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渡りに船か、半導体企業のグローバルへの進出とそのコラボを手助けするGSA

Global Semiconductor Alliance (GSA)が日本メンバーの参加を促すため初めての経営層を集めた会議を開催した。第1回の会議にメディアはオフリミットだが、会議開催の前に記者会見を開き、その狙いを語った。

図1 GSAのメンバーたち

図1 GSAのメンバーたち
会長は台湾Etron社CEOのNicky Lu氏(右)、プレジデントはJodi Shelton氏(中央)、日本人で初めてボードメンバーに選任された東芝の斎藤昇三氏(右から2番目)、アジア太平洋委員会委員のザイン社長の飯塚哲哉氏(左から2番目)、アジア太平洋地区上級ディレクタJeremy Wang氏(左)


GSAはかつてファブレス半導体協会FSA(Fabless Semiconductor Association)と名乗っていたが、今やIDMとファブレスに分けること自体、意味がなくなりつつある。というのは、IDMはファブライトとしてファブレスに近づいてきており、SoCチップでは1社で全てを賄うことが難しくなってきており、コラボレーションがマストになってきたからである。ファブレスはいうまでもなく、IDMさえもコラボなしには競争できなくなってきた。そのファブレス半導体企業でさえも、IPコア開発や論理設計サービス、物理設計サービス、検証サービス、デザインハウスなど役割が分化しつつある。もはやファブレスとIDMで切り離す意味はなくなってきつつある。GSAの標語は、「コラボレーション」と「インテグレーション」、「イノベーション」である。水平分業とコラボによって画期的な新製品を開発しようということだ。

この記者会見に出席したメンバーには、写真のGSA役員以外にも、Global Foundries社CEOのDoug Grose社長、Synopsys社CEOのAart de Geus社長、Cadense Design Systems社CEOのLip-Bu Tan社長、ASE社COOのTien Wu社長、SamsungのAna Hunter氏などそうそうたるエグゼクティブがいる。まさに世界の主要半導体トップが顔を揃えた感がある。

GSAには現在30カ国から500社が参加している。特に2010年だけで73社が新たに参加した。GSAの活動は、FSAから名前を変えた頃から活発になってきた。2003年にアジア太平洋地区の本部を台北に設立、さらに2005年には欧州にも本部を設立し、世界中の半導体関係の企業に参加を呼び掛けている。ところが、ここに日本のメーカーは少ない。今のところ会員企業は、東芝、ザインエレクトロニクス、アドバンテスト、ジェイデバイス、凸版印刷、ソニーLSIデザインの6社のみ。アジア太平洋地区には全部で81社が加盟していることを考えると日本の参加は極めて少ないといえよう。

逆に世界から見ると、世界半導体市場の20数%も占める日本だけが参加していないという事実は、日本が世界から遊離しているといっても過言ではない。この”異常な”状況を早く是正すべきだというGSAの思いは、日本の半導体関係企業にとってはまさに「渡りに船」ではないか。グローバルな進出やグローバルなパートナーシップを構築する上で、海外企業の経営トップと仲良くしていくことは欠かせない。相手の本心を知り周辺を固める上でも本音を言い合える仲間が海外にいるのといないのとではグローバル化を図る上で雲泥の差となって表れてくるだろう。昔とは違い、今の半導体産業は水平分業、互いにコラボすることが不可欠になっている(参考資料1,2)。「日本の半導体企業は今、変わりつつあるため、GSAにとって日本企業とのコラボの時期がようやく熟してきた」というJodi Sheltonプレジデントの言葉はまさに日本に「船」を提供してくれたともいえる。

GSAにとって日本からの参加企業が増え、日本とも交流を盛んにできることはメリットが大きい。日本企業間のネットワークが強くなる、市場の実態調査(market intelligence)にアクセスできる。もちろん日本の顧客を増やすことができるというメリットもある。

参加による技術的なメリットも大きい。例えば、GSAでは3D ICとMEMSのワーキンググループを作っている。3D ICをさまざまな立場から、議論することで低コストなソリューションを見つけられるなら実用化は近くなる。メンバーにはファブレス、ファウンドリ、後工程ファウンドリ、EDAツールベンダー、インターポーザメーカー、TSV加工メーカーなどがいる。こういった企業の人たちとの議論を通じてパートナーシップやコラボが可能になる。1社で開発できるほど余裕のある時代ではない。

半導体産業は特にSoCやシステムLSIはより複雑になると同時に、設計・製造・販売を素早く行う時代になっている。Jodiプレジデントは何度もアジャイル(agile:俊敏なという意味)という言葉で、今日の状況を表現している。

(2011/03/02)


参考資料:
1. 津田建二「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」日刊工業新聞社発行 2010年4月
2. 同「欧州ファブレス半導体産業の真実」日刊工業新聞社発行 2010年11月

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