Qualcomm、東京エレクトロンの決算から見えてくる今後の動向
スマートフォン市場のこれからを見込むQualcommの決算、AI市場に向けた製造装置を作る東京エレクトロンの決算がそれぞれ発表された。また、メモリの価格低下に関して、日本経済新聞は下がる、日刊工業新聞はNANDフラッシュが上がる、という逆の見通しを報道している。米トランプ政権の関税アップ、研究者削減に対して、中国からインドへのシフト、欧州での研究者獲得、という動きが目立っている。
Qualcommの2025年1〜3月期における売上額は、GAAP(米国会計基準)ベースで前年同期比(YoY)15%増の109.8億ドル、純利益は28.12億ドル(利益率25.6%)、Non-GAAPベースでの売上額はYoYで15%増の108.36億ドル、純利益は31.72億ドル(利益率29.3%)となった。Non-GAAP(半導体企業の実情に合わせた会計基準)での部門別売り上げでは、ファブレス半導体のQCT部門が94.69億ドル、ライセンス提供部門は13.19億ドルとなった。さらにQCT部門では、ハンドセット分野(携帯・スマホ)はYoY12%増の69.29億ドル、車載分野が同59%増の9.59億ドル、IoT分野が同27%増の15.81億ドルとなった。

図1 Qualcommは伸びないスマホ向けでも12%成長させた 出典:Qualcomm Corp.
携帯分野が12%増という伸びは、2024年スマホの世界出荷台数の6.2%増(12.4億台)よりも高い。スマホは自動車産業同様、出荷台数は飽和したものの、内部に使う半導体の販売額は大きくなっている。つまりスマホが飽和してもスマホ向け半導体は伸び続けるという様相を表すようになってきた。スマホの機能は上がり続けるものの、新規製品の販売台数はそれほど伸びない。スマホは伸びなかったが、QualcommはAIスマホ対応の5Gチップ(図1)を開発したことで伸びた。新規スマホの出荷台数が飽和しても新しいチップを開発している限り、販売額は飽和しないだろうと言えそうだ。
製造装置の東京エレクトロンの発表も4月30日にあり、5月1日の新聞に表れたものの1〜3月決算の内容が薄い。1〜3月期における同社の売上額はYoYで19.8%増の6554億円となった。営業利益は同利益率28%の1837億円となった。海外売上比率は92%と高まったものの、中国向けの輸出は前四半期の42.7%から34.3%へと落とした。むしろ、韓国が前四半期の17.5%から22.4%、台湾は同18.3%から20.7%へと稼いだ。2024年4月〜25年3月期では売上額はYoYで32.8%成長、営業利益率28.7%となった。HBMなどDRAM向けとファウンドリ向けの製造装置が売れたとしている。NANDフラッシュは徐々に回復に向かっているという。
メモリ単価に関しては、日経はNANDフラッシュを搭載したSSDの価格として見ており、1〜3月期における大口取引価格は、TLCセル採用のNANDフラッシュを搭載したSSDの価格は29.9ドルとなりQoQで8%下がった。この中で調査会社TechInsightsの見方を紹介し、中国のYMTCがハイブリッドボンディング技術の成功で量産でSamsungを超えたという見通しを引用している。すでに267層の製品を市販している。
一方、日刊工業新聞は、NANDメモリの春が来たとして、「半導体大手のキオクシアホールディングス(HD)や米サンディスクが価格引き上げに動いている模様」、と5月7日に報じた。さらに台湾の調査会社TrendForceは、25年4〜6月期には前期比で最大5%上昇すると見る。複数の商社筋は「SanDiskはNANDフラッシュの価格を4〜6月期には数%値上げした」という。7〜9月期以降はさらプラス方向に伸びるとセミコンポータルが取材した複数の調査会社は見ている。
トランプ政権の関税政策の結果、AppleのTim Cook CEOは、「4〜6月に米国で販売するiPhoneの大半についてインドに生産を移管すると表明した。タブレット端末『iPad』やパソコン『Mac』、腕時計型端末『Apple Watch』についてはほとんどをベトナム製に切り替える」3日と日経が報じた。iPhoneの組立に関しては、インドでの生産委託を鴻海がインドのタタ・グループなどに要請しているという。
欧州ではEUのフォンデアライエン欧州委員長は5日、米国など域外の研究者を招くために5億ユーロ(約820億円)を投じる、と6日の日経が報じた。フランスのマクロン大統領は、4月中旬の演説では研究者の誘致のために「仏政府が1億ユーロを投じる」と表明したと日経は報じている。


