セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

TSMCの3Q業績、48%増の過去最高売上達成もメモリ不況を警戒、投資額を削減

|

半導体産業は短期的にはメモリ不況に入るため、TSMCはロジックも警戒を強め、設備投資を1割減額する。10月13日に同社が開いた2022年第3四半期(3Q)の決算報告会で明らかにした。第3四半期の決算は絶好調で前年同期比48%増の6131億台湾元(約2兆8000億円)と過去最高の売上額になった。中長期的に半導体は成長産業であるという認識に変わりはない。

3Q22 Revenue by Technology / TSMC

図1 TSMCのプロセスノード向けの売上額比率 出典:TSMC


TSMCの業績は、米ドルで表示すると同36%増の202.3億ドルとこれも過去最高額である。ただし、台湾元と米ドルとの為替レートは、1米ドル=30.3台湾元で計算している。営業利益率は50.6%とこれも大きい。5nmプロセスが大きく伸びており、全体売上額の28%を占める(図1)。また、応用別では、スマートフォン向けチップが全体売り上げの41%、HPC(高性能コンピューティング)向けチップが同39%と、この二つの分野で全売上額の80%を占めていることになる(図2)。


3Q22 Revenue by Platform / TSMC

図2 TSMCの用途別売上額の比率 出典:TSMC


それ以外の分野では、IoT向けが前期比33%増の売り上げで、その金額は売上額全体の10%にも達する。また自動車向け半導体も全体売上額の5%と伸び、前期比でも15%増となっている。つまり、自動車向け半導体も力を落とすことなく、生産していることになる。前四半期よりも低下した応用はDCE(Digital Consumer Electronics)と表現した、テレビ向けなどの民生用半導体である。

次の四半期見通しをTSMCは、前年同期比33.7%〜39.1%増の199~207億ドルと見ている。
ただし、台湾元と米ドルとの為替レートは、1米ドル=31.5台湾元で計算している。次の四半期もTSMCとしては好調だが、メモリ不況の影響をロジックやアナログ半導体も受けるため(例えばスマホ向け半導体といってもメモリ、プロセッサ、通信用IC、電源ICなども含まれている)、2022年12月期の設備投資額を前回見通しの40〜44億ドルから36億ドル、と1割減額した。14日の日本経済新聞でも報じられているが、工場の稼働率は「(フル稼働だった)過去3年間と比べると、それほど高い水準ではなくなった」(魏CEO)という。設備投資の減額は実際には新工場建設を遅らせることになる。

メモリ不況は、半導体ユーザーや商社の在庫調整によるもので、これまで必要以上に半導体を購入してきたため、在庫がたまりすぎた。特にパソコンやスマホではメモリは1台に8/9個から16/18個使うのに対して、プロセッサは1個で済む。このため、メモリの好不況の揺れ幅は大きい。それらのシステムに使う同じ半導体製品の数が増えれば増えるほど、在庫調整の影響を受ける。このためメモリメーカーの業績はこの3Qから4Qにかけては前期比でマイナスになるだろう。現実にキオクシアは、四日市工場と北上工場で10月から当面、同社分のウェーハ投入量を約3割削減する生産調整を行うと9月30日に発表している。

とはいえ、13日の日経によると、9月単月の台湾のIT部門の売り上げは大きく伸びている。半導体ユーザー大手の鴻海精密工業は前年同月比で40.4%増と好調で、IT関連19社の売上額合計は21.3%増だった。しかし、その中身はスマホ用プロセッサ大手のMediaTekは同18.1%増だが、メモリメーカーの南亜科技は58.2%の減収、液晶パネルの友達光電は50.7%の減収だった。

日本政府も遅ればせながら半導体支援を積極的に行うことを表明している。経済安全保障推進法に基づき安定供給をめざす「特定重要物資」の対象とする分野の案を、半導体や蓄電池、抗菌薬、肥料原料など11分野をあげた、と14日の日経が報じた。また、16日、西村康稔経済産業相が半導体の人材育成の全国展開を検討する、と述べたと複数の報道機関が報じている。

(2022/10/17)

月別アーカイブ