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Gartnerは20年の半導体市場をなぜ0.9%減と見たか

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Gartnerは2020年の半導体デバイス市場の予測を新型コロナウイルス感染の影響を含めて、前年比0.9%減の4154億ドルと見積もった。前回2月は3月末で収束としていた予想を、今回は長く続くとして見積もり直した。

表1 Gartnerの 新型コロナウイルスの影響を含めた2020年世界半導体市場最新予想
出典:Garnerの数字をセミコンポータルが表に加工

表1 Gartnerの 新型コロナウイルスの影響を含めた2020年世界半導体市場最新予想 出典:Garnerの数字をセミコンポータルが表に加工


新型コロナウイルスが世界中にパンデミックを引き起こしている現状では、見積もりを立てることは難しいが、現時点で見えることと見えないことを整理してGartnerは見積もり直した。これによると、ほぼ2019年並みの市場規模に留まるようだ。

実は半導体産業は現在、世界中で稼働がほぼ続いている。SIAとSEMIが半導体を「なくてはならない産業(Essential Business)」と認定しており、このような状況でも稼働を止めなくてもよくなっているからだ。日本でも経済産業省がこれを認定した。

今回の予想では、自動車を始め各分野での見積もりを積み上げることで予測を求めた。例えば自動車では、北米の自動車工場は米国のGMやFordだけではなく、BMWやVolkswagen、Mercedesなど欧州メーカー、日本のトヨタやホンダの北米工場も稼働が止まっているため、自動車用半導体メーカーにとっては大きな痛手となっている。一方で、パソコンやデータセンター向けのサーバー用のMPUやメモリ(DRAM)は需要が戻ってきた。半導体市場はまだら模様だ。これを表2のようにGartnerは見積もっている。


表2 Gartnerが見積もる半導体ユーザーの分野

表2 Gartnerが見積もる半導体ユーザーの分野


表2からいえることは、世界的に自動車市場が冷え込んでおり、それに伴い自動車製造に使う産業機器や産業ロボットなどが冷え込んでいる。4月9日に日本工作機械工業会が発表した3月の受注額は前年同月比40.8%減の773億円と大きく落ち込んでいる。工作機械は産業機械を作るための機械で、Mother machine(母なる機械)とも呼ばれている。半導体製造装置やサブシステムの機械部分は工作機械が特注品として切り出す。工作機械の受注額が減っているということは、生産ラインの機械の需要が減っているという意味であり、半導体デバイスや民生機器などの市場の先行指標となる。

日本のモノづくりは、自動車メーカーがOEMとして頂点にあり、さらにティア1、ティア2へと降りていく。最終的に工作機械にたどり着く。自動車市場が冷え込むと産業機器市場も冷え込む傾向が強い。

ところが、パソコンやサーバーなどのコンピュータは、2019年の終わりからDRAM単価がようやく下がってきたため、メモリ搭載量を増やし始めている。メモリ搭載量が多ければ多いほどコンピュータの性能は上がるが、価格も上がってしまう。昨年末からDRAM価格が下がり、コンピュータの価格もリーゾナブルになってきたため需要が立ち上がり始めている。サーバーはクラウド需要に強く依存する。クラウドを支えるデータセンターではCPUもDRAMも大量に使い、仮想化技術で全体を動かしているため、CPUもメモリもコストが許す限り大量に使う。価格が下がったことでメモリを増設しシステムの性能を上げられるようになった。

ストレージが33%も増えるのは、これも価格が十分に下がってSSDの需要が立ち上がり、クラウドにもパソコンにも大量に使われるようになると見ているからだ。アクセス速度がHDDよりもはるかに速いため、一度SSDを体験したユーザーはHDDには戻れない。ただし、コスト的に安いHDDでもNANDフラッシュをキャッシュとして使いメインを物理ディスクに保存する、という使い方でもかなりの速度が得られる。NANDフラッシュはSSDが市場の8割とGartnerはみている。すなわち、SSD化が進めば進むほどNANDフラッシュの需要は増えていく。ただし、ストレージデバイスを大量に使う用途では、バイトコストの安いHDDは魅力的であり、めったにアクセスしない用途では大量にHDDが使われる。HDDとSSDとの中間的な性能が求められる用途で、アクセスが比較的頻繁でもコストを減らしたい場合は、NANDフラッシュをキャッシュメモリ的に使うHDDが安くて速いストレージとして使われることになる。

参考資料
1. Forecasts Worldwide Semiconductor Revenue to Decline 0.9% in 2020 Due to Coronavirus Impact (2020/04/09)
2. コロナウィルスによる半導体市場への影響をGartnerが見積もる (2020/0226)

(2020/04/14)

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