AIインパクトの週:ノーベル賞、TSMCとSamsung業績対比、新AI半導体
平和賞が我が国に、と週後半の発表、そして前半には人工知能(AI)関連で物理学賞および化学賞と、ノーベル賞の話題もちきりの感じ方である。AI分野が大きく目立って引っ張る現下の半導体市場ということで、AIインパクトに注目させられる1週間でもある。業績発表関連で、Samsungが示した直近四半期のガイダンスは増収増益ではあるものの、AI向けメモリ半導体が遅れ気味の状況で、経営陣が謝罪をあらわしている。対して、TSMCは9月もその月最高の販売高を記録、AI関連需要が引っ張って本年1月からずっとその月最高を更新している。Nvidia対抗を狙って、新しいAI半導体が、AMDはじめ打ち上げられている。当面、AIを軸にした各社製品発表&競合に注目である。
≪一方ではAIのリスクの指摘≫
ノーベル賞関連の内容が、日経記事から次の通りである。
◇「AIの父」ノーベル賞 陰の主役は弟子とNVIDIA (10月9日付け 日経 電子版 07:26)
→カナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン名誉教授がノーベル物理学賞を受賞する。ヒントン氏の2012年の研究成果は世界を驚かせ、米エヌビディアの半導体で大量のデータを学習するAI開発の潮流をつくった。「AIの父」の功績の裏には、米オープンAI元幹部ら弟子たちの存在がある。
AIのリスクへの対応を呼びかける物理学賞受賞のヒントン氏である。
◇ノーベル賞ヒントン氏「AIが賢くなると支配権握る」 (10月9日付け 日経 電子版 10:12)
→2024年のノーベル物理学賞を受賞することが決まったカナダのトロント大のジェフリー・ヒントン名誉教授は8日(日本時間9日朝)、オンラインで記者会見を開いた。AIのリスクを念頭に「政府は開発企業に対して、安全対策に必要な計算設備を持つよう義務付けてほしい」と話した。
◇科学の発展、AIが加速 ノーベル物理学・化学で連続受賞 (10月9日付け 日経 電子版 20:45)
→8日に発表されたノーベル物理学賞に続き、AIに関わる研究が化学賞の授賞の対象になった。AIが科学の発展を加速し、車の自動運転技術の開発や創薬などを通じて人々の生活を大きく変える可能性が評価された。
◇ノーベル化学賞ハサビス氏「AI 科学発展の究極手段」 創薬10年→数カ月に短縮も (10月11日付け 日経)
→2024年のノーベル化学賞を受賞することが決まった米グーグルのAI開発部門、Google DeepMindのデミス・ハサビス氏とジョン・ジャンパー氏が9日、オンライン会見を開いた。AIが科学の発見を加速させる究極のツールになる可能性があると指摘した。
ハサビス氏は囲碁AI「アルファ碁」で有名になった旧ディープマインドの共同創業者だ。グーグルが2014年に推定約$500 million(約750億円)で同社を買収し、現在ハサビス氏はグーグルディープマインドの最高経営責任者(CEO)を務める。
核兵器絶滅を改めて世界に訴える平和賞である。
◇ノーベル平和賞に日本被団協 「核なき世界実現へ努力」 (10月11日付け 日経 電子版 18:43)
→ノルウェーのノーベル賞委員会は11日、2024年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に授与すると発表した。被団協は広島と長崎の被爆者の全国組織で、原爆投下の11年後の1956年に結成された。核兵器の非人道性を広めるための草の根運動が評価された。
日本のノーベル平和賞受賞は1974年の佐藤栄作元首相以来、50年ぶりだ。
半導体市場においても、AIインパクトが感じられたが、まずは、Samsungの業績ガイダンス発表関連である。AI関連需要が大きく引っ張る市況の中、AI向け高帯域幅メモリ(HBM)半導体について同社の遅れが取り沙汰される経緯での今回の発表である。事業再編、組織総点検など、今後に向けた対応も見られる以下の内容である。
◇Samsung chairman debunks foundry, chip biz spinoff rumors―Chairman: Samsung has no plans to spin off foundry, chip units ―But not hard to believe of business units with over $2 billion in operating losses in 2023 (10月7日付け The Register (UK))
→サムスンは、需要の低迷と損失の拡大が報告されているにもかかわらず、ファウンドリー事業やチップ設計事業を分離する計画はないと述べている。「われわれは事業の成長に貪欲であり、分社化には興味がない」とサムスン電子のジェイ・Y・リー会長はロイターのインタビューに対して述べた。
李会長のコメントは、Business Koreaが閲覧した最近のサムスン証券の報告書と矛盾するもので、世界第2位の規模を誇るファウンドリー部門を分離し、米国に上場することを示唆していた。
ライバルの韓国・SK HynixがHBMで先行している現状がある。
◇Samsung Makes Rare Apology After Results Sag Despite AI Boom (10月7日付け BNN Bloomberg (Canada))
→サムスン電子は、かつて圧倒的な強さを誇ったメモリー・チップの巨人の同社が道を踏み外し、潜在的な危機に直面していることを認め、投資家たちに謝罪した。
中核半導体事業の責任者に新たに任命されたジュン・ヨンヒョン氏は、サムスンが予想を下回る収益と利益を開示した後に発表した異例の率直な声明で、組織の総点検を約束した。別の提出書類では、韓国最大手の企業が、エヌビディア社のAI訓練用プロセッサーに使用される重要なタイプのチップの納期遅れを告白し、SKハイニックス社がいわゆる広帯域メモリー(HBM)分野を独占できるようにした、としている。
SK Hynixに営業利益で抜かれる可能性もあらわされている。
◇SK hynix poised to outpace Samsung in Q3 chip earnings―Performance attributed to growth in AI-specific HBM chips (10月7日付け The Korea Times)
→韓国の主要チップメーカー2社が今年第3四半期の業績発表を控えている中、半導体業界ではSKハイニックスの営業利益がサムスン電子を上回るのではないかとの見込みが高まっている。
SKハイニックスとサムスン電子はそれぞれ今月末までに第3四半期の業績を発表する。サムスンは確定数値の発表に先立ち、火曜8日に業績ガイダンスを発表する。
以下、Samsungの今回の業績ガイダンスの内容である。
◇Samsung issues lengthy apology after disappointing profit guidance − read the full statement (10月7日付け CNBC)
→*火曜8日に発表されたガイダンスで、大手メモリー・チップ・メーカー、Samsungは、9月締め四半期の営業利益が約9兆1000億ウォンで、LSEGの予想を下回ると見通した。
*LSEGが調査したアナリストらは、9月30日に終了する四半期の営業利益は11兆4560億ウォン($7.7 billion)と予想していた。
◇Samsung's profit recovery seen weakening in Q3 (10月7日付け Reuters)
→サムスン電子は火曜8日、チップ需要の改善により四半期利益が4倍以上に跳ね上がる見込みだが、AIブームの波に乗り遅れ、回復のペースは弱まっている。
メモリー・チップ、スマートフォンおよびテレビの世界トップ・メーカーであるサムスンの営業利益は、9月30日に終了した四半期で10兆3300億ウォン($7.67 billion)になりそうだ。
◇(3rd LD) Samsung's Q3 profit misses expectations on lackluster performance in AI chips (10月8日付け Yonhap News Agency)
→サムスン電子は火曜8日、第3四半期の営業利益が前年同期比3倍近くに増加すると予想したが、AIコンピューティングに使用されるハイエンド・メモリー・チップの業績が振るわなかったため、市場予想には届かなかったと発表した。
世界最大のメモリー・チップ・メーカーであるサムスン電子は、第3四半期の営業利益が前年同期比274.5%増の9兆1000億ウォン($6.8 billion)になると予想した。
◇Samsung Electronics' Q3 earnings fall below market expectations―Samsung's Q3 profit misses estimates amid weak demand (10月8日付け The Korea Times (Seoul))
→サムスン電子は、第3四半期の営業利益を$6.76 billionと予想したが、チップ需要の低迷と一時的なコストにより、市場予想を下回った。半導体を含むデバイス・ソリューション部門が業績不振の大きな要因となっている。LGエレクトロニクスも、マーケティング費用と出荷費用の増加を理由に、第3四半期の営業利益が予想を下回ると予測している。
増収増益ではあるものの期待に届かず、AI半導体の開発遅れが合わせて問われている。
◇サムスン、増収も採算悪化に危機感 半導体トップ謝罪 (10月8日付け 日経 電子版 17:05)
→韓国サムスン電子が8日に2024年7〜9月期の連結決算速報値を発表し、3四半期連続で増収増益だった。ただ採算は4〜6月期に比べ悪化している。業績は市場の期待に届かず、足元の株価は年初来で約2割安い。半導体の先端品の開発が遅れ、競合との差を埋められないでいる。
◇Samsung to cut chip executive jobs, restructure in battle versus SK Hynix―Samsung to restructure chip division, sources say―Jun Young-hyun is expected to replace the three key posts of memory, foundry and System LSI as well as its CTO (10月9日付け The Korea Economic Daily (South Korea))
→情報筋によると、サムスン電子は、SKハイニックスとマイクロン・テクノロジーからの競争圧力の中、半導体事業の再編と幹部職の削減を計画している。ジュン・ヨンヒョン副会長が主導するリストラは、メモリー、ファウンドリーおよびシステム大規模集積部門の大幅な再編を含み、広帯域メモリー(HMB)やその他の分野での競争力低下に対処するものと見られる。
◇サムスン、楽観なき増益 AI半導体の開発遅れ 7〜9月、投資家失望で株価低迷 事業トップが謝罪 (10月9日付け 日経)
→韓国サムスン電子が8日に2024年7〜9月期の連結決算速報値を発表し、3四半期連続で増収増益だった。ただ採算は4〜6月期に比べ悪化している。業績は市場の期待に届かず、足元の株価は年初来で約2割安い。半導体の先端品の開発が遅れ、競合との差を埋められないでいる。
一方、AI分野向け対応で好調なTSMCの業績発表が、以下の通りである。
販売高過去最高と、Samsungとは対照的なトーンのあらわし方となっている。
◇TSMC’s Sales Beat Estimates in Good Sign for AI Chip Demand―TSMC's revenue rose 39%, beating expectations (10月9日付け BNN Bloomberg (Canada))
→TSMCは、四半期収益が39%増の$23.6 billionとなり、予想を上回って、AIハードウェア支出の減速懸念が緩和されたと発表した。NvidiaとAppleからの需要に牽引された好調な業績は、AI開発におけるTSMCの役割を浮き彫りにしている。
◇TSMC売上高39.6%増 9月の最高更新 生成AI向け好調 (10月10日付け 日経)
→半導体世界大手のTSMCが9日発表した9月の売上高(速報値)は、前年同月比39.6%増の2518億台湾ドル(約1兆1600億円)だった。生成AI(人工知能)関連のサーバーや米アップルのiPhone向けに先端半導体の販売が好調で、9月としての過去最高を更新した。
TSMCの売上高は2024年1月に前年同月比プラスに転じて以降、その月としての過去最高の更新が続く。
◇TSMC quarterly sales beat estimates―TECH JUGGERNAUT: TSMC shares have more than doubled since ChatGPT’s launch in late 2022, as demand for cutting-edge artificial intelligence chips remains high (10月10日付け Taipei Times)
→TSMCは昨日、四半期売上高が予想を上回る39%増となり、AIハードウェアへの支出が先細りし始めているとの懸念を払拭した。
Nvidia CorpとApple Incの主要チップメーカーであるTSMCの第3四半期売上高は7,596億9,000万台湾ドル($23.6 billion)で、アナリスト予想平均の7,480億台湾ドルと比較された。
次に、新しいAI分野向け半導体について、各社の発表が続いている。
◇BrainChip unveils AI NPU that consumes less than a milliwatt―BrainChip's Akida Pico NPU offers ultra-low-power AI solutions ―Low-power AI for low-power devices. (10月4日付け Tom's Hardware)
→BrainChip社は、補聴器、ノイズキャンセリングイヤホン、および医療機器など、バッテリー駆動の小型インテリジェント機器のAIアクセラレータとして使用できる超低消費電力(1ミリワット未満)のニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)「Akida Pico」を発表した。Akida Pico NPUは、独立したチップとして実装することも、既存の設計に組み込むことも行える。
AI分野を引っ張るNvidiaに注目する中、当面は次期のflagship品、Blackwellチップの動向である。
◇Foxconn to build Taiwan’s fastest AI supercomputer with Nvidia Blackwell―Foxconn, Nvidia plan to build Taiwan's fastest AI supercomputer (10月7日付け VentureBeat)
→NvidiaとFoxconnは、Nvidia Blackwellチップを使用した台湾最大のスーパーコンピュータを構築している。
火曜8日開催のHon Hai Tech Dayで明らかにされるプロジェクト「Hon Hai Kaohsiung Super Computing Center」は、NvidiaのBlackwell GPUアーキテクチャを中心に構築され、合計64ラック、4,608個のTensor Core GPUsを搭載したGB200 NVL72プラットフォームを採用する。
米国の制裁を受ける中国では、国内完結&自立化を模索する動きである。
◇Tech war: China advocates use of local AI chips over those from US powerhouse Nvidia―AI chip users on the mainland have been informally advised to prioritise local alternatives, including those from Huawei, sources say (10月7日付け South China Morning Post)
→この問題に詳しい2人の情報筋によると、中国当局は地元企業に対し、エヌビディア製よりも国産のAIチップを使うよう非公式に助言しており、中国本土の代替サプライヤーは、この米国の巨大ハイテク企業に追いつこうとしている。
◇ファーウェイ、AI半導体の新製品 「サンプル出荷」と香港紙報道、エヌビディアの代替需要 (10月8日付け 日経)
→中国通信機器大手の華為技術が、近くAI半導体の新製品を投入する見通しだ。AI半導体は米エヌビディアが市場を独占しているが、米政府による輸出規制で中国には性能の劣る製品しか入らなくなっている。代替を求める需要があるとみている。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは9月29日、ファーウェイが中国の大手サーバー企業に新製品「アセンド910C」のサンプル出荷を始めたと報じた。現行品「910B」の性能を高めた製品という。
Nvidiaに対抗して、AMDが新しいAI半導体を発表、以下の通りである。
◇AMD sees next AI chip in mass production later this year―AMD is expected to unveil AI processors (10月10日付け Reuters)
→アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、本日開催されるイベントで、NvidiaのBlackwellアーキテクチャに対抗することを目的としたMI325XやMI350シリーズなど、最新のAIプロセッサなどのチップを発表する見込み。AMDは需要の高さから2024年のAIチップ予測を$4.5 billionに引き上げたが、今回の発表がNvidiaのデータセンター売上げに影響を与えることはなさそう。
◇AMD targets Nvidia H200 with 256GB MI325X AI chips, zippier MI355X due in H2 2025―AMD debuts MI325X AI accelerators with 256GB of HBM3e―Less VRAM than promised, but still gobs more than Hopper (10月10日付け The Register (UK))
→アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、256GBのHBM3eと6TB/秒のメモリ帯域幅を特徴とするAIアクセラレータ「Instinct MI325X」を発表した。第4四半期に量産出荷されるMI325Xは、推論性能でNvidiaのH200を20%から40%リードしている。
◇AMD launches AI chip to rival Nvidia’s Blackwell (10月10日付け CNBC)
→*AMDは木曜10日、GPUsとして知られるNvidiaのデータセンター・グラフィックス・プロセッサを直接狙う新しいAIチップを発表した。
*Instinct MI325Xは、来年初めに大量出荷が開始される予定のNvidiaのBlackwellチップと競合することになる。
*AMDのAIチップが開発者やクラウド大手からNvidiaの製品に近い代替品と見なされれば、Nvidiaに価格圧力がかかる可能性がある。
◇AMD sees next AI chip in mass production later this year (10月11日付け Reuters)
→*AMDのAIチップ「MI325X」、2024年第4四半期に量産開始へ
*性能を向上させた次世代チップMI350シリーズを2025年下半期にリリースへ
*Zen 5アーキテクチャに基づく新しいサーバーおよびPC用チップを発表
*株価は5%近く下落
◇AMD、新AI半導体を年内投入 NVIDIA対抗も株価は下落 (10月11日付け 日経 電子版 06:20)
→米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は10日、AI半導体の新製品「MI325X」を2024年内に投入すると発表した。
米エヌビディア製の先端品に代わる製品を投入することで、先端AI半導体の価格高騰を抑える効果が生まれる可能性がある。
AMDのリサ・スー最高経営責任者(CEO)が米サンフランシスコで開いた新製品発表会で明らかにした。
立て直しを図るインテルのAI関連の取り組みである。
◇Intel’s new flagship CPUs will run cooler and more efficiently for PC gaming―Intel's Core Ultra 200S CPUs focus on efficiency, AI/ The Core Ultra 200S series arrive on October 24th, with a focus on performance per watt and a built-in NPU. (10月10日付け The Verge)
→インテルは、前世代の熱と消費電力の問題に対処するため、ワットあたりの性能に焦点を当てたコア・ウルトラ200Sシリーズ・プロセッサーを発表する。このArrow Lake Sプロセッサーは、AIタスク用のニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)を搭載し、ゲーム時の省電力性を実証する。
AI関連の動向、そして半導体市場の全体的な今後の推移に、引き続き注目せざるを得ない現時点である。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□10月8日(火)
金利高、中東情勢など下げ要因の一方、Nvidiaなどハイテク株が上げて、週半ばと週末に最高値更新となった今週の米国株式市場である。
◇NYダウ反落し398ドル安 金利高と中東情勢の悪化懸念で (日経 電子版 06:34)
→7日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前週末比398ドル51セント(0.9%)安の4万1954ドル24セントで終えた。米長期金利が2カ月ぶりに4%台まで上昇し、投資家の株売りを誘った。中東情勢の緊迫による原油価格の一段高も株式相場の重荷となった。
□10月9日(水)
米国南部のハリケーン直撃の被害関連が、以下続いている。
◇ハリケーン猛威、米南部の産業集積脅かす 供給網寸断も (日経 電子版 05:19)
→大型ハリケーンの「ミルトン」が9日にも米フロリダ州に上陸する見通しだ。米南部ではわずか2週間前にハリケーン「へリーン」が直撃し、200人以上の死者を出したばかり。税負担が軽く人材にも恵まれた同地域への移転を進めてきた自動車などの産業は、気候変動による大規模災害の多発というリスクに直面している。
ハリケーンの数と激しさは年を追うごとに増しており、災害関連の被害も拡大している。
◇Hurricane Milton Might Distort Economic Data. GDP Could Take a Hit.―Hurricanes to have widespread economic impact (Barron's)
→ハリケーン「ミルトン」と「ヘリーン」は、米国、特にフロリダのビッグベンドやノースカロライナの既被害地域に上陸するため、10月の雇用統計やGDP成長率など、今後の経済データを大きく歪める可能性がある。連続するハリケーンは労働市場や個人消費を混乱させ、食料品やエネルギー価格を上昇させることが予想され、米国経済に一時的な影響を与える可能性がある。
◇NYダウ反発126ドル高 ハイテク株高支え、NVIDIA4%高 (日経 電子版 05:58)
→8日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比126ドル13セント(0.3%)高の4万2080ドル37セントで終えた。前日まで株売り要因として意識されていた原油高がこの日は一服し、米経済の軟着陸期待からテック株を中心に買いが広がった。
個別銘柄では米半導体大手のインテル、ダウ平均には採用されていないがエヌビディアがそれぞれ4%高と大きく上昇した。
□10月10日(木)
ドイツ経済が2年連続、マイナス成長となっている。
◇ドイツ、2年連続でマイナス成長へ 「欧州の病人」再び (日経 電子版 03:24)
→ドイツ政府は9日公表した秋の経済見通しで、2024年の実質成長率をマイナス0.2%と4月時点のプラス0.3%から下方修正した。マイナス成長は2年連続になる。個人消費の戻りが鈍く、設備投資や生産も冷え込む。ロシアの安価なエネルギーと中国市場の拡大に頼った成長が限界を迎え、構造的な経済不振の様相が強まってきた。
◇NYダウ最高値、431ドル高 景気敏感とテック株けん引 (日経 電子版 07:21)
→9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸した。前日比431ドル63セント(1%)高の4万2512ドルで終え、史上最高値を更新した。米経済の「軟着陸」期待が高まり、出遅れてきた景気敏感株に買いが向かった。テック銘柄に長期資金が流入しているとの声も上がる。
□10月11日(金)
◇NYダウ反落、57ドル安 予想上回る消費者物価に懸念 (日経 電子版 06:04)
→10日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反落し、前日比57ドル88セント(0.13%)安の4万2454ドル12セントで終えた。同日発表の物価指標が市場予想を上回った一方、雇用指標は想定以上に弱かった。景気敏感株の一角などに利益確定や持ち高調整の売りが出た。米景気の底堅さから株高が続くとの期待感は相場を支え、下げ幅は限定的だった。
◇米ハリケーン猛威再び、停電300万件 球場の屋根崩壊 (日経 電子版 09:29)
→米南部フロリダ州に9日夜に上陸した大型ハリケーン「ミルトン」の影響で、同州では少なくとも16人が死亡し、停電も300万件に上った。メジャー球団レイズが本拠地とするドーム球場の屋根は強風で崩壊した。相次ぐハリケーンの襲来で経済への打撃も顕著になっている。
□10月12日(土)
◇NYダウ、反発し409ドル高 金融株高く最高値を更新 (日経 電子版 07:04)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発した。前日比409ドル74セント(1%)高の4万2863ドル86セントで終え、2日ぶりに最高値を更新した。同日発表の大手金融機関の決算が市場予想を上回る内容だったことを受け、金融株を中心に買いが広がった。
◇米ハリケーンでデマ続出 陰謀論など、大統領選前に拡散 (日経 電子版 07:29)
→米南部を相次ぎ襲った大型ハリケーン「ミルトン」や「へリーン」を巡るデマがSNS(交流サイト)で続出している。AIで作成した被災地の偽写真などが拡散しているほか、被災地にまったく政府支援が届いていないとする主張も流れている。
≪市場実態PickUp≫
【Nvidia関連】
AIブームを引っ張るAI半導体の立役者、Nvidiaについて、以下現下の動きである。生成AI向け次世代半導体、Blackwellは、上記に示している。
◇Jensen Huang is now worth more than Intel ― personal net worth currently valued at $109B vs. Intel's $96B market cap―Nvidia CEO Jensen Huang's net worth surpasses Intel's market cap ―If he decided to buy Team Blue, Huang would still have $13 billion in change. (10月6日付け Tom's Hardware)
→エヌビディアのジェンセン・フアンCEOの現在のnet worthは$109.2 billionとされており、8月に財務上の問題が公表され株価が急落したインテルに大きく水をあけている。このニュースは、様々なソーシャルメディアユーザーが投稿を共有するまでになった。
◇Nvidia makes 7 tech announcements in Washington D.C.―Nvidia partners with US tech leaders for custom AI (10月8日付け VentureBeat)
→Nvidiaは、ワシントンD.C.で開催されたAIサミットで、Nvidia NeMoおよびNIMマイクロサービスを使用したカスタムAIアプリケーションの作成を目的とした米国のハイテクリーダーとの提携など、いくつかの取り組みを発表した。このサミットでは、AT&TやLowe'sなどの組織がこれらのマイクロサービスを採用し、生産性と顧客体験の向上を目指していることが強調された。
◇Nvidia’s RTX 5070 reportedly set to launch alongside the RTX 5090 at CES 2025―Reports: Nvidia to announce RTX 50-series GPUs at CES 2025 / The RTX 5080 might also be more powerful than the RTX 4090 while requiring less energy. (10月9日付け The Verge)
→Nvidiaは1月のCES 2025でRTX 5090とRTX 5080とともにRTX 5070 GPUを発表すると伝えられている。NvidiaのCEOであるJensen Huang氏は1月6日にCESの基調講演を行うが、今回Wccftechは、NvidiaがHuang氏の基調講演で次世代RTX 50シリーズGPUsのトリオを展示するとしている。
◇Nvidia shares are up 25% in the last month, rallying near a record ahead of tech earnings (10月9日付け CNBC)
→*エヌビディアの株価は先月25%急騰し、ハイテク企業の決算シーズンが近づくにつれて過去最高値に迫っている。
*AIブームの代表的な受益者である同社の株価は、2023年に3倍以上に跳ね上がった後、今年は165%以上も急騰している。
*メタ、アルファベット、マイクロソフト、オラクルおよびOpenAIなどの一流ハイテク企業は、エヌビディアのチップへの投資を必要とする新しいAI技術や製品を発表し続けている。
【TSMC関連】
TSMCの好調な業績については上に示したが、連携あるいは協業について以下の通りである。
◇TSMC, Amkor to bring advanced chip packaging to U.S. for first time―Key for AI, deal marks milestone in American effort to build critical supply chain (10月3日付け Nikkei Asia)
◇TSMC and Amkor link up to bring advanced packaging stateside―TSMC, Amkor to build advanced chip packaging facility in US ―Arizona looks like the place to be for US semiconductor manufacturing (10月4日付け The Register (UK))
→台湾のTSMCは、米国の半導体企業、Amkor Technologyと、米国内での先進的なチップパッケージングを強化する契約を結んだ。
この覚書(MoU)は、CHIPS Actが支援する重要な目的である米国のチップサプライチェーンおよび世界市場における同国の地位を強化するための新たな一歩となる。
◇TSMC signs deal with US chip test firm―TECH PARTNERSHIP: The deal with Arizona-based Amkor would provide TSMC with advanced packing and test capacities, a requirement to serve US customers (10月5日付け Taipei Times)
→Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. (TSMC、台積電)は、Amkor Technology Inc.と協力し、アリゾナで先進的なパッケージングとテスト能力を提供することで、チップ製造における地理的柔軟性に対する顧客の要求に対応する。
◇TSMC and Cadence Collaborate on AI-Driven Advanced-Node Design Flows and IP (10月7日付け EE Times India)
→ケイデンス・デザイン・システムズ社は、TSMCと協業し、AIを活用した先端ノード設計と3D-ICsの生産性向上と製品性能の最適化を目指す。
【Foxconn関連】
アップル対応はじめ電子機器の生産を請け負う電子機器受託生産 (EMS) で世界最大の企業グループ、Foxconnにおいても、Nvidiaとの提携などAIに向かう動きが見られる以下の内容である。
◇台湾・鴻海、AIサーバー期待で戻り歩調 EVは苦戦続く (10月7日付け 日経 電子版 04:00)
→台湾電機大手、鴻海精密工業の株価が戻り歩調にある。AIサーバー事業の一段の成長観測が支えだ。参入を進める電気自動車(EV)事業は顧客獲得に苦戦し、株価の押し上げ要因とになるには時間がかかりそうだ。
◇Foxconn chairman says AI investment boom ‘still has some time to go’ as language models evolve (10月8日付け CNBC)
→*FoxconnのYoung Liu会長はCNBCに対し、人工知能ブームには「まだ少し時間がある」とし、AIモデルは、新しいモデルが登場するたびに、ますますインテリジェントになっている、と語った。
*劉氏は、いわゆる「AGI」(Artificial General Intelligence)に向けた進歩は、今年のFoxconnの成長に重要な恩恵をもたらしているAIサーバー業界にとって良いことでしかないと述べた。
*Nvidiaの次期Blackwellチップを搭載したFoxconnのサーバーに対する需要は「我々が考えていたよりもはるかに良い」とLiu氏は述べた。
◇Foxconn and Nvidia to jointly build the world's largest GB2000 production line (10月8日付け DIGITIMES)
→Foxconn Technology Groupは10月8日、2日間にわたって開催されるHon Hai Tech Day(HHTD)を正式に開始し、Nvidiaとの提携による産業革命の次の波の推進に関するディスカッションを行った。
FoxconnのAIに特化した子会社、IngrasysのゼネラルマネージャーであるBenjamin Ting氏は、Nvidiaが価値あるパートナーであることを強調した。
◇Hon Hai to build large AI server plant in Mexico (10月9日付け Taipei Times)
→Hon Hai Precision Industry Co(鴻海精密工業)は昨日、Nvidia CorpのGB200チップを搭載したサーバーを生産するため、メキシコに大規模なAI製造拠点を建設すると発表した。
Taipei Nangang Exhibition Center(台北南港展示センター)で開催された「Hon Hai Tech Day」で、鴻海のYoung Liu(劉揚偉)会長は、AIサーバーに対する市場の旺盛な需要に対応するため、可能な限りの生産能力を活用すると述べた。
【Apple関連】
iPhoneの展開、そして次の分野開拓など、以下現時点の動き&内容である。
◇As Apple enters AI race, iPhone maker turns to its army of developers for an edge (10月4日付け CNBC)
→*アップルはApple Intelligenceを準備し、シリコンバレーのAI競争に飛び込もうとしており、その最強の優位性のひとつに頼っている。:それは、3400万人のアプリ開発者だ。
*Apple Intelligenceが何百万ものアップル以外のアプリと対話するためには、開発者がApp Intentsと呼ばれる数百もの追加コードのsnippets(再利用可能なソースコード、マシンコード、またはテキストの小さな領域を表すプログラミング用語)を作成する必要がある。
*もしアップルのSiriがデベロッパーからのサポートが悪かったり、印象に残らなかったりすれば、iPhoneの売れ行きが落ち、顧客はライバルの音声アシスタントを代わりに使うことになるかもしれない。
◇Apple could launch a ring to rival Samsung by 2026, research firm predicts (10月8日付け CNBC)
→*CCS Insightによると、アップルは2026年までにサムスンに対抗するconnected ringを発売する可能性があるという。
*サムスンは今年、399ドルのGalaxy Ringを発売し、スマートフォンからスマートウォッチまで、ハイテク大手の製品ポートフォリオに加え、ユーザーを自社のデバイスの世界に閉じ込めようとしている。
*CCSインサイトのチーフ・アナリスト、ベン・ウッド氏は、リングの発売はアップルのティム・クックCEOの健康志向に合致すると述べている。
◇Apple Teams with Novatek for Ultra-Thin iPhone 17 Display―Apple, Novatek developing ultra-thin iPhone 17 display (10月8日付け The Unofficial Apple Website)
→アップルは、来年発売が予定されているiPhone17用の超薄型ディスプレイの開発で、台湾メーカーのノバテックと協力している。このディスプレイは、OLEDタッチおよびディスプレイドライバ統合技術を使用し、機能を1つのチップに統合することで、よりスリムで効率的なスクリーンを実現する。
◇iPhone 16 series teardown shows increased costs in certain components (10月8日付け DIGITIMES)
→アップルのiPhone 16シリーズの最新のteardownレポートによると、一部の部品のコスト上昇により、iPhone 16シリーズの製造コストはiPhone 15シリーズと比較して上昇しているが、平均的な上昇幅は$30以下であることが明らかになった。
Apple Insiderは、TD Cowenのレポートを引用し、256GBのiPhone 16 Pro Maxの製造コストは、部品、パッケージング、および組み立てを含め、合計で約$485となり、iPhone 15 Pro Maxの製造コスト$453より$32高くなったと報じている。
◇Appleカー断念、フィスカー破綻 水平分業型EVは幻想か (10月9日付け 日経 電子版 05:00)
→世界的に電気自動車(EV)の需要の伸びが鈍化する中、水平分業モデルで開発・製造するEVの厳しさが目立っている。現在EV市場で覇権を握るのは、垂直統合モデルを採る米テスラや中国・比亜迪(BYD)だ。EVではエンジン車に比べ部品点数が大幅に減るため、自動車開発・製造への参入障壁が下がり、水平分業化が加速するというのは幻想だったのだろうか。
【インド関連】
Tata Groupを世界に押し上げた総帥が亡くなった記事が見られるが、一大新興半導体圏構築に邁進するインドの現時点である。
◇India iPhone plant resumes work (10月4日付け Taipei Times)
→iPhoneの部品を生産しているインドの工場は、昨年のスタート以来、アップル社の現地サプライチェーンを混乱させる3件目なった、生産を停止させられた火災の後、昨日操業を再開した。
土曜28日に原因不明の火災によって停止されたタミル・ナドゥ州にある地元の巨大産業タタ・グループの工場は、国内におけるアップルの新興サプライチェーンの重要な要である。
◇India roundup: Fire at Tata's iPhone plant; Foxconn OSAT venture progress (10月7日付け Digitimes)
→・インド南部にあるタタのiPhone部品工場で火災が発生し、高度な製造能力が試されることに。
・フォックスコン、遅延にもかかわらずインドOSATベンチャーに進展の可能性。
△Fire at Tata's iPhone parts factory threatens India production amid festive season
△Foxconn confirms investments in India, likely its OSAT venture with HCL
△India-based L&T Semicon anticipates mass production of its first chip within two years
△India deploys three supercomputers
△India launches government-led generative AI project for local languages
△BYD reportedly plans to establish EV plant in India in 2025
◇Ratan Tata, Conglomerate Patriarch, Dies at 86 With No Successor―Former Tata Group Chairman Ratan Tata has died (10月9日付け BNN Bloomberg (Canada))
→インド最古のコングロマリットのひとつを継承し、目を見張るような一連の取引を通じて世界的帝国へと変貌させた実業家、ラタン・タタ氏が死去した。86歳だった。
水曜9日にタタ・グループのナタラジャン・チャンドラセカラン会長の声明で死去が発表された。結婚せず、子供もいなかったタタ氏は、1991年から20年以上にわたって急速な拡大を示した期間タタ・グループの会長を務めた。
◇India eyes global semiconductor hub status: US and global partners invest in key chip-making and design projects (10月11日付け DigiTimes Asia)
→バイデン政権は9月下旬、インドに半導体製造工場を設立することでインド政府と合意した。
この施設では、赤外線、窒化ガリウム、および炭化ケイ素(SiC)チップを生産することになっている。このプロジェクトは、インド半導体ミッション(ISM)の支援を受けている。ISMは、ナレンドラ・モディ首相による同国の半導体産業強化の取り組みを支援することを目的としたイニシアティブである。