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TSMCなど台湾4社はなんと14兆円投資!!〜日米欧も空前の半導体新工場ラッシュ

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半導体を国家戦略の重要なコアととらえた、世界各国の半導体製造に対する産業政策が熱を帯びている。支援策の中心にあるのが、先端半導体工場の誘致だ。米国では、インテル、TSMCが新工場建設を発表しているほか、サムスンの新工場建設も具体化の方向。欧州でもインテルのドイツ工場の可能性が報じられているほか、日本国内でもTSMCの量産工場新設が現実味を帯びてきた。

SEMIによれば、新規のファブ建設計画は、着工ベースで2021〜22年の2年間で29件ある。地域別では、中国と台湾の8件が最多。次いで南北アメリカ、欧州/中東、日本、韓国となっている。ただし、韓国の件数は少ないが、サムスンにしてもSKにしても巨大な工場建設で数兆円単位であるからして、そのスケールはとてつもなく大きい。

米国ではTSMCがアリゾナ州に新工場を建設することをすでに表明しており、21年着工、24年の量産開始。Intelの3D-ICであるFoverosをはじめとする先端パッケージ工場の建設計画も一部で報じられている。サムスン電子は、元々米国テキサス州オースチンに前工程拠点を有しているが、5月の米韓首脳会談以降、オースチンとは別の立地で新工場を建設する計画が浮上している。これらはいずれも1兆円〜1.5兆円の巨大工場となる。日本も、TSMCを最有力候補に量産工場の誘致に動いている。九州エリアを中心に、立地先の選定作業が進んでいると見られている。ただし、TSMCの日本工場はこの一つだけではない。今後、複数日本国内に作る可能性がある。超ハイエンド、ミドルエンド、ローエンドの3つの分野で新工場建設に取り組む様子(編集室注1)。車載向け、ソニーのセンサ向け、さらには東京大学が主導する2nmプロセス以降の最先端工場も考えている。東北エリアで用地を探しているという情報もある。

米国は、5.7兆円を投じて20のメガファブを誘致、または米国企業の工場新設を支援する。EUも2030年までに域内の半導体生産シェアを現状の10%から20%に引き上げるべく、今後2〜3年で最大17.5兆円を投入する方針。こうした動きの向こうには、なんと言っても、2020年に最大設備投資を断行した中国の半導体一大強化策への対抗プランが見え隠れする。

世界最大手の半導体ファンドリ企業である台湾TSMCは、半導体の実質的な世界ランキングにおいても世界の上位にランクされている。しかし本当のその価値は、株式時価総額にあるのだ。すなわち、2021年6月段階での同社の時価総額は5340億ドル(なんと60兆円近い)となっており、世界ランキング11位にまで上がってきた。ちなみに、半導体メモリの世界チャンピオンとして世界に君臨する韓国のサムスン電子の時価総額は4310億ドル(世界ランク15位)であり、TSMCはサムスンを抜き去り、上位にランクされているのである。

TSMCの20年12月期の純利益率は39%というとんでもない数字である。純利益は1兆8602億円であり、前期比50%増を達成した。つまりは、過去最高の純利益、そして売り上げを上げている。設備投資についても2兆9000億円と過去最高である。台湾の台南工場の3nmと5nm、台中工場の7nmの工場増強を断行している。さらに世界で初めて2nmプロセスの量産化に成功している。

21年に茨城県つくば市に先端半導体の微細化やパッケージ技術の共同開発拠点を新設する計画も明確にアナウンスした。これには約200億円が投入されると言われている。また、東京大学と先端半導体の分野で事業提携も行っており、日本への傾斜を強めている。元々親日的な台湾の企業であるだけに、これからも総力を挙げて日台連合軍を作っていく考えなのである。

なおTSMCは、21年からの3年間で11兆円を投資すると言っており、これにUMC、南亜科技、パワーチップの投資額を合わせれば、台湾半導体4社で実に14兆円の巨大投資が断行されることになり、9割が台湾での投資になるのである。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉

編集室注
1. TSMCの日本工場に関しては、噂が先行しており、TSMCは検討しているが、決まってはいないと答えている。また、日本にTSMCを誘致したいあまりに意図的にリークした記事も多いので要注意である。

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