Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 産業分析

AIチップの市場調査から見えてくるNvidiaの強さ

NvidiaのAIチップよりも消費電力が小さく性能が高いAIチップを多数の半導体企業が発表しているからといっても、Nvidiaの優位性は当分変わらない。NvidiaはAIチップだけではなくAI用のソフトウエアやライブラリ、開発ツール、サービスなど総合力で圧倒しているからだ(参考資料1)。AIチップだけでもNvidiaが着実に市場シェアを伸ばしているデータを市場調査会社TrendForceが明らかにした。

Frank Kung, TrendForce

図1 TrendForce 半導体調査部門の調査実務センター アナリストのFrank Kung氏 出典:筆者撮影


AIチップをサーバに搭載したAIデータセンターの需要はますます高まっており、特に米国のGAFAMをはじめとするCSP(Cloud Solution Provider)からの需要は強い。需要が供給を上回っている状態だ。特にAIチップの出荷数量は、2023年の581万個から2024年には1069万個に、さらに2025年は1525万個になるとTrendForceの半導体調査部門の調査実務センターのFrank Kung氏(図1)は見ており、そのうちのNvidiaの2025年の市場シェアは53.6%、AMDがFPGAも含め7%、Intelが1.5%その他CSPなどの37.8%となっている。

AIチップを搭載したAIサーバに使われている半導体デバイス(GPU、ASICなど、FPGA)から見るとGPUが圧倒的に多く、2023年の72.2%から2025年には75.3%に増えると見ている(図2)。AI専用のASICなどは2023年に24.3%だったが、25年でも21.4%とむしろ減少気味である。


Projected Shipment on AI Servers adopted with Various Chips between 2023 and 2025F / TrendForce

図2 AIサーバに向けて出荷される半導体デバイスの種類 出典:TrendForce


AIチップのサプライヤ別の2025年AIサーバ市場シェアでは、Nvidiaが69.6%、FPGAを含むAMD、Intelはそれぞれ8.0%、1.7%、その他CSPなどは20.7%となっている(図3)。


Distribution of AI Server Shipments by Major AI Chip Supplier, 2023 - 2025F / TrendForce

図3 AIサーバ向けAIチップの企業別市場シェア 出典:TrendForce


2023年からNvidiaのシェアが徐々に上がっているのは、常にGPUの新製品を出しているからであり、25年にはBlackwell GPUは他のサプライヤよりも伸び率が大きいという。GPUのAIサーバに限ればNvidiaのシェアは90%を超えている。「Nvidiaの強さはやはり、CUDAソフトウエアを含め総合力だろう」、とKung氏も見ている。同時にNvidiaの新製品への対応スピードは速く、NvidiaのGPUは昨年4%しかなかったBlackwellが25年には82%にもなると見ている。

ただ、AIサーバのカスタマ別のシェアでは、ビッグ8のハイパーCSP(Microsoft、AWS、Google、Meta、BBAT(Baidu、ByteDance、Alibaba、Tencent))は2024年から25年にかけてシェアを56%から50%にシェアを落としている(図4)。特に伸ばしているのはその他で、30%から35%へ伸びている。これは、ビッグ8以外のデータセンターや各国のデータセンター、さらに各国のスーパーコンピュータ計画などを表しており、ビッグ8だけの需要ではない。


CSPs Will Still Represent the Largest Group of Customers for High-end AI Servers by 2025 / TrendForce

図4 AIサーバの顧客は多様化し始めている 出典:TrendForce


Nvidiaのジェンスン・フアンCEOが「半導体の微細化はほぼ止まってしまったが、コンピューティングパワーをもっと上げて欲しいという要求はますます増えている」と述べているが、半導体でコンピューティングパワーを増やすためには、3つの方法がある。
1) GPUを多数並列動作させる
2) 先端パッケージで集積度を数倍に上げる
3) 半導体チップを極限まで拡大し集積度を上げる

今すぐできる方法としてNvidiaはまず1)の方法をとってきた。さらにCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)と呼ぶ方法で先端パッケージにGPUダイを2個搭載し接続している。TSMCはCoWos技術を全ての半導体メーカーに提供しているが、CoWos技術を使う半導体メーカーの中でもNvidiaの占める割合は、2024年の46%から2025年には64%に伸びるとTrendForceは見ている。

CoWoSの先の技術として、ウェーハ1枚に目一杯広げられる巨大なチップ、すなわちWafer Scale IntegrationをNvidiaは想定している。そのための技術をTSMCと組んで開発中だ。

参考資料
1. 津田建二、「エヌビディア―半導体の覇者が作り出す2040年の世界」、PHP研究所発行、(2024/10/04)

(2025/05/16)
ご意見・ご感想