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Intelの11世代プロセッサ、微細化よりもFinFETと多層配線に工夫

Intelがパソコン向けの新しい第11世代のプロセッサ(SoC)に使われるFinFET技術に関して、その詳細を明らかにした。10nm設計のTiger Lakeと呼ばれるSoCにはマルチCPUコアだけではなくGPUやISP(画像処理プロセッサ)コア、L3キャッシュThunderboltインターフェイスなど周辺回路も含まれている(図1)。GPUはAMDを意識、ゲームやAI狙い。

図1 Intelがモバイルパソコンの性能を強化するCoreプロセッサ 出典:Intel

図1 Intelがモバイルパソコンの性能を強化するCoreプロセッサ 出典:Intel


Intelのテクノロジーは、7nmへの移行が遅れていると言われ、この最新チップも10nmプロセスではあるが、微細化に頼らずトランジスタと多層配線の工夫で性能を上げた。AMDはTSMCのプロセスを使って7nmのSoCをパソコン用に設計しているが、Intelはこれまでに10nm、しかも昨年はトラブルが続いていた。Intelは今後成長するためにデータカンパニーになると標榜しているものの、パソコン事業をおろそかにするわけにはいかない。Intelの稼ぎ頭のトップはパソコン事業であり、未だに売上額の半分を占めるからだ。

今回の第11世代のSoCはAMDを意識して設計された。AMDの最新SoC7nmプロセスで設計した「AMD Ryzen 7 4800U」とのベンチマークでは、演算性能は28%、グラフィックスは67%、AI性能は4倍としている。ここで、IntelのCPUとは言わず、SoC(System on chip)という言葉を使っているのは、CPUの中にGPUやISPなどヘテロプロセッサも集積しているからだ。AMDも含めもはや、かつてのCPUというチップはSoCに代わってきている。

Intelが10nmプロセスでも性能が良かったのは微細化に頼らず性能を上げるためだという。FEOL(トランジスタを中心とするプロセスの前工程)とBEOL(多層配線を中心とするプロセスの後工程)で工夫を凝らした。トランジスタ部分では、FinFET技術を改良しトランジスタの電流駆動能力を上げることで性能向上につなげた。BEOLではバリアメタルの改良で層間をつなぐビア抵抗を従来よりも30%下げ、容量を4倍と大きく増やしたMIMコンデンサを作りつけた。


図2 IntelのSuperFinの工夫

図2 IntelのSuperFinの工夫


FinFETでは、Fin(ひれ)を構成するゲートピッチをやや広げ、電流を確保した(図2)。これは、MOSFETのゲート幅Wを少し広げ駆動電流を大きくしたものだ。微細化には反するが、FinFETの駆動電流を上げるためには最適な措置であろう。また、ゲートメタル構成のプロセスを改良しチャンネル移動度を上げたという。ソース・ドレインのSi部分はエピタキシャル成長で作製するが、歪を付けて移動度を上げ抵抗を減らし電流を上げた。さらにメタルゲートでゲート電界がチャネルまで十分届くことでチャンネルキャリが素早く動き電流を上げたとしている(参考資料1)。

BEOLでは、二つの改良がある。一つは、多層配線ビアのバリアメタルを薄くして抵抗を30%削減した。もう一つは、多層配線の表面の近くに設けるMIM(Metal-insulator-metal)コンデンサのキャパシタンスを従来の標準品よりも同じ面積で4倍に増やした。これには高誘電率材料を数Åの層状に積み重ね、超格子のように構成した。これによってドライブ電圧を大きく削減できるため、消費電力の削減に寄与した(図3)。


図3 BEOL工程でもビア抵抗を減らしMIMコンデンサ容量を増やし低電圧動作を可能にした 出典:Intel

図3 BEOL工程でもビア抵抗を減らしMIMコンデンサ容量を増やし低電圧動作を可能にした 出典:Intel


主にトランジスタと多層配線の工夫で性能を上げたことに加え、CPUコアは全世代のSunny Coveアーキテクチャをベースにキャッシュを大容量にするように設計し直した。コア数は最大4コアで、スレッド数は8個と、ALUを効率よく動かしている。この結果クロック周波数が全世代より900MHzも高い4.8GHzを達成した。GPUには小規模GPUコアともいうべき実行ユニットを最大96個集積、レンダリングを高速に処理する。加えて、3.8MBのL3キャッシュを搭載、帯域幅を広げた。

参考資料
1. SuperFin Technology: Advancing Process Performance

(2020/09/04)

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