台湾IT主要企業、5月の業績が史上最高に、半導体は本格回復
長い不況トンネルをようやく抜けられるようになった。2024年5月における台湾IT主要企業19社の売上額合計が前年同期比17.7%増の1兆3150億円(約6兆3000億円)となったと日経が伝えた。キオクシアや東芝も設備投資増強に乗り出した。製造装置も動き始め、9月11〜13日に首都ニューデリーでSemicon Indiaを開催する。
6月15日の日本経済新聞が報じた台湾IT関連企業19社の内、半導体関係としてのTSMCは、前年同月比30.1%の2296.2億台湾元(1台湾元=4.85円)となり、前月記録した史上最高の単月売上額2360.2億台湾元に次ぐ売上額となった。2カ月連続で単月1兆円を超える売上額だ。TSMCの牽引はAIサーバー向けの半導体であることは言うまでもないが、特筆すべきは、スマートフォン向けのSoCプロセッサが強いMediaTekの売り上げである。
今年に入ってからMediaTekの売り上げは急激な伸びを示しており、5月は前年同月比33.5%増の421.5億台湾元となっており、1〜5月の累計でも前年同期比40%増となっている。実はMediaTekの売り上げが前年同月比でプラスになったのは2023年10月からで、以来2桁売上増を示してきた。特に、毎年1月には前年の11月、12月よりも落ちるという季節要因があるものの、今年の1月は落ちることなく前年同月比約2倍の445億台湾元を記録した。前月(4月)も同48.25%増の420億台湾元を売り上げ、好調さは続いている。裏返せば、同社売上の約60%を占めるスマホ市場が復活しているということだ。さらにコネクティビティやブロードバンド、IoTなどスマートエッジ部門の売り上げが34%を占めており、製品ポートフォリオを拡大していることも奏功した。
図1 キオクシア岩手工場 出典:キオクシア岩手〜総合紹介ムービー〜
6月17日の日経は、キオクシアが1年8カ月ぶりに減産を解除したと伝えている。スマホやパソコンの売り上げが減少し始めていた頃からキオクシアは減産を続けてきた。やはりスマホやパソコン市場が戻ってきたことを示している。新たに融資枠2100億円を設定する。NANDフラッシュの四日市工場と北上工場の生産ラインの稼働率を6月に100%に戻したと日経は伝えている。スマホとパソコンの回復で、キオクシアの2024年1〜3月期の最終損益は103億円の黒字に転換した。新たな融資枠は運転資金に充て、最新設備の購入に必要な資金については、大手行が融資枠とは別に支援する構えだとしている。
キオクシアは米Western Digitalと共同で、NANDフラッシュの先端品の量産に向けて総額7290億円を投資する計画だ。経済産業省が1/3となる最大2430億円を補助するため、残りの資金4860億円はキオクシアとWDで折半するとしてキオクシアは2430億円を手当てすることになる。銀行団が6月期限の5400億円の融資借り換えに応じたことで、キオクシアは資金を確保した。
東芝は電気自動車(EV)や電力設備に使うパワー半導体の生産ラインを増強するため、2027年3月期までに1000億円の設備投資を計画していると13日の日経が伝えた。エネルギー分野では送配電設備を手掛けるインドと川崎市の工場に約200億円を投じるとしている。生産子会社の加賀東芝エレクトロニクスに新たに生産ラインを導入、姫路半導体工場やタイの後工程工場も増強する。データセンターの電力需要が増すことが成長につながると見る。
インドで開催される初めての正式なセミコンインディア展示会となる9月のイベントは、欧州のElectronica/Productronica Indiaと共催の形を採る。このため主催者はSEMIとメッセ・ミュンヘンになる。インドの半導体市場は、2026年前に550億ドル、30年までに1000億ドルが期待されている。需要は主に、スマホとウェアラブル、車載機器、コンピュータとストレージの3つの分野だという。
インドは高集積半導体設計ではその実力は定評があるものの、半導体製造では政府が音頭を取っても民間が付いていかない「笛吹けど踊らず状態」だった。しかし近年、Micron Technologyが工場建設を進めており、ルネサスエレクトロニクスも現地企業と合弁で後工程の工場を計画している。台湾のPowerchipグループのPSMCも現地のTata Groupと共同で半導体工場を建設する計画である。
今回、日本勢では東京エレクトロンやディスコ、キヤノン、東京精密、ダイフクなどが出展を予定している、と14日の日経は報じている。