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2025年の成長源泉はやはりAI、エッジAIoT、AI PC、生成AI、エージェント

新年明けましておめでとうございます。
今年がどのような年になるか、興味のあることだが、やはりAI(人工知能)の世界になるようだ。日本経済新聞をはじめ世界のメディアを見るとやはりAIにまつわる記事が多いようだ。そしてAIと半導体がカギを握るようだ。全世界企業の時価総額ランキングでは1月5日現在、トップテンに半導体企業が3社も入っている(図1)。

Largest Companies by Marketcap / CompaniesMarketCap.com

図1 1月5日現在の世界企業時価総額トップ10社 出典:CompaniesMarketCap.com


1位は3.68兆ドルのApple社だが、2位には3.54兆ドルのNvidiaが拮抗する。3位Microsoft、4位Amazon、5位Alphabet(Google)、6位Saudi Aramco、7位Meta Platforms(Facebook)、8位Tesla、9位Broadcom、10位TSMCという順だ。10位のTSMCの時価総額は1.08兆ドルと1兆ドルを超えている。11位の投資ファンドBerkshire Hathawayは9774億ドルと1兆ドルを割っている。6位のSaudi Aramcoは石油会社だが、それ以外は全てITと半導体となっている。

時価総額は、発行されている株式総数に株価をかけた指標である。この時価総額ランキングは、投資家の期待が込められた成長企業の順位とも言える。もちろん各社の入れ替わりは激しいが、ランクインした半導体3社は全てAIチップと関係の深い企業である。Nvidiaは言うまでもなくAIチップの先頭を走るファブレスであり、9位のBroadcomもGoogleやMetaのAIチップ設計を担うデザインハウスの仕事もしており、AIチップ設計企業である。TSMCはファブレスが設計した設計図(フォトマスク)を元に製造する。

1月1日の日経新聞は、今後数年間で汎用AI(AGI:Artificial General Intelligence)が到来するという予測を掲載した。イーロン・マスク氏やサム・アルトマン氏、孫正義氏などの有名人の見方を載せたが、AGIの登場時期を聞いているだけである。これまでのAIは決まったことを学習し、その分野についてだけ推論する専用AIである。汎用AIは学習させるべき知識の量が半端ではない。人間が小学校から中学校、高校、大学などで学んできたような知識を全て学習させたテクノロジーが汎用AIである。汎用AIの研究者はたくさんいるが、今の段階ではまだ十分ではない。汎用AIと称しても「1週間後の株価を予測するAI」がすでに存在するように、ある程度分野を絞った「準汎用AI」は登場している。

ただ、今のAIが注目されるきっかけとなったテクノロジーは2012年に発表されたAlexNetであり、汎用AIへの途中段階ともいえる生成AIはその10年後に登場した。人間並みの知能を持つ汎用AIは本当に数年後に登場するのであろうか。有名人の言葉をそのまま信じるわけにはいかないだろう。

その前に、「AIエージェント(代理人)」というコンセプトは昨年春あたりから生まれている。ただ、この言葉もいろいろな意味を含んでいる。人間に代わって業務の一部を連続的にこなしてくれたり、代理人のように人間がAIに指示してAIが業務を代行してくれたりする。もちろん人間を無視して勝手に業務をやってくれるAIエージェントはまだいない。ただ、汎用AIへのつなぎとしてAIエージェントを活用して、業務を改善していくテクノロジーは発展するだろう。

クラウドでAmazonに迫りつつあるMicrosoftは、2025年6月期末までに、AIの開発や動作に必要な設備となるデータセンターに計800億ドルを投資すると発表した。Microsoftは、30数カ国・50数カ所にデータセンターを保持しているが、今回の投資の半分以上を米国内で投資すると4日の日経は報じている。

年明け早々、米ファブレス半導体のSynapticsが自社のエッジIoTプロセッサ「Astra」にGoogleのオープンソースの機械学習コアを集積することで両社が合意した。GoogleのIPコアをSynapticsがライセンスを受けることになる。このIPコアは、MLIR(Multi-Level Intermediate Representation)コンパイラソフトウエアインフラに準拠しており、可視化や画像、音声、コンテキストなどのさまざまなモードをシームレスに対話形式で実行できるようなエッジAIデバイスを開発する。多数のセンサを搭載するIoTデバイス上で様々なモードのAIを実行する。これも一種のAIエージェントを利用するのであろう。

AIチップの動きは速い。しかし、AIチップを直接手掛けていない日本でも実は勝負できる。例えばNvidiaのAIチップ製品はTSMCの先端パッケージング技術で作られていることが多いが、GPUやCPU、DPUだけではなく、小さな制御用マイコンやPMIC(電源IC)、受動部品などが大量に使われている。ここにも商機がある。もちろん、AI+IoTチップそのものにも商機がある。28nm、16nmでも十分な商機である。2nmプロセスデバイスだけがAIチップではない。2025年は2桁成長と見る市場調査会社は多い。攻める時であろう。

(2025/01/06)
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