Semiconductor Portal

HOME » ブログ » インサイダーズ » 長見晃の海外トピックス

米中追加関税の段階的撤廃の応酬の中、狭間の台湾・TSMCの躍動模様

中国がここ2週間での米国との話し合いで、双方が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に廃止することで合意した、と明らかにして、市場の好感を呼ぶ動きが見られたところに、強硬筋の巻き返しがあったか、Donald Trump大統領はじめ米国政府高官の「合意していない」と打ち消す発言が続いている現時点である。大詰めにさしかかってなお予断を許さない状況の中、米国と中国に挟まれる位置づけながら5G、AIなど今後の中核技術に向けて最先端半導体に積極的に取り組むTSMCに注目させられている。3-nm新工場計画推進はじめ業界で一人勝ちになる可能性もあり、7-nmなど現下の最先端が売上げを大きく押し上げている同社となっている。

≪中国側発表への米国側巻き戻し≫

ここにきて、米中が第1段階合意に向け双方に積み重なった追加関税の縛りを段階的に解いていく、という空気が強まってきた以下の経過である。

◇U.S. may roll back tariffs on $112 billion in Chinese imports: report-US reportedly weighs ending tariff on $112B in Chinese goods (11月4日付け MarketWatch)
→関係筋発。米国が、"phase one"貿易合意に達する譲歩として中国製輸入品$112 billionについての関税を解く可能性の旨。米国と中国は、9月に発効した15%関税を終わらせるなどの取引に原則的に合意している旨。

◇U.S., China Consider Rolling Back Tariffs as Part of Initial Trade Deal -The two countries have agreed in principle to the first of several phases of an agreement to end the trade war (11月4日付け The Wall Street Journal)

◇US considers dropping some tariffs on China (11月5日付け Financial Times)

◇China and US agree to lift some tariffs in sign of trade war thaw (11月7日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→中国と米国が、両国の間の貿易係争で課されているいくつかの関税を取り除くことで原則合意の旨。北京は、貿易休戦が新たな関税凍結を踏み越える可能性を暗示している旨。

そして、中国側から米国との追加関税の段階的撤廃の合意が表明されている。

◇China says it has agreed with the US to cancel existing trade tariffs in phases-China reports US agrees to cancel some existing trade tariffs (11月7日付け CNBC)
→中国・Commerce Ministry発。中国と米国が、両国間の現状の貿易関税を段階的に解くことで合意の旨。Ministry spokesperson、Gao Feng氏は、中国と米国が"phase one"合意に近づいているとしている旨。

◇China, U.S. make progress in trade talks, raising hopes of a breakthrough (11月7日付け The Washington Post)

◇米と追加関税の段階的撤廃で合意、中国商務省が表明 (11月7日付け ロイター 17:22)
→中国商務省の高峰報道官は7日の会見で、中国と米国がここ2週間の間に、双方が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に廃止することで合意したと明らかにした旨。高報道官は、「第1段階」の通商合意が成立するためには、両国が互いに発動している追加関税を同時に撤廃しなければならないとし、撤廃は、合意を成立させるための重要な条件と表明。撤廃する追加関税の割合は同じでなければならず、撤廃する対象品目数は交渉可能とした旨。 「貿易戦争は関税で始まっており、関税撤廃で終わらせるべきだ」と述べた旨。具体的な予定などは示さなかった旨。

撤廃について土壇場はまだわからないと慎重な見方である。

◇米中首脳会談、欧州で開催案、農産物・知財なお溝 (11月7日付け 日経 電子版 20:00)
→米中両国政府が発動済みの追加関税を段階的に撤廃する方針で一致した旨。両国は首脳会談で貿易交渉の部分合意を目指すが、農産物の購入額や知的財産権の取り扱いなどを巡っては溝も残る旨。トランプ米大統領は過去にも合意寸前の交渉を白紙に戻してきた経緯があり、大詰めにさしかかった貿易協議はなお予断を許さない旨。

◇Tariffs will ease if deal is struck, U.S. and China say (11月8日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→米国と中国が、両国の間の皮切りの貿易取引がお互いの製品への関税の一部分を引き下げると合意、世界最大経済圏の間の緊張を和らげる大きな1ステップの旨。該合意はまだ出来上がっておらず、これまでの交渉roundsにおけるように取引が実現しない可能性がある旨。しかしある協定に達すれば、Trump政権はなんらかの関税削減を約束している旨。

米株式市場は、撤廃への期待の反応である。

◇NYダウ、最高値上回り推移、米中の追加関税撤廃の期待で (11月8日付け 日経 電子版 05:12)
→7日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発している旨。15時現在は前日比202ドル41セント高の2万7694ドル97セント(速報値)と5日に付けた過去最高値を上回って推移している旨。中国商務省が7日、発動済みの追加関税を段階的に撤廃する方針で米国と一致したと発表。米中が合意に向け歩み寄っているとの期待が強まり、中国関連株や金融などを中心に幅広い銘柄に買いが入っている旨。

段階的撤廃の合意は本当か、中国でも疑問視の声である。

◇Global Execs Doubt U.S.-China ‘Trade War’ Truce-An easing of US-China trade tension doesn't convince execs (11月7日付け EE Times)
→米国と中国の交渉筋がある関税を取り消す合意を予告しているが、上海でのGlobal CEO Summit 2019に出席しているengineering executivesは貿易の平穏に達していることを疑問視している旨。「中国にとって内向的になるのは不幸なこと。」と、VeriSiliconのCEO、Wayne Dai氏。

案の定、Donald Trump大統領の「何も合意していない」という発言に至っている。

◇Rollback of China tariffs faces fierce opposition in White House-Tariff rollback in US-China deal reportedly faces White House opposition (11月7日付け Reuters)

◇Trump says he hasn't agreed to rolling back China tariffs-Trump: No agreement reached with China on tariff rollback -But the White House reportedly made a conscious decision not to push back on the stories coming out of Beijing. (11月8日付け Politico)
→Donald Trump大統領が金曜8日、中国政府spokespersonが双方合意と発表して1日後、中国製品に対する関税を解いたり、あるいは減らす決定はしていない旨。「彼らは引き下げたいだろう。私は何も合意していない。」と、White Houseの芝生にて報道陣にTrump氏。「中国はいくぶんの引き下げを得たいだろう。彼らは私がやらないとわかっているから、完全な引き下げではない。」

◇Donald Trump says he has not agreed to rollback of China tariffs (11月8日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇追加関税の段階的撤廃、米高官「中国と合意してない」 (11月8日付け 日経 電子版 12:40)
→ナバロ米大統領補佐官(通商担当)は7日、中国政府が発動済みの追加関税を段階的に撤廃する方針で米国と一致したと発表したことを巡り「現時点で合意はない」と述べた旨。米中がめざす部分合意で、中国側は関税を取り下げるよう求めているが、トランプ政権には慎重な意見もある旨。合意文書の署名まで引き続き曲折がありそうな旨。

◇トランプ氏、対中関税撤廃「合意していない」 (11月9日付け 日経 電子版 00:26)
→トランプ米大統領は8日、中国との貿易協議で発動済みの制裁関税を撤廃することに「合意していない」と述べた旨。中国政府は関税の段階的な撤廃で米国と一致したと発表しており、意見の食い違いが表面化した形。トランプ氏は合意文書に署名する首脳会談について、米国での開催を改めて要求した旨。交渉の行方はなお予断を許さない旨。

このようにまだ先が開けない中、米国と台湾の狭間に置かれた台湾・TSMCを巡る状況である。

◇TSMC to Keep Supplying Huawei, Quashes Talk of U.S. Pressure-TSMC will still make chips for Huawei, despite US pressure (11月3日付け Bloomberg)
→TSMCはHuawei Technologies向けmicrochips供給を約束している一方、Trump政権は国家セキュリティの理由で該包囲された中国の会社を引き続き隔離している旨。「我が政府はTSMCのHuaweiへの供給を止めるよう米国政府からいかなる要求も受け取っていない。」と、台湾の内閣spokeswoman、Kolas Yotaka氏。

◇TSMC tells US clients it can meet Pentagon security standards-World's top contract chipmaker navigates rift between Beijing and Washington (11月4日付け Nikkei Asian Review (Japan))

◇米、台湾・TSMCにファーウェイへの出荷停止要求か (11月5日付け 日経)
→米政府が半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)に対し、中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)向けの出荷を停止するよう求めた旨。4日の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT、電子版)が、米国や台湾の当局者の話として報じた旨。日本経済新聞の問い合わせを受けたTSMCと台湾当局は共に否定した旨。貿易戦争を続ける米中はハイテク覇権でも争っている旨。

最先端リソグラフィ装置のASMLも、中国顧客への納入を「保留」する事態が見られている。

◇中国5G戦略に影、ASML、半導体装置の納入「保留」 (11月6日付け 日経 電子版 18:00)
→半導体製造装置世界大手のオランダASMLが、半導体の性能を飛躍的に高める次世代装置の中国顧客への納入を保留していることが、部品などを供給するサプライヤ関係者の話で分かった旨。次世代通信規格「5G」対応で重要になる技術で、ハイテク分野の覇権を巡る米中摩擦が激化するなか、米国の規制を懸念したとみられる旨。高度な半導体の内製化を目指す中国に逆風になりそうな旨。

米中ハイテク戦争の今後における台湾の役割の重みを、次で考察している。

◇Why Taiwan's role will be crucial in next phase of the US-China tech war (11月7日付け South China Morning post)
→数10年前、台湾は沈まないようにするために半導体に大きく賭けて、業界powerhouseを作り出している旨。今や、現状の米中ハイテク戦争の核心である技術、AIおよび5Gに開発が重点化、台湾の半導体メーカーは加担の選択を余儀なくされる可能性の旨。

TSMCの現下の躍動をあらわす以下の内容である。業界先頭を走る3nm fab、積極的な設備投資、そして非常に好調な足元の売上げ見通しである。

◇Taiwan's TSMC to add 8,000 jobs at its new 3nm fab-New R&D center will be dedicated to developing 3nm process nodes and more (11月1日付け Taiwan News)
→世界最大手ファウンドリーhouse, TSMCが、3-nmプロセスnodes移行の製造に専心する8,000 research and development(R&D) jobsを加える運びの旨。TSMCのexecutive chairman、Mark Liu(劉音)氏が、木曜10月31日のtech networkingイベントにて該計画を披露、2020年末までに建設完了予定の台湾北部における同社の新しいR&Dセンターにて追加の8,000人のエンジニアを採用する旨。

◇TSMC planning to give staff bonuses totaling NT$468m (11月4日付け The Taipei Times (Taiwan)/Channel NewsAsia)
→世界最大のcontract半導体メーカー、TSMC(台積電)が土曜2日同社annual sports dayにて、同社従業員にボーナスNT$468 million($15.35 million)を与える旨。

◇Top 5 Share of Semiconductor Industry Capex to Set New Record in 2019-Samsung and TSMC each expected to set new all-time highs in quarterly spending in 4Q19. (11月5日付け IC Insights)

◇Top 5 Share of Semiconductor Industry Capex to Set New Record in 2019 (11月6日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→IC InsightsのNovember Update to The McClean Report 2019。半導体業界設備投資のトップ5社(Samsung, Intel, TSMC, SK Hynix, およびMicron)シェアが、今年最高記録の68%に達する見込み、2013年および2018年に記録したこれまでの最高、67%を上回る旨。

◇Taiwan top-3 foundries to see combined revenue hit another record high in 4Q19 -Forecast: Taiwan's top foundries to post record Q4 revenue (11月7日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Research予測。Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.(TSMC), United Microelectronics(UMC)およびVanguard International Semiconductor合わせて、5Gスマートフォンおよび高性能computing半導体の需要増大から今年第四四半期売上げが最高を記録する旨。第三四半期では該ファウンドリー3社売上げ合計が$10.8 billion、第二四半期から18.8%増。

◇TSMC、設備投資1.6兆円、過去最高、5G向けにらむ、半導体受託、トップ独走へ (11月7日付け 日経産業)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が独走態勢を固めようとしている旨。2019年の設備投資計画を大幅に上方修正すると表明し、最先端品の開発と生産能力の増強を加速する旨。2020年から普及が本格化する次世代高速通信規格「5G」では高性能半導体の需要が大幅に増える見通しで、業界で一人勝ちになる可能性がある旨。


≪市場実態PickUp≫

【Huawei関連】

米国のワイヤレスネットワークoperatorが、Huawei製装置を用いるテストの許可をFCC(Federal Communications Commission)に求めている。

◇US Operator Viaero Apparently Using More Huawei Equipment (11月1日付け Light Reading)
→Nebraska, ColoradoおよびKansasの田舎の地帯にわたる米国ワイヤレスネットワークoperator、Viaeroが、2.5GHz帯で動作するHuawei製装置をテストするFCCの許可を求めている旨。

Huaweiのスマホ出荷の伸びっぷりである。

◇Huawei defies sanctions to achieve record shipments in 3Q19, says IHS (11月1日付け DIGITIMES)
→Samsungが世界スマートフォン市場で首位を維持する一方、第2位のHuaweiは2019年第三四半期の間に出荷が14.8 million台増の66.8 million台に達して目立っている旨。前年同期比28%増の出荷であり、これは同社が単一四半期で出荷した最大数、とIHS Markit。「Huaweiの数量増は、中国国内市場からの力強い需要が引っ張っている。」と、IHSのresearch and analysis director、Jusy Hong氏。「中国におけるスマートフォン出荷は第三四半期に前年同期比65%の増加。Huaweiの力強い本拠地での業績は、米国の制裁で落ちている海外販売を埋めて以上のもの。」

米国商務長官は、Huaweiへの機器販売を許可する米国メーカーに向けたライセンス発行は間近としている。

◇US official says licences to sell to Huawei 'forthcoming very shortly': Report-Ross: Commerce Dept. ready to OK Huawei licenses The US government has received 260 requests for the licences. (11月4日付け ZDNet)
→Wilbur Ross米国商務長官がメディアに対し、米国政府は中国・Huawei Technologiesへの機器販売を許可する米国の会社に向けたライセンスを今にも承認するばかりであり、このような許可に向けた260件の申請が提出されている旨。

◇Ross says licenses for U.S companies to sell to Huawei coming ‘shortly’: Bloomberg (11月4日付け Reuters)

【Xerox関連M&A】

Xeroxが、富士フイルムとの合弁、富士ゼロックスの株式を売却、合弁を解消している。

◇富士フイルム、米ゼロックスと合弁解消、富士ゼロの全株取得 (11月5日付け 日経 電子版 15:00)
→富士フイルムホールディングスは事務機大手の米ゼロックスの買収を断念する旨。代わりに23億ドル(約2500億円)でゼロックスとの合弁会社である富士ゼロックスの25%の株式などをゼロックスから買い取り、富士ゼロックスを完全子会社化すると5日発表、富士フイルムが2018年1月にゼロックス買収を表明して以来、交渉が難航していた事務機の大型再編は、富士ゼロックスの完全子会社化という形で決着を迎えた旨。

Xeroxはすぐさま、パソコン・プリンター大手、HPの買収に向かって動いている。

◇米ゼロックス、M&Aを加速、富士ゼロ株売却資金で (11月6日付け 日経 電子版 07:43)
→米事務機器大手ゼロックスは5日、富士ゼロックスの株式売却で得た資金をソフト会社などのM&A(合併・買収)に充てる方針を明らかにした旨。事務機器の需要が低迷するなか、ソフトウエアの強化を通じて法人向けサービスを広げる旨。機器販売を中心としてきた事業モデルを転換して独力での業績回復を目指す旨。

◇Report: Xerox eyes HP for potential big-dollar acquisition (11月6日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Xerox Holdings社(Connecticut)が、HP社買収に向け史上5番目か6番目のハイテク買収となる$30 billionの入札を行った旨。The Financial Timesが水曜6日unnamed筋を引用、Xeroxが約$22/株のcashおよび株式提示を行った旨。火曜5日夜のWall Street Journalからの同様の報道に続く旨。

◇Xerox has made a cash-and-stock offer for HP, sources say-Xerox eyeing bid for HP, sources say (11月6日付け CNBC)

◇ゼロックスがHPに買収提案、米報道、3兆円規模 (日経 電子版 01:10)
→米ウォール・ストリート・ジャーナルは6日、米事務機器大手ゼロックスが米パソコン・プリンター大手HPに買収を提案したと報じた旨。ゼロックスは5日に富士フイルムホールディングとの合弁事業の解消を発表。富士ゼロックスの株式売却で得る資金をM&A(合併・買収)に充てる考えを示していた旨。買収額は3兆円規模になる可能性がある旨。

【Samsungの米国拠点閉鎖】

Samsungが、中国の最後のスマホ生産拠点を閉鎖したばかりであるが、こんどは米国でのCPUコア設計に向けた2つのlocations閉鎖を明らかにしている。

◇Samsung says to shut down U.S. CPU research division-Samsung will close mobile chip CPU research unit in US (11月5日付け Reuters)
→Samsung Electronicsが、同社独自のモバイル機器用Exynos半導体の生産から後退の様相、central processing unit(CPU)開発へのリサーチに向けた米国拠点を閉鎖とする一方、韓国筋はSamsungが2つの米国locationsを閉鎖すると示している旨。同社は、Exynosが同社Galaxy phonesでのメモリ半導体の必要性を減らすと期待したが、多くの外部顧客を見い出せていない旨。

◇Samsung Electronics folds CPU core design business in US (11月5日付け Pulse by Maeil Business Newspaper (South Korea))

【中国でのヘッドバンド禁止】

中国での学校の子どもたちが着用したヘッドバンドというか、はちまき様のものが西欧メディアの目に留まって、慌ただしく禁止されたとのこと。監視の内容が以下にあらわされている。

◇China: A Headband for Your Thoughts? (11月3日付け EE Times)
→西欧メディアのcoverageが跳ね返りを生じて、中国が教室での学校の子どもたちを監視するはちまきの使用を慌ただしく禁じた旨。Wall Street Journalが先週、“China’s Efforts to Lead the Way in AI Start in Its Classrooms”と題する記事で中国の小さな子どもたちへのelectronicはちまきの使用について警鐘を鳴らした旨。伝えられるところによれば、学校の子どもたちが着用したはちまきは各生徒の集中の度合いを監視する一方、該はちまきが集めた関連データが両親に送られる旨。

◇Innovation or Exploitation?-China abruptly banned the use of headbands to monitor school children in a classroom, after the Western media's coverage caused a backlash. (11月7日付け EE Times India)

【住宅供給危機への支援】

Apple社はじめハイテク最大手がCaliforniaの住宅供給危機に資金支援を行う動きが以下の通りである。サンフランシスコ・ベイエリアにおいて、不動産価格の急騰と 手頃な価格の住宅の不足、ホームレス問題の深刻化といった問題にさらされているとのこと。住宅を求めやすいものにするための投資基金、初めて住宅を購入する人向けのローン補助基金などへの出資となっている。

◇Apple pledges $2.5 billion to fight California housing crisis-Apple commits $2.5B to more affordable housing in Calif. (11月4日付け Reuters)
→Apple社が月曜4日、Californiaにわたって価格を引き上げている住宅供給不足の緩和に$2.5 billionを出すと約束、大方は州政府とともに、あるいは州政府により運営される資金に充てられる旨。

◇Apple promises to put $2.5B to California's housing crisis (11月4日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇How big a dent could Apple's $2.5B make in Silicon Valley's housing problem? (11月4日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇Google, Facebook and Apple have pledged billions for housing. How will they measure success? (11月7日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Bay Areaのハイテク最大手、Facebook, GoogleおよびAppleが、該地域の住宅供給危機に$4.5 billionを誓約、それらのお金がどんな効果をもつか、大きな問題が残る旨。どのようにうまくいきそうか、全く明らかでない旨。

◇The $4.5 billion puzzle-Tech companies want to take on the housing crisis, but is their money going to be enough to make a difference? (11月7日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)


≪グローバル雑学王−592≫

この10月28日になって、米連邦通信委員会(FCC)が米国内の通信会社に対してHuaweiおよびZTEの製品を使わないよう採決する動きが見られているが、

『ファーウェイと米中5G戦争』
 (近藤 大介 著:講談社+α新書 711−2 C) …2019年7月18日第一刷発行

より、依然次から次へとトランプ政権が仕掛ける対中ハイテク覇権戦争の細かい経過を2回に分けて見ていく2回目である。昨年、2018年の暮れに、ブエノスアイレスでのG20サミットの場での米中首脳会談にて米中貿易戦争一段落の見方があった直後、ファーウェイの孟晩舟副会長兼CFO、すなわち任正非CEOの長女がバンクーバー空港で逮捕という報道に世界が驚かされている。これに纏わる一部始終の経過&著者ならではの見方が以下あらわされている。米国が訴追する内容が詳細に示されている一方、ファーウェイが「憤怒の会見」の会見を行ったこの3月に至る詳細な経過である。まさにカナダ版「カルロス・ゴーン事件」の様相、との締めである。


第2章 トランプ政権が仕掛けた対中ハイテク覇権戦争 …2分の2

■トランプも知らなかった副会長逮捕劇
・アメリカは、2018年暮れ、さらなる直接的な手段に
 →現地時間の2018年12月5日夕刻(日本時間6日午前)、カナダ司法省が行った発表
  …「12月1日、バンクーバー空港にて、ファーウェイの孟晩舟副会長兼CFOを逮捕。アメリカからの要請に基づく措置」
・その12月1日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれたG20サミットの終了後、1年1ヶ月ぶりとなる米中首脳会談
→米中貿易戦争は一段落したと見られていただけに、この逮捕は世界中に衝撃
・米中貿易戦争は、2018年7月に「第1弾」、8月に「第2弾」、9月に「第3弾」を、米中が互いに撃ち合い
 →相対的に経済が疲弊したのは、中国のほう
→中国内外の企業が中国から「逃亡ラッシュ」を開始
→春節(2019年2月5日)の前に、中国企業の倒産ラッシュが起こる懸念
 →中国側が懇願する形で、ブエノスアイレスG20で米中首脳会談に持ち込んだ
 →今後はアメリカ製品や農産品などを、一層買うことを約束、アメリカから「執行猶予」を得た
  …追加関税を25%に引き上げる時期を、3月1日に延期してもらった
 →そうやって中国側がホッと一息ついた刹那に、孟副会長の逮捕劇が起こった
・トランプ大統領の方も、あろうことか米中首脳会談が終わるまで、この逮捕劇を知らされていなかった
 →ジョン・ボルトン大統領安保担当補佐官が、故意に報告を怠っていた
 →図らずもファーウェイ問題に関して、ホワイトハウスが一枚岩でないことを露呈
・孟晩舟副会長は、ファーウェイを語る上で欠かせないキーパーソン
 →1972年、任正非CEOの長女として生まれた
 →1993年、父親の会社に入社、その頃両親はすでに離婚、父親のことを伏せて一般入社
 →2003年、彼女が中心となって、ファーウェイは世界統一の財務組織を構築
 →2011年4月、孟晩舟はファーウェイの常務理事兼CFOに就任
  …この時に初めて、任正非の娘であることを公表
 →2018年3月23日、彼女はファーウェイの4人目の副会長に
・2019年10月に75才を迎える任CEOの後継者問題は、アメリカ対策と並んで、ファーウェイの「2つの難題」
・孟晩舟副会長は私生活では、投資会社を経営する男性と結婚、息子と娘
・彼女は、2018年11月下旬、ファーウェイ幹部とともに、アルゼンチンに出張
 →12月1日、約18時間のフライトで、ブエノスアイレスとは4時間の時差があるバンクーバー空港に、現地時間の同日夕刻に到着
 →香港経由で深センに戻る予定
 →が、バンクーバー空港に降り立ったところで、空港警察に取り囲まれ、別室に
 →約3時間も尋問が行われたあげく、逮捕されてしまった
・同盟国のアメリカから身柄引き渡しの要請を受けて、カナダ政府が動いたもの
 →逮捕容疑は、アメリカの対イラン経済制裁に違反した詐欺罪など
・この尋問にて、ファーウェイの最高機密情報が、カナダ経由でアメリカに渡ったものと推定される
 →2019年5月、米商務省がファーウェイを「エンティティ・リスト」に入れる際に、利用したに違いない
・2018年12月6日にこの事件が表面化してからは、米中の非難合戦が激化
 →12月11日にバンクーバー地裁はようやく、孟晩舟副会長の保釈を認めた
 →厳しい条件付き
 →彼女の審理が始まるのは、2019年2月5日からと決まった

■アメリカの対ファーウェイ攻撃
・2019年1月28日、アメリカ司法省の会見
 →「本日、ファーウェイ、ファーウェイのアメリカ法人、スカイコム・テック(星通技術)、及び孟晩舟副会長兼CFOを、アメリカ連邦大陪審が起訴」
 →カナダ側は3月1日までに孟晩舟被告の身柄引き渡しの手続きを進めるかどうかを判断することに
・アメリカ政府の起訴状には、計23項目にもわたる孟晩舟副会長らの罪状
 →第1の刑事案件
  …ファーウェイとその子会社、孟晩舟被告らは、アメリカのイラン向け禁輸措置に反して、アメリカ産の産品や技術を輸出、合わせてマネー・ロンダリングや金融詐欺などを行った
 →第2の刑事案件
  …ファーウェイが、長期にわたってアメリカの特許技術を盗み続けたというもの。特に悪質な事例として、2012年6月から2014年9月にかけて、TモバイルUSの機密を盗んだ案件
 →第3の刑事案件
  …孟晩舟被告が虚偽の証言を行い、アメリカ政府および国際機関を欺こうとした
・起訴状には、それぞれ詳細な内容
 →アメリカ三大移動通信キャリアの一角、Tモバイルを狙い撃ちにした機密窃盗事件の概要
  →2012年当時、Tモバイルは、独自の優れた携帯電話専用自動検測ロボット「Tappy」を開発
  →ファーウェイは、中国から専門の技術者を派遣、何らかの手段で「Tappy」が保管された実験室に入り込み、詳細な写真を撮った
 →Tモバイルはファーウェイ関係者の入室を、ただ1人の社員に限定、するとそのファーウェイ社員は「Tappy」の手脚を折って持ち逃げ
  →Tモバイルは、ファーウェイとの提携契約を全面的に解除
  →まもなくファーウェイは、自動検測ロボットを「自主開発」、自社の携帯電話の性能を飛躍的に向上させた
・Tモバイルは2014年、シアトル連邦地裁にファーウェイを相手取って、この窃盗事件に関する訴訟を起こした
 →Tモバイル側勝訴の判決、480万ドルの支払い命令
・アメリカ政府はこの案件を、今度は刑事犯罪として裁こうというもの
 →ファーウェイが犯した罪は、アメリカの知的財産および核心技術に対する犯罪行為だという論理
・ファーウェイも1月29日、声明を発表
 →「アメリカの法律に反する行為を、当社または当社の子会社や関係会社が行ったということを当社は否定、また、孟によるいかなる不正とみなされる行為も把握していない」
・アメリカという世界最強国家と、ファーウェイという世界最強通信システム会社の闘争
 →一企業がアメリカ政府と戦って勝てるはずもない
・中国の関係者の弁
 →実質上は中国対アメリカの戦い。なぜなら5Gというのは、どの国でも国家が主体となって整備していくから
 →ファーウェイには、1月9日に『2018年度国家科学技術進歩賞』を授与、 最優先かつ最大限のバックアップをしていくことを申し合わせ
 →5Gの基幹技術を巡る戦い、アメリカ企業は『ベスト5』に1社も入っていない
 →次の『6G戦争』では、圧倒的に中国が有利な状況、中国が世界の先端技術を制覇するのは時間の問題

■ファーウェイ「憤怒の会見」
・ファーウェイも「反撃」、年に一度の全人代開催中の3月7日、深センの本社で「憤怒の会見」
 →中央に立った郭平輪番会長:
  →「本日ファーウェイは、米テキサス州プレイノにある連邦地域裁判所に、アメリカ政府を相手取って訴訟を起こした」
  →「アメリカ国防権限法により、すべてのアメリカ政府機関に対して、ファーウェイの機器とサービスを購入することを禁止」
  →「これはアメリカ合衆国憲法の私権剥奪法条項、デュープロセス条項に反する」
  →「同時に、アメリカ合衆国憲法における三権分立の原則にも反している」
 →ファーウェイは、1月28日にアメリカ政府がファーウェイを起訴したこと自体を、「違憲行為」として訴えた
・ファーウェイ公表の資料から
 →ファーウェイのアメリカ市場競争参加で、無線インフラの整備コストは15%〜40%削減できる
 →北米の通信事業者は、4年間で総額200億ドルを節約できる
 →つまり、アメリカ自身にとって、「ファーウェイ排除」は自殺行為だと説いた
・バンクーバーの自宅で軟禁状態となっていた孟晩舟副会長も3月1日、公民権侵害で訴訟を起こした
・カナダ政府が孟被告を捕らえ、アメリカが孟被告を起訴し、孟被告がカナダ政府を訴え、ファーウェイがアメリカ政府を訴えるという複雑な構図
 →アメリカに身柄を引き渡すかどうかの審理は、2020年1月20日から始めることに
 →孟晩舟事件は、まさにカナダ版「カルロス・ゴーン事件」の様相に

ご意見・ご感想