Nintendo Switch 2にNvidiaのレイトレーシング付き専用プロセッサを搭載
任天堂の新ゲーム機「Nintendo Switch 2」(図1)が6月5日に発売された。ここにNvidiaのカスタムプロセッサが搭載されている。TSMCの第2工場実現に思わぬ問題が出てきた。福岡県は半導体後工程の開発拠点に6724万円の予算を計上した。中国の技術レベルが上がっている。ファーウェイが5nmプロセスの半導体をパソコンに搭載しBYDが全工程の8割を自動化したという。
図1 6月5日に発売されたNintendo Switch 2 出典:任天堂、Nvidia
Nintendo Switch 2に搭載されたカスタムLSIには、CPUの他にGPU、専用のRT(Ray Tracing)コア、そしてAI用のTensor コアなどを集積している(参考資料1)。1000人・年という膨大な設計開発期間を要したこのチップだけではなく、API(application programming interface)や開発ツールも開発した。この結果、このゲーム機はテレビモードで4Kのゲーム、1080pの解像度で最大120フレーム/秒という性能を持つ。
GPUはグラフィックスできれいな絵を描くためのプロセッサであり、RTコアは、リアルタイムでレイトレーシングを演算するためのコア。この結果、まるで写真のような陰影をつけた絵を描くことができる。テンソルコアはDLSS(Deep Learning Super Sampling)と呼ぶAI技術を使い、画質を落とさず解像度を上げる技術。消費電力を上げずに処理する。
TSMCのC.C.Wei CEOは、同社の株主総会において、熊本県の第2工場の着工時期を25年1〜3月期から25年中に遅らせた理由について、交通渋滞への影響を避けるためだと説明した。総会で、「現地の交通状況を体験し、10〜15分で移動できる距離が今では1時間もかかる」と発言した。6月6日の日本経済新聞は、これに対して熊本県は、広域の道路整備や交差点の改良、右折レーンの増設といったハード面に加え、24年9月から県市合わせて4000人の職員が時差出勤やテレワークを始めたという。25年春には200社と組み「1万人のオフピーク通勤」と銘打った渋滞対策を県民運動として打ち出したばかりだ。今回の指摘で、道路インフラという古くて新しい問題が浮き彫りとなった。
福岡県は、今年度の一般会計予算案に半導体後工程の開発支援を盛り込んだ、と6月4日の日経地方版が報じた。3月に県知事選があったために予算案を改めて編成した。半導体産業の開発生産拠点化には6724万円を計上、糸島市にある「三次元半導体研究センター」と「社会システム実証センター」を統合し、「福岡超集積半導体ソリューションセンター」(仮称)を設置する。後工程の設計、試作から評価までワンストップで支援する体制を整える。センター長と技術アドバイザーに国内トップ級の研究者を招き、最先端機器を導入するほか、後工程を体系的に学べる実習講座も始める。人材育成費として別途641万円を充てたとしている。
8日の日経は、中国の自動車大手BYDが2025年1〜3月期におけるEV(電気自動車)の販売台数が500万台に達しTeslaを上回り世界トップになったと報じた。上海に近い江蘇省常州工場では8割弱が自動化されており、車体の骨格を造る溶接や板金の工程は95%自動化されているという。生産効率を上げるために自動化しており、ほとんど先進国の自動車ラインと同様だという。
中国のファーウェイは6日、ノートパソコン「MateBook Fold」を発売したが、5nmプロセスの半導体が使われているようだと7日の日経が報じた。独自OSも開発しており、これも初搭載だという。5nmプロセスはTSMCでは生産できないため、中国内のSMICなどが設計に合わせたプロセスを開発したのだろう。パソコンの販売価格は2万3999元(約48万円)からというから、5nmチップの価格はかなり高いと見るべきだろう。
参考資料
1. “Nintendo Switch 2 Leveled Up With NVIDIA AI-Powered DLSS and 4K Gaming”, Nvidia Blog, (2025/04/03)


