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追いつめられた中国ファーウェイはスマホ70%減!!〜SMICも厳しい状況に

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「これまで中国のファーウェイは何回ものクライシスを乗り越えてきた。米中貿易戦争は今に始まったわけではない。2014年段階で米国政府はファーウェイ製のルーターの利用を規制している。これに対抗し中国はWindows 8を政府調達から締め出した。しかし、今回の米国政府による新たな輸出規制は9月15日に発動され、これによりファーウェイは各国・地域からの半導体調達が事実上できなくなる。ついに、ついに追い詰められたと言ってよいだろう」。

筆者が親しくする証券アナリストが、ため息をつきながら、しかしかっと眼を見開いて語った言葉である。何しろ、今回の規制ではソフトウエアや製造装置・材料など半導体の開発製造にあたって米国の技術を全く使えないという驚きの仕打ちなのである。

情報筋によれば、ファーウェイの2021年のスマホ出荷台数は実に20年見込みの70%減にもなるという大打撃なのだ。2019年にはファーウェイのスマホ出荷は2億5000万台に急増し、直近ではアップルを抜き世界2位、早期にトップのサムスンを抜いてスマホの世界チャンピオンになると言われていたが、もうそれは夢物語と言ってよいのである。

そしてまた、サプライズの情報が飛び込んできた。中国SMICが米国規制にもとづき何と「ファーウェイに半導体を売らない」という方針を打ち出したのだ。SMICは世界の半導体ファンドリ市場5位のメーカーであり、現在14nmプロセスで同社最先端の半導体を量産している。SMICの売上高の20%はファーウェイとの取引が占めており、今回の白旗投降のもたらす意味は大きい。それすなわち、ファーウェイにしても、SMICにしても米国とのガチンコ勝負をすれば、確実に叩き潰されると思っていることの証拠なのである。

こうした状況下にあっても、中国政府は「中国製造2025」という政策をいまだ強烈に推し進めている。半導体産業については、またも3兆円強のファンドを組んで、あり得ない90%補助金を出しての設備投資巨大化を図っている。ところが、米国政府も負けてはいない。中国とほぼ同水準の3兆円を投入して米国企業を守ろうとしているが、これはさらに大規模化する可能性が出てきた。驚くなかれ、米国半導体工業会(SIA)は「半導体工場の海外移転を止めるためには、米国政府は5兆2500億円の奨励金を出す必要がある」と主張し始めたのだ。

さて、8月の日本製半導体製造装置の販売額は前年同月比17.3%増の1884億円に跳ね上がった。もちろん、半導体の国産化を進める中国半導体メーカーの設備投資が最大のけん引役であった。日本の装置メーカーにとっては、ウハウハの万歳三唱というところであろうが、ことはそう甘くはない。米国政府が米国の技術を使う国外メーカーの中国への半導体供給を事実上全面禁止したということは、ファーウェイに大量供給しているソニーのCMOSイメージセンサなども含まれるからである。このため、ソニーは2020年度の半導体生産の下方修正に追い込まれている。はてさて、どうしたものであろうか。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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