→トランプ米大統領は27日の演説で、中国のAI企業であるDeepSeekの低コスト生成AIモデルについて「安価な方法があるのはよいことだ」と評価した。
あえて前向きな姿勢を示すことで「米国の優位が失われる」という金融市場の不安を打ち消そうとした可能性がある。ディープシークへの直接の言及は初めて。
◇AI scare to boost Taipei-US ties: expert (1月29日付け Taipei Times)
→*GOLDEN OPPORTUNITY:台湾はディープシークが米国市場に与えた衝撃波を利用し、ワシントンの技術パートナーであることを示す必要がある、と研究者は述べた。
*中国がAIで躍進を遂げたと報じられたことで、アメリカは技術的優位性を確保するため、台湾や日本とのより強力な同盟関係を模索することになるだろう、と台湾の研究者が昨日述べた。
安価なAIモデル「ディープシーク(深度索求)」が月曜日に発表されたことで、アメリカのハイテク株は急落し、チップメーカーのNvidia社は16%の値下がり、ナスダックも612.46ポイント(3.07%)下落し、19,341.84ポイントで取引を終えた。
◇AI、チャイナショック――制約が生んだ中国AI 資金・半導体「無し」 人材は豊富、「放任」も強み (1月29日付け 日経)
→ディープシークの正式社名は「杭州深度求索人工智能基礎技術研究」。
「80後(1980年代生まれ)」の起業家、梁文鋒氏が2023年に杭州市で設立した。
同社による革新モデル「R1」開発の背景には、中国AI業界の現場における「2つの無い」と「2つの有る」が存在する。
◇DeepSeek’s AI claims have shaken the world - but not everyone’s convinced (1月31日付け CNBC)
→*DeepSeek社は、米国のAI研究所がその大規模な言語モデル(LLMs)に課している価格の数分の一にもかかわらず、同社のR1がOpenAIの最新モデルo1を凌駕していると主張している。
*この主張は、ハイテク巨大大手がAIに費やしている膨大な金額に対する懸念を呼び起こしているが、多くの専門家は懐疑的な見方を示している。
*DeepSeekをめぐる精査がどう転ぼうとも、AI科学者たちは業界にとって前向きな一歩であることに大筋で同意している。
◇Semiconductor supply chain linchpin JSR sees DeepSeek boosting chip sales―JSR expects DeepSeek AI to drive long-term chip demand (1月31日付け South China Morning Post (Hong Kong)/Bloomberg)
→1)DeepSeekの低価格AIモデルが長期的に半導体需要を促進すると日本のチップ材料サプライヤーが予想
2)半導体製造用フォトレジストの主要サプライヤーであるJSR株式会社は、DeepSeekの低価格AIモデルによるチップ需要の押し上げを見込んでいる。JSRのKenichi Emoto氏は、ASMLのEUVリソグラフィ装置による先端チップ製造におけるフォトレジストの重要性を指摘し、長期的な成長の可能性を強調している。
◇DeepSeek's disruption: what it means for TSMC and the AI supply chain―DeepSeek's open-source model challenges AI norms (1月31日付け DigiTimes)
→AIは止められないトレンド。OpenAIに限らず、米国は強さを維持するだろう。ディープシークは中国企業の既存の枠組みを打ち破り、オープンソースモデルで運営されているため、今後AIの規範に挑戦していく。
◇DeepSeekのAI試してみた 中国政治や「天安門」に回答 (2月1日付け 日経 電子版 05:00)
→中国のAI企業、DeepSeekの開発した生成AIの性能が関心を集めている。公開されている最新モデルには本来、どのような特徴が備わっているのか。インターネットに接続せず利用できるモデルを試したところ、高度な数学問題を解く能力を示したほか、中国政治に関する話題に回答したケースもあった。
最新モデル「R1」をダウンロードし、手元のコンピューター上で検証した。
後に続く動き&反応が、これも様々に各方面から相次いでいる。
◇Alibaba releases AI model it says surpasses DeepSeek―Alibaba's Qwen 2.5-Max AI model aims to outshine DeepSeek (1月29日付け Reuters)
→中国のハイテク企業、アリババは、水曜29日に新しいタブを開き、人工知能モデル、Qwen 2.5の新バージョンをリリースし、高い評価を得ているDeepSeek-V3を上回ると主張している。
Qwen 2.5-Maxのリリースが、多くの中国人が仕事を休んで家族と過ごす旧正月の初日という異例のタイミングであることは、中国のAIスタートアップ、DeepSeekのプレッシャーを指摘している。
◇DeepSeekがデータ不正利用か OpenAIとMicrosoft調査 (1月29日付け 日経 電子版 18:18)
→中国の生成AIスタートアップ、DeepSeekが米オープンAIのデータを不正利用した疑いが浮上した。米ブルームバーグ通信が28日に報じた。オープンAIは政府や提携する米マイクロソフトと連携し調査を進めていると明らかにした。
ディープシークは2024年末から25年1月にかけて、オープンAIの「ChatGPT」に匹敵する性能を持つ複数の大規模言語モデルを短期間で低コストに開発したと公表した。先端技術分野における米テクノロジー業界の優位性を揺るがし、大幅な米株安を招いていた。
◇オープンAIとマイクロソフト、中国AIを調査 ディープシーク、データ不正利用か 非公開モデルを学習に使用 (1月30日付け 日経)
◇Microsoft, Meta CEOs defend hefty AI spending after DeepSeek stuns tech world―Microsoft, Meta stick by AI spending amid DeepSeek reveal (1月30日付け The Korea Times (Seoul))
→マイクロソフトとメタ社は、中国企業ディープシークがより費用対効果の高いAIコンピューティングのブレークスルーを明らかにしたことを受け、AIへの投資を擁護している。マイクロソフトのSatya Nadella CEOとメタ社のMark Zuckerberg CEOは、増大する需要に対応するための大規模インフラの必要性を強調した。
◇トランプ氏のAI覇権、メタやMicrosoft呼応 22兆円投資 (1月30日付け 日経 電子版 16:50)
→トランプ米政権が経済の最重要課題として掲げるAI戦略に呼応し、マイクロソフトやメタなどの米テクノロジー企業が年22兆円に及ぶ巨額投資を続けている。中国の低コストAI、DeepSeekに警戒が強まる中でも、規模の経済を生かし米国のAI覇権を後押しする。
◇メタCEO、トランプ政権に「恭順」 首都に滞在拠点検討 (1月30日付け 日経 電子版 13:30)
→米メタがトランプ米大統領にすり寄る姿勢を強めている。29日にはマーク・ザッカーバーグCEOが米首都ワシントンで滞在拠点となる不動産の取得を検討していることが明らかになった。トランプ氏に「恭順」の意を示し、後ろ盾を得ることで事業を有利に進める狙いとみられる。
◇イタリア、DeepSeekのダウンロード不可に 説明を要請 (1月30日付け 日経 電子版 02:37)
→イタリアのデータ保護当局(ガランテ)は29日、中国の新興企業、DeepSeekが開発した生成AIサービスを巡り、個人情報の取り扱いについて同社に20日以内の説明を求めていると明らかにした。
アイルランドのデータ保護当局も同日、ディープシークに同国のユーザーに関連するデータ処理について情報提供を求めたと発表した。
◇米、対中規制に限界も ディープシーク台頭 半導体利用抜け穴 米技術の依存度減 (1月30日付け 日経)
→中国の生成AI企業DeepSeekが安価で高性能なAIモデルを開発したことを受け、米国では先端半導体の対中輸出規制の有効性を疑問視する声が上がっている。AIの技術が盗用されたとの指摘が浮上しているが、規制に「抜け穴」があるとの声も上がっている。
◇Advantest shrugs off DeepSeek and raises outlook―‘NEAR CERTAIN’: The chip test equipment maker said it expects the rising number of new entrants in the AI field to further support demand in the months ahead (1月30日付け Taipei Times)
→チップ業界の中核企業であるアドバンテストは昨日、AI関連の支出増加を見込んで通期予想を40%近く引き上げ、ディープシークの大々的なデビューの影響を軽視した。
アドバンテストは、Douglas Lefever CEOが長期的なAI開発の上振れはほぼ確実だと述べたことから、営業利益見通しをアナリスト予想を上回って上方修正した。
◇DeepSeek、悪意ある質問にも回答 マルウエア作成法も (1月31日付け 日経 電子版 05:00)
→低コスト生成AIの開発で話題を集める中国のDeepSeekに、サイバーセキュリティー面の懸念が浮上している。専門家は他社製品に比べ不正利用を防ぐ仕組みが不十分で、マルウエア(悪意のあるプログラム)の作成などが可能だと指摘する。サイバー攻撃やテロに悪用されるリスクがある。
◇AI覇権戦略、テック呼応 規制緩和策が追い風 マイクロソフトとメタ、22兆円投資 中国製台頭を警戒 (1月31日付け 日経)
→トランプ米政権が経済の最重要課題として掲げるAI戦略に呼応し、マイクロソフトやメタなどの米テクノロジー企業が年22兆円に及ぶ巨額投資を続けている。中国の低コストAI、DeepSeekに警戒が強まる中でも、規模の経済を生かし米国のAI覇権を後押しする。
◇DeepSeekのNVIDIA半導体入手経路、米国が調査 (1月31日付け 日経 電子版 12:19)
→米当局が中国のAI企業DeepSeekについて、シンガポール経由で米エヌビディアの先端半導体を購入したかどうか調査していることが30日、明らかになった。米ブルームバーグ通信が報じた。第三国を迂回して購入し、米国の輸出規制を回避した可能性について調べている。
ディープシークは米国製に匹敵する性能を持つ生成AIを低コストで実現したと主張し、米テクノロジー業界に衝撃をもたらした。開発には対中輸出規制がかかっているエヌビディアの半導体が必要になるため、どう調達したかに注目が集まっていた。
DeepSeekのAIモデルの評価、見極めがどう落ち着いていくか、今後に注目である。
さて、半導体開発においても、中国の取り組みが引き続いており、最先端への肉迫の様相を感じさせている。
◇[News] China Races Ahead in AI: Updates on Huawei’s Advancements and Big Fund’s Semiconductor Moves (1月22日付け TrendForce)
→AIチップに対する米国の輸出規制が強化されているにもかかわらず、中国は政府の強力な投資と現地拡大に後押しされ、AI開発で躍進しているようだ。Financial Timesを引用したEconomic Daily Newsの報道によると、ファーウェイはAI推論タスク用の自社開発チップを推進することで市場シェアを拡大し、エヌビディアの領域を侵食することを目指しているという。
一方、中国政府が支援する国家集積回路産業投資基金(Big Fund)は、半導体産業強化のため\344 billion ($47 billion)を投じて第3段階を進めている。Commercial Times(商業時報)によると、主な重点分野にはAIコンピューティング・チップやHBMチップが含まれる可能性があるという。
◇Third Chinese company begins HBM memory production for AI processors: Report―China-based Tongfu Microelectronics enters HBM market for AI, HPC ―Tongfu Microelectronics joins CXMT and Wuhan Xinxin in HBM production for Chinese developers of AI processors. (1月24日付け Tom's Hardware)
→中国のメモリーメーカーは、AIやHPCプロセッサー向けに広帯域メモリー(HBM)の生産を徐々に、しかし確実に採用している。今週、日経は、中国を拠点とする第3のメーカーであるTongfu Microelectronicsが、一部の顧客にHBM製品のサンプリングを開始したと報じた。こうした動きは、この種のメモリの製造に必要なエコシステムが発展しつつあることを示している。興味深いことに、AMDはTongfuの主要顧客であり株主でもある。
◇Top Chinese memory chip maker YMTC makes another design breakthrough, defying US sanctions―YMTC reaches 3D NAND chip breakthrough amid sanctions―Yangtze Memory Technologies Corporation is integrating a new design into chips with 294 gates, research firm finds (1月27日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→1)TechInsightsのレポートによると、中国の大手フラッシュメモリチップメーカーであるYangtze Memory Technologies Corporation(YMTC)は、北京が技術的自給自足を推進する中、米国の制裁にもかかわらず、重要な技術的ブレークスルーを達成した。
カナダの集積回路(IC)調査会社、TechInsightsの最新レポートによると、YMTCは、同社の最高密度3D NANDチップに新しいXtacking4.0メモリーチップ設計を実装し、市販のZhiTai TiPro9000ソリッドステートストレージデバイスで発見された。
このチップは、150ゲートの下部デッキと144ゲートの上部デッキ、合計294ゲートのdual-deck構造を特徴としている。このチップは、2枚のウェハーを接合するために、hybrid-bonding技術として知られているものを使用している。
2)TechInsightsによると、Yangtze Memory Technologiesは、Xtacking4.0設計を294ゲートの3D NANDチップに統合することで、「技術的ブレークスルー」を達成した。ZhiTai TiPro9000ソリッドステート・デバイスに見られるこの進歩は、米国による制裁の中、中国の技術的自給自足の推進を浮き彫りにしている。
トランプ政権が始動したばかりのタイミングでの米中摩擦の新たな局面の推移に注目である。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□1月28日(火)
DeepSeekの衝撃が見られる中、AI半導体への規制、好決算での買い、そして関税実施などの材料で上げ下げ交互の推移となった今週の米国株式市場である。
◇米ナスダック3%安、中国AI警戒 NYダウ反発289ドル高 (日経 電子版 07:26)
→27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前週末比289ドル33セント(0.65%)高の4万4713ドル58セントで終えた。中国企業が開発した生成AIの台頭で、米国のAI産業の脅威になるとの懸念が拡大し、半導体関連やAI関連株が売られた半面、ディフェンシブ株を中心に買いが入り、指数を押し上げた。
中国では春節の連休の最中のDeepSeekショックとなっている。
◇中国春節の8連休スタート、90億人が帰省・旅行へ (日経 電子版 11:18)
→中国で28日、春節(旧正月)に伴う連休が始まった。今年は2月4日まで8連休となる。北京市内の空港では早朝から帰省先や旅先に急ぐ人の姿が見られた。
□1月29日(水)
◇米ナスダック反発2%高 見直し買い、ダウは136ドル高 (日経 電子版 07:35)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比136ドル77セント(0.3%)高の4万4850ドル35セントで取引を終えた。中国のAIの台頭を受け米AI産業が影響を受けるとの懸念から前日に下落したものの、値ごろ感が意識されてAI半導体大手エヌビディアが大幅反発。主力テック銘柄にも買いが広がり、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数も反発した。
ナスダックは2%高で引けた。中国のAI開発企業、DeepSeekが低コストの生成AIモデルを開発したとして米関連企業の優位性が揺らぐと警戒され、同指数は前日に下落。約1カ月ぶりの下落率を記録していた。
□1月30日(木)
米国連邦準備理事会(FRB)も、トランプ政策の見極めである。
◇FRB議長「利下げ急がず」 金利維持、トランプ政策見極め (日経 電子版 07:06)
→FRBは29日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決めた。2024年9月から12月まで3会合連続で計1%の利下げを実施しており、今後は時間をかけてトランプ政権が打ち出す政策や物価の動向を見極める。
◇米株下落 NVIDIA一時7%安、トランプ政権の規制懸念 (日経 電子版 07:37)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反落し、前日比136ドル83セント(0.30%)安の4万4713ドル52セントで終えた。エヌビディアが一時7%下落した。米ブルームバーグ通信が29日午後、「トランプ政権がエヌビディアに対し、中国向けの販売規制を強化することを検討している」と伝え、材料視された。
□1月31日(金)
◇NYダウ反発168ドル高 好決算で買い、IBM13%高 (日経 電子版 07:23)
→30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比168ドル61セント(0.37%)高の4万4882ドル13セントで終えた。一部の主力株に決算を好感した買いが集まり、指数を押し上げた。もっとも、トランプ米大統領による関税引き上げへの懸念は株価の重荷となり、主力株への売りを誘った。ダウ平均の構成銘柄ではIBMが13%ほど上昇した。29日夕発表の四半期決算で1株利益が市場予想以上だった。AI関連の需要が収益を支えた。
トランプ政権が、2月1日からのカナダ、メキシコ、そして中国への関税実施を発表している。摩擦の拡がりの局面となる。
◇Trump Barrels Toward Tariff Showdown With Top Trade Partners―Trump set to impose tariffs on Canada, Mexico, China―US president set Feb. 1 as launch date for trade barriers―Leaders ready counter-tariffs, customers brace for price hikes (Bloomberg)
→ドナルド・トランプ大統領は、2月1日土曜日からカナダとメキシコからの$900 billionの商品に25%の関税をかける案を進めており、同時に中国からの輸入品に10%の関税をかけることも検討している。カナダは$105 billionの報復リストを作成し、メキシコは独自の対応策を発表している。エコノミストは、これらの関税によってサプライチェーンが混乱し、消費者物価が上昇し、アメリカのGDPが縮小する可能性があると警告している。
□2月1日(土)
◇米政府、カナダ・メキシコ関税「2月1日実施」 中国にも (日経 電子版 07:40)
→トランプ米政権のレビット報道官は1月31日の記者会見で、カナダ・メキシコに対する25%の関税を2月1日から「実施する」と述べた。中国に対しても同日から10%の関税を上乗せする。詳細は1日午後までに公表するとした。トランプ米大統領がその後、記者団からの質問に応じ、2月1日の関税発動回避に向けて3カ国ができることはこれ以上「ない」と明言した。交渉の余地はないとの認識だ。
◇米「関税実施」で株急落、NYダウ337ドル安 ドル高誘う (日経 電子版 07:43)
→31日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比337ドル(0.8%)安の4万4544ドルで終えた。トランプ米政権が2月1日からカナダやメキシコ、中国に関税を課すと表明したことでリスク回避の売りが広がった。関税がインフレや米金利の高止まりを招くとの見方から外国為替市場ではドル高が進んだ。
≪市場実態PickUp≫
【半導体各社業績関連】
現下のAIブームの前の半導体サプライヤランキングの上位常連について、直近の業績発表を以下示している。AI向けHBMメモリが好調なSK Hynix以外は、インテルはじめ厳しい状況を感じさせる内容である。
◇Texas Instruments sees worst rout on weak forecast (1月27日付け Taipei Times)
→テキサス・インスツルメンツ・インク(TI)の株価は、需要の低迷と製造コストの上昇により、今期の業績見通しが期待外れとなったため、金曜24日に約5年ぶりの大幅下落となった。
第1四半期の利益は1株当たり0.94米ドルから1.16米ドルになると、同社は木曜23日の声明で述べた。このレンジの中間値である1株当たり1.05米ドルは、アナリストの平均予想である1.17米ドルを大きく下回った。
◇SK hynix's surpasses Samsung Electronics for 1st time in quarterly profit (1月28日付け Yonhap News Agency)
→チップ製造大手のSKハイニックスは、火曜28日に示した四半期利益データより、AIメモリー・チップの好調な販売によって第4四半期の数字を過去最高に押し上げ、四半期利益で最大のライバルであるサムスン電子を初めて上回った。
該四半期決算報告書によると、SKハイニックスの10-12月期の営業利益は過去最高の8兆800億ウォン(約$5.62 billion)で、前年同期比15%増となった。
◇Intel issues weak forecast, but beats on fourth-quarter results (1月30日付け CNBC)
→*インテルの四半期ガイダンスはウォール街の予想を下回ったが、第4四半期決算はコンセンサスを上回った。
*経営幹部は、この見通しを季節性と競争などの要因によるものだとしている。
*インテルは、この四半期中にパット・ゲルシンガーCEOに代わり、2人の暫定リーダーを据えた。
◇インテル最終赤字200億円 10〜12月、AI向けも苦戦続く (1月31日付け 日経 電子版 07:45)
→米インテルが30日発表した2024年10〜12月期決算は売上高が前年同期比7%減の$14.26 billion(約2兆2000億円)、最終損益が$126 millionの赤字(前年同期は$2.669 billionの黒字)だった。パソコン向けやAI向け半導体の苦戦が続き、4四半期連続で最終赤字となった。
10〜12月期は市場予想では最終黒字が見込まれていたが、赤字が続いた。
◇Intel loses $18.8bn (1月31日付け Electronics Weekly (UK))
→インテルの第4四半期の売上高は前年同期比7%減の$14.3 billion、損失は$126 millionだった。
◇CEO不在のインテル、10〜12月も赤字 補助金頼み脱せず (1月31日付け 日経 電子版 13:13)
→米インテルの苦境が続いている。30日発表した2024年10〜12月期決算はコスト削減で赤字幅が縮小したが、パソコンやAI向け半導体、受託生産は減収だった。正式な最高経営責任者の不在が続き技術力も出遅れたままで、補助金頼みから脱せずにいる。
30日のインテルの決算説明会は、経営のかじ取りを担う正式なCEOが不在という異例の状況で開かれた。
◇ST forecasts Q1 revenues down 28% y-o-y―STMicro anticipates Q1 revenue drop, fab closures (1月31日付け Electronics Weekly (UK))
→STによると、第1四半期の売上高は前年同期比28%減の$2.51 billionで、一部の工場と組立工場で生産を一時停止する見込み。
【ASMLの業績発表】
DeepSeekの衝撃のなか、半導体製造装置最大手のオランダ・ASMLの業績発表が行われ、同社CEO、Christophe Fouquet氏のコメントが以下あらわされている。米中摩擦の狭間にあり、中国向け売上げ比率がけっこう高い同社である。
◇ASML boss cites ‘Moore’s law’ for DeepSeek optimism as he warns investors to get ready for more AI ‘elephants in the room’ (1月29日付け Fortune)
→オランダの大手チップメーカーASMLのCEOは、中国の驚くべきAIチャットボットが欧米のハイテク株を混乱させた数日後、楽観的な見通しを示しながら、投資家に対し、DeepSeekスタイルの「部屋の中の象」が増えることに慣れる必要があると警告した。
中国のAIチャットボットDeepSeekが、米国の競合他社に匹敵する性能を持ちながら、わずかなコストで製造されたとされるオープンソースモデルで投資家に衝撃を与えた後、ASMLの株価は月曜27日に他のAI企業とともに急落し、株式市場から1日で1兆ドルが消し飛んだ。
◇ASML CEO Says DeepSeek’s Emergence Is ‘Good News’ for AI―ASML CEO sees opportunity in AI cost reduction (1月29日付け Bloomberg)
→ASMLのChristophe Fouquet CEOが、Moore's Law(ムーアの法則)をポジティブな力として挙げ、コスト低下が半導体業界に与える影響について楽観的な見方を表明している。これは、中国のジェネレーティブAIチャットボットDeepSeekのサプライズ出現の後であり、米国モデルと同等の性能を低コストで実証したことで劇的な市場売りを引き起こした。チップメーカー向けのリソグラフィ装置を製造するASMLは、コスト削減を、ジェネレーティブAIモデルの展開拡大から利益を得るチャンスと捉えている。
◇ASML order boom reassures investors after DeepSeek sell off (1月29日付け Reuters)
→*新規予約が予想を大きく上回る
*CEO、AIが引き続きコンピューター業界の成長を牽引すると語る
*第4四半期の中国売上高は全体の27%に減少
*株価は7.5%上昇
コンピューター・チップ製造装置トップメーカーのASMLは29日、AIのブームが同社の最先端装置への需要を牽引しているとして、予想を大幅に上回る第4四半期の新規受注を発表した。
◇ASML CEO sees low-cost AI models like DeepSeek driving more demand - not less (1月29日付け CNBC)
→*ASMLのChristophe Fouquet CEOはCNBCに対し、ディープシークが新たに明らかにしたR1モデルの詳細には触れず、AIに特化したチップの需要が減速する兆候は見られないと語った。
*ASMLのCEOは、ディープシークをめぐる「多くの議論」があることは認めつつも、中国企業のモデルがチップ需要に与える影響について尋ねる顧客の声は聞いていないと述べた。
*ディープシークの新モデルに対する認識の高まりは、今週のテクノロジー株の大幅な低迷を引き起こした。
◇ASML10〜12月純利益32%増 最先端半導体向け好調 (1月30日付け 日経)
→オランダの半導体製造装置大手、ASMLホールディングが29日発表した2024年10〜12月期決算は、純利益が前年同期比32%増の26億9300万ユーロ(約4400億円)だった。中国向けは落ち込んだが、米国や日本への販売が増えた。
売上高は28%増の92億6200万ユーロだった。
◇AI boom gives ASML unexpected boost (1月30日付け Taipei Times)
→*WINDFALL(思いがけない売上げ):米国の規制にもかかわらず、ASMLは、より成熟した半導体を製造するために古いキットを購入した中国のチップメーカーからの強い需要から恩恵を受けた。
*ASML Holding NVは、人工知能(AI)ブームが同社のチップ製造装置への需要を牽引したことから、昨年第4四半期にアナリスト予想の2倍以上の受注を計上した。
◇China years behind ASML’s chipmaking machines, CFO Dassen saysASML exec: China's chipmaking will play catch-up for years (1月30日付け South China Morning Post (Hong Kong)/Bloomberg)
→1)米国が北京の野心を抑え込もうとしているにもかかわらず、中国企業は観測筋を驚かせるような技術的飛躍を遂げている。
2)ASMLのRoger Dassen最高財務責任者(CFO)は、DeepSeekやChangXin Memory Technologiesのような中国企業による最近の進歩にもかかわらず、中国はチップ製造技術においてASMLに何年も遅れていると述べている。ASMLは半導体製造に不可欠な先端リソグラフィ装置を独占している。
◇中国AIと開発競争、ASMLのCEO「勝者はまだ見えず」 (1月30日付け 日経 電子版 05:13)
→オランダの半導体製造装置大手、ASMLホールディングのクリストフ・フーケCEOは29日、中国のAI企業のDeepSeekにより揺れるAI業界に言及した。今後も画期的なAIモデルを開発する企業が出てくるとした上で、「今は誰にも2030年時点の勝者は分からない」と述べた。
【「トランプ2.0」関連】
トランプ政権の2月1日からの関税について上記しているが、半導体関連では特にバイデン前政権の置き土産である米国国内半導体製造強化に向けた各社への補助金支給がある。補助金の一斉凍結の指示がみられ、SamsungおよびSK Hynixの韓国勢に懸念を生じている状況が以下あらわされている。
◇Trump calls for tariffs on computer chips, semiconductors and pharmaceuticals from Taiwan (1月27日付け VentureBeat)
→ドナルド・トランプ氏は近い将来、台湾などからの外国製コンピューター・チップ、半導体、および医薬品に関税をかけることを求めた。
マイアミで開催された下院共和党のIssues Conference(問題会議)での演説で、トランプ氏は、メーカーもアメリカにチップ工場を建設するのにインセンティブは必要ないと述べた。同氏は、インテルのようなチップメーカーが米国内で製造するための補助金を支払うというジョー・バイデン氏のプログラムを削除することを示唆した。
◇Trump eyes up to 100% tariffs on foreign semiconductors, TSMC in crosshairs―Trump proposes steep import tariffs on semiconductors―No wonder OpenAI needs $500B for Stargate (1月28日付け The Register (UK))
→ドナルド・トランプ大統領は、国内生産を促進するため、外国製半導体に最大100%の輸入関税をかけることを提案した。この関税は主に台湾と韓国に影響する。TSMCとサムスン電子は米国に工場を建設中だが、米国国内の生産能力はまだ限られている。
◇Responding to Trump tariff threat, Taiwan says chip business is 'win-win'―Taiwan touts chip trade with US amid tariff threat (1月28日付け AOL/Reuters)
→台湾は、ドナルド・トランプ大統領による関税の脅威に対し、米国との半導体貿易の相互利益を強調している。世界最大の受託チップメーカーであるTSMCは、アリゾナ州に$65 billionを投資しており、この関係における重要なプレーヤーと見られているが、同社はコメントを控えている。台湾の経済省と総統府は、このパートナーシップの補完的な性質を強調し、強い絆と相互信頼を指摘している。
◇Taiwan addresses Trump's semiconductor tariff proposal―Economics ministry acknowledges strong US-Taiwan tech interdependence (1月29日付け Taiwan News)
→台湾経済部は火曜28日、トランプ米大統領が台湾の半導体に対する関税案 を発表したことに対し、米台ハイテク産業の相互補完関係を強調し、継続的な協力関係の重要性を強調した。
◇米政権、補助金など一斉凍結指示 地裁が差し止めも混乱 (1月29日付け 日経 電子版 07:38)
→トランプ米政権は28日、連邦政府による補助金やローンを一斉に停止するよう指示した。歳出削減に向け大統領の意向に沿った支出かどうかを点検すると主張。米メディアによると裁判所は措置をいったん差し止めたが、低所得者向けの支援手続きなどで混乱が起きている。
◇Cabinet mulls chip aid after Trump threat (1月30日付け Taipei Times)
→*一致団結:首相は、Trump大統領の関税発言は、国のチップの優位性を維持するために官民が協力する絶好の機会を提供すると述べた。
*ドナルド・トランプ米大統領が、米国に輸出されるチップに100%の関税を課すと脅した後、政府は国内の半導体産業を支援する方法、あるいは民間部門との共同プロジェクトを開催する方法を検討している、とCho Jung-tai(卓榮泰)首相が昨日述べた。
◇Samsung, SK hynix concerned over US commerce secretary nominee's plan to review chip subsidies―SK Hynix, Samsung wary as US nominee eyes chip subsidy review ―Lutnick expresses stronger protectionism over US trades (1月30日付け The Korea Times (Seoul))
→米国の商務長官候補、Howard Lutnick氏は、米国政府が韓国半導体メーカーに約束した補助金に不透明感を投げかけている。ドナルド・トランプ政権が同プログラムに懐疑的であることに伴い、同プログラムの見直しを求めたからだ。
韓国の2大チップメーカーであるサムスン電子とSKハイニックスは、ジョー・バイデン前政権が米国への投資に対して約束した補助金が延期されるか、最悪の場合、中止されるかに強い関心を寄せている。
【国内関連】
ラピダスへの資金、東芝の製品発表、など今週の動きを追っている。
◇自民半導体議連の山際会長 ラピダスに「機動的に資金」 (1月27日付け 日経 電子版 05:00)
→国内半導体産業の復活をかけたラピダスで、最先端品の試作が4月に始まる。自民党半導体戦略推進議員連盟の山際大志郎会長は日本経済新聞の取材に「アジャイル(機敏に)に資金提供できるようにする」と強調した。ただ国主導の半導体プロジェクトには失敗例も多い。過去の教訓を生かし、かつての輝きを取り戻せるのか。
政府は会期中の通常国会で、ラピダス支援に向けた法改正案の審議を予定する。
◇東大発OptQC、6.5億円調達 光量子コンピューター開発 (1月27日付け 日経 電子版 15:31)
→東京大学発のスタートアップで光を使った量子コンピューターを開発するOptQC(東京・豊島)は、ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレイン(同・渋谷)などから第三者割当増資で6億5000万円を調達したと発表した。2026年4月に自社開発の光量子コンピューターで商用サービスを始めることを目指す。
◇Toshiba introduces 50V/3.0A constant current stepper motor driver IC―Toshiba unveils stepper motor driver with higher ratings (1月28日付け New Electronics (UK))
→1)東芝エレクトロニクス・ヨーロッパは、電流検出機能を内蔵した定電流制御対応の50V/3.0AステッピングモータドライバIC「TB67S559FTG」を発表した。
2)東芝が、5mm×5mmパッケージで、OA機器、自動販売機および産業機器などのアプリケーションに対応したステッピングモータドライバを発表、出力電圧範囲は8.2〜44Vと広く、オン抵抗は0.4Ωと超低抵抗である。
◇「琵琶湖半導体」構想が始動 立命大新興、新型基板の工場建設へ 20の企業・自治体集う (1月29日付け 日本経済新聞 地方経済面 関西経済)
→琵琶湖周辺を先端半導体部品の一大製造拠点にする官民連携プロジェクトが動き出す。立命館大発スタートアップのパテンティクス(滋賀県草津市)は2月以降、電力ロスが少ない新型基板の工場建設に向けた立地選定を本格化させる。同社を核に約20の企業や自治体が域内に開発・生産体制を整える。革新を生み出すエコシステム(生態系)構築の第一歩となる。
◇Rapidus to reportedly install 10 EUV chipmaking tools at its fab in Japan―Reports: Rapidus installing 10 EUV tools for 2nm chips―Enough? (1月30日付け Tom's Hardware)
→TrendForceと日刊工業新聞によると、ラピダスは2027年までに2ナノメータ・チップの生産を目指し、日本の工場に10台のEUV露光装置を導入する計画である。最初の装置は12月に到着し、ラピダスは4月に試作を開始、6月までにブロードコムにサンプルを納入したいとしている。
◇経産省、次世代半導体に金融支援 ラピダス念頭に法改正案 (1月31日付け 日刊工業)
→経済産業省は30日、次世代半導体の量産を支援するための法改正案を自民、公明両党の部会に示し大筋了承を得た。情報処理促進法を改正して情報処理推進機構(IPA)の業務を追加し、出資のほか社債や民間融資への保証といった金融支援を可能にする。さらに特別会計法の改正で次世代半導体などの支援の財源に公債を発行できるようにする。束ね法案として2月上旬の閣議決定、今通常国会への提出を目指す。
【Apple関連】
中国は海外企業の生成AIを実質禁じており、自社の生成AI「Apple Intelligence」は展開できない事情を抱えるなか、Appleの直近四半期業績および中国でのスマホ販売の状況である。
◇Apple、10〜12月7%増益 iPhone売上高は予想下回る (1月31日付け 日経 電子版 07:45)
→米アップルが30日発表した2024年10〜12月期決算は、売上高が前年同期比4%増の$124.3 billion(約19兆2000億円)、純利益は7%増の$36.33 billionだった。スマートフォン「iPhone」の売上高は市場予想を下回った。
全体の売上高は四半期ベースで過去最高となり、2.40ドルの1株利益とともに市場予想を上回った。
◇Apple、期待の「AI iPhone」不発 中国でも販売低迷 (1月31日付け 日経 電子版 13:18)
→米アップルが、AIを搭載した新型iPhoneの不振に直面している。世界最大のスマートフォン市場である中国では、自社AIを提供できないこともあって販売が低迷。かつて業績をけん引したiPhoneと中国事業が、いずれも停滞している。