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政府、半導体徹底強化で10兆円ファンド!〜先端ナノ工場、新増設を支援

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ようやく、日本政府も重かった腰を上げ始めたようだ。岸田首相はここにきて、半導体の研究開発に取り組む研究機関や企業幹部との意見交換に力を入れている。要するに、彼の提唱する「新しい資本主義」なるものに半導体の大型新戦略を盛り込もうというわけだ。

経済産業省ベースでは、とにもかくにも半導体強化あるのみ!とのアナウンスはこれまでもされていた。しかし具体的な実行プランや積極的な資金投入のことについては結構口が重かったのだ。

ところが、である。政府自民党内の半導体支援議員連盟の間では、はっきりとひとつの認識がされ始めた。それは、国内における半導体工場の新増設、海外の企業の国内誘致、そして先端ナノプロセスの国内開発拠点/製造拠点の設置等について、基本的には10兆円の基本ファンドが必要であることを、公式議事録にテイクノートしたのだ。

いやはやこれは額面通りに受け取れば大変なことである。米国のバイデン政権が、米国内に建設される半導体工場について5.7兆円の支援金バラまきを決めているが、あろうことか、日本政府はこれを上回る10兆円投入を内定したことになる。中国政府も不動産バブルがはじけ、経済後退している中にあって、当面は半導体支援に5兆円投入を断行するようだが、これをも、日本の金額は上回る。

もっとも、この10兆円をどのくらいの期間内にやるのかが問題である。10年かけてやるのなら、年間1兆円程度であり、それは大した事ではない。もっと短い期間にやるのであれば、これは素晴らしい。「画期的」と称賛しても良いだろう。

すでに、台湾のTSMCの熊本新工場の投資約1兆円に対しては、ほぼ50%の約5000億円の補助金を出すことになっており、これが第一弾であろう。この後には広島マイクロンの1兆円以上投入のメモリ新工場、キオクシアの北上、四日市の新棟には2兆円以上、そしてソニーのCMOSイメージセンサの大型増強には1兆円以上が予想されている。ここにも50%補助金が投入されれば、半導体景気が日本経済を大きく引っ張っていくことになるだろう。

加えて、日本政府は米国政府との話し合いの中で、次世代の先端のプロセス(2nm以下)の設計、量産プロセス開発に共同で取り組むことを決めたようだ。場合によっては2025年をメドに最先端のナノの次世代半導体を量産する巨大工場を日本国内で建設することもある、と言うのであるからしてただごとではない。

ついに「ヤマは動いた」という感がある。半導体は今や世界の安全保障、サプライチェーン、軍事防衛、そして政治経済を動かす最重要産業になった、と日本政府は明確に認識し始めたのだ。

先ごろ、TSMC進出で沸き返る熊本県下を視察したが、この経済効果はなんと1.7兆円もあると試算されている。熊本の県としてのGDPは6兆円くらいであるからして、まさに天空から黄金の雨が降ってきたようなものである。そしてまた、熊本県下では3〜4カ所、トータル80万m2の新たな工業団地の造成が計画されているといわれ、受け皿つくりに邁進している。

こんな熊本の様子を福岡県の幹部に話したところ、笑いながらこう言われてしまった。「わが福岡県でも半導体および関連企業の誘致には決して手を抜くつもりはない。全力を上げて、トータル100万m2の新たな工業団地の設置を断行していくつもりだ!」

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉

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